雨の中、青年は走っていた。
後ろから、声が聞こえる。
―――ムカつくんだよ、お前
―――俺の事真似してさぁ、獲物奪って・・・
―――覚悟は出来てんだろうなぁ?
「く・・・っくそっ」
助かりたい。
真似して人を殺したからって、こんな目に会うとは聞いてない。
必死でナイフの切っ先を「本物」にむけた。つもりだった。
「・・・かはっ・・・」
いつのまに背後にいたのだろう。
深く考える暇も無く、青年は息絶えた。
『またも、「偽者」が殺害されました―――』
「自業自得だよなぁ?」
「そーね」
彼女は知らない。本物がこんな近くにいる事を。
「殺人がそんなに楽しいのかしら?私、殺人鬼なんてぜーんぜん怖く無いわ。」
「そうかい?」
「ええ。」
―――知らないって罪だねぇ。
「そろそろ本名教えてくれてもいいんじゃないのぉ、ロス?2晩をともにしたんだしぃ」
「まだダーメ。」
「けちぃ。」
彼女はそう言うと、起き上がって服を着替え、玄関に向かった。
「どこいくの?雨だよ?」
「散歩。殺人鬼なんて返り討ちにしてやるわよ。」
「危ないよ」
「心配性。平気平気」
彼女が出ていった扉を見つめ、ロスはため息をついた。
「やれやれ・・・」
ロスは引き出しから黒いレインコートと大振りの狩猟ナイフを引っ張り出し、変装を取った。
「紅い眼のイケメン殺人鬼。いいねぇ。」
そのいつもの姿で、窓から飛び降りた。
「い、嫌・・・命だけは・・・」
「俺は何を取りに来たと思ってるの?命だよ。」
ロスはなんの躊躇も無く、ナイフを振り下ろした。
―――血飛沫が上がった。
「仕事完了。ま、この女にも飽きた事だし。」
ロスは、躊躇、手加減をしない。
それがいくら大切な物であっても。 |