鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・4〜『ディアブロ・デ・シャマイ』(9/10)縦書き表示RDF


鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・4〜『ディアブロ・デ・シャマイ』
作:亜玲



第9話


‡第九話‡



「あ、あれがアジト……」



走りに走ったアッタカたちは、やっとアフローズのアジト――チビーズの秘密基地――の手前まで辿り着いた。



「そうだぞー」



地図を確認しながら、ニシニも頷く。



視力7.0の瞳はすでに、縛られたまま座っている姉とチダユゥを捉えていた。



「どぉするアッタカー?」



「うーん……」



やはり、単純な殴り合いでは自分は彼らにはかなわない。頭を使わなければ。この弓矢を使って、何ができるだろう……。



誇り高きシャマイのモランは、無用な殺生は絶対にしない。それは人間はもちろん、動物もだ。
いかに相手が青派連中だとは言え、射殺すなどもってのほか。



「どうすれば……」



「ぶーんぐるぐるー」



暇になったのか、ニシニの背中から降りたアッツキが、近くにあった長い蔓を手に遊びだす。



アッタカたちが身を隠している茂みから伸びる、長い蔓……





「……それだ!!」



「おー?」



まるでヴァナーシャの神が味方してくれたかのように、突如アッタカの頭にアイディアが閃いた。



「アッツキ、そのつるかせ!」



「ふえ?」



半ば強引にアッツキの手中から蔓を奪いとり、アッタカはその長さを確かめる。





「よし、こんだけ長けりゃだいじょーぶだ!」



「何するんだー?」



不思議そうな友人に、アッタカは嬉々として説明した。



「この矢尻につるをつけてさ、あのアジトの木に向けて射るんだ! んで、あの木に矢が突きたったら、俺がそのつるにつかまって、あの木の上にいるクホをけりおとす!」



「おおっ! かっこいーなー!」



「そんで、青派のやつらが混乱してる中につっこんでくの、ニシニにまかせてーんだ。ニシニがあいつら追っ払ってる間に、俺が姉さまとチダユゥさんを助ける!」



「まかせとけー!」



親友が笑顔で頷くのを確認すると、アッタカはアッツキを片手に抱き、えっちらおっちら低木の上にのぼった。



「兄しゃま、おしっこしたいー」



「がまんしろ!」



軽くアッツキの頭をこづくと、アッタカは蔓の片端を矢尻にしっかりと結び付け、もう一方の端をアッツキに巻き付けた。



「うごくなよ、アッツキ」



そして、深呼吸を2回。



背筋を伸ばし、弓に矢をつがえる。視界に、こちらに背を向けて座るクホをとらえる。






「ヴァナーシャのかみよ…」






小さな弓矢で幾度か練習したとは言え、実践用サイズは初めてだ。






「……ふっ!」





短い気合いの呼気とともに、蔓を結び付けた矢は一直線にアジトの低木へと飛翔した。











「……ん?」



何かが頭上を飛んだ気がして、チダユゥは天を仰いだ。



そして。



「!」





頭上にいつのまにか、ピンと張られた蔓が出現しているのを捉えた瞬間。






「アーーアァアァー!!!!!」





その蔓が一気に撓み、甲高い声とともに、小さな影が月明かりの下を舞う。



「ほら、言ったでしょ?」



隣でアッキナがほほ笑み、鈍い音に続いて
「ぐぁ」とつぶれたような声を出したクホが樹上から蹴り落とされ、



「ぎゃああっ!」



「いてーー!!」



「クホくん?!」



クホが固まって眠る部下たちの上に落下し、





「たーーー!!」



そのカオスの中に気の抜けた雄叫びをあげるニシニが突っ込み、






「姉さま! チダユゥさん!!」



耳元で、自信に満ちあふれた少年の声が響いた。






[続く]













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