鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・4〜『ディアブロ・デ・シャマイ』(7/10)縦書き表示RDF


鏡の国戦記〜EPISODE SHAMAI・4〜『ディアブロ・デ・シャマイ』
作:亜玲



第7話


‡第七話‡



「あ、アッツキ!!」



まさかアフローズに追われて……



「ん?」



だが、アフローズをよく見ると、その必死の形相にはどこか見覚えがある。



「びえええっ!!!」



「うぉぉぉんっ!!!」



「ぶえええっ!!!」



「あ……ア・ヤカにレラッカ……それにタクか?! 何してんだよおまえら!!!」



「あーばれちまったかー」



何が何だかわからず混乱するアッタカの隣で、ニシニがそう言う。



「ば、ばれたって……?」



「兄しゃま! たいへんたいへん!!! 姉しゃまがたいへん!!!」








アフローズとアッツキとニシニのまとまりのない話を総合すると、つまりこういうことだ。



「姉さまは、俺に勇気をつけさせるために、お前らとチダユゥさんにおねがいして、アフローズなんてくっだらねぇあくやくになったふりして、俺をおびき出そうとしてたんだな?」



「うん……」


タクが涙を拭いながら頷く。



「んで、アジトで待ってたら、クホたちが来て、姉さまとチダユゥさんがほんとにつかまっちまったってわけだ」



「うん……」



レラッカも涙を拭いながら頷く。



「なんで……なんでだまってたんだよニシニ!!」



「ご、ごめんなーアッタカ……でもな、俺も、アッキナ姉さんも、お前に強くなってほしかったんだ……だから……」



「……ごめん、もとはと言えば俺のせいだよな」



親友に八つ当りしてしまったこと(とアフローズ相手に本気で悔しがっていた自分)に恥じ入りながら、アッタカはうつむく。





「兄しゃま……姉しゃまにあいたいよぉ……」



ア・ヤカと肩をよせあって啜り泣いていたアッツキが、涙声でつぶやく。



「姉さま……」





脳裏に浮かぶ、姉の笑顔。



いつも笑顔で優しい姉。



いつも弟たちのことを一番に考えてくれる姉。






「……行こう、ニシニ。アッツキ、お前もだ」





作りたての弓矢を手に立ち上がったアッタカの瞳には、静かな闘志とシャマイの誇りが輝いている。



「か、勝てんのかよ……お前、俺にだって突き飛ばされてたんだぜ?」



未だ泣きじゃくるア・ヤカとレラッカの背をさすりながら、タクが怯えたような声を出す。



「かてるか、じゃねー。かたなきゃいけねーんだよ」



「アッタカ……」



満面の笑顔を浮かべ、ニシニも立ち上がる。



「そーだな! お前ならできるぞ!」



「兄しゃま!」



ニシニの言葉に頷き、駆け寄ってきたアッツキの頭を撫でると、アッタカはタクたちにむかって力強い声で告げた。





「お前は二人をおちつかせとけ。俺たちは行く。かならずもどってくるぜ……姉さまとチダユゥさんを連れて!」



「おぅ!」



チビーズ三人を後に残し、アッタカ、ニシニ、そしてアッツキの小さな影は、みるみるうちに遠ざかっていった。





「……ふむ、少しは逞しくなりましたね」





林の影でささやかれた声には、誰も気が付かなかった。









「……ゆ……チダユゥ……」



「……ん……?」



何かが自分の腹をえぐる感触に、チダユゥは目を覚ました。



「いって! 何ヒトの腹ふみつけてんだよっ?!」



「しーっ! 静かに!!」



アッキナの長い足に蹴り付けられていた腹をさすりながら怒鳴るチダユゥに、アッキナは平然とした顔でそう忠告した。





「青派の子たち、今みんな寝てるから」



「マジかよ……やっぱガキはガキだな……」



アッキナの言葉に後ろを振り向けば、青派の子供たちが身を寄せあって眠っている。





「ねぇ、あなただけでも今のうちに逃げ出してくれない?」



「ばかかよお前……お前はともかく、俺は足まで縛られてんだぜ? にげれっかよ……」



チダユゥの脚力を警戒したのか、クホはその足まで縄で縛り上げていた。



「なによ、走れないならウサギとびがあるじゃなぃ……」





小声でつぶやかれた恐ろしい言葉をさらっと無視して、チダユゥはアッキナに尋ねた。



「お前こそ、足自由なら逃げねーのかよ。お前が逃げれりゃ、こいつらも飽きてこんなくだらねーことおわらせるんじゃねーの?」



「だめよ。あなた一人残して逃げたりしたらあなたの許婚に怒られちゃう」



「ばっ……何いってんだよ……」





実はチダユゥには、生まれたときから定められた許婚がいる。アッキナならば親に決められた結婚などお断わりだが、彼ら二人は何気にかなり気があっているので、それはそれでいいのだろう。





「ま、それもあるけど……私がここで逃げちゃったら、アッタカはずっと強くなれないわ」





月に照らされるアッキナの横顔は、強さと優しさにあふれていた。





「アッタカはかならず私を助けにくる。そしてかならずクホたちに勝つわ」



「……そうか?」





「そうよ。そして、自信がつくの。あの子は弱くなんかないわ。ただ、自信がないだけなの。いじめられて、自信を奪われてしまって、本当の実力が出せてないだけなのよ……」



アッキナは月を仰いだ。



蒼くて、はかなくて、そのくせ強い光を放つ。





「アッタカみたいだわ」






[続く]












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう