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掌編小説集8 (351話~400話)

言語

作者: 蹴沢缶九郎

ある日、地球に一機の宇宙船が飛来した。初めて遭遇する地球外生命体に、人類は固唾を飲んで見守っていたが、着陸した宇宙船から現れたのは、姿形が人間と瓜二つの、とてもにこやかな宇宙人だった。

相手にはどうやら攻撃をする様子や、敵意がない事がわかり、地球の代表が歩み出て挨拶をした。


「長旅ご苦労様でした。わざわざこのような辺境の星にお越しくださいまして、ありがとうございます」


だが、そこで問題に直面する。代表の言葉に反応した宇宙人は何か言語を発しているのだが、それが理解出来ないのだ。仕方なく、代表は身ぶり手振りでコンタクトを試みると、相手の宇宙人も見よう見まねで身体を動かし、意思の疎通を図ってきた。(はた)から見れば滑稽な光景であるが、相手の言葉がわからないのでは仕様がない。

しかし、いつまでもそのままではいかず、互いに長い時間を掛けて、言葉の意味を説明する。翻訳機でもあればいいのだが、科学力では地球の遥か先をいく宇宙人も、(こと)言語という分野に於いては苦手なのだろう。



宇宙人が地球を訪れて一年の歳月が経ち、互いにある程度の言葉が理解出来るようになっていた。宇宙人はモック星人といい、友好の為に地球にやってきた事もわかった。


とうとうモック星人が地球を去る日。モック星人は、未だ不慣れな片言の地球の言葉で、


「皆、本当ニオ世話ニナッタ。オカゲデ、地球ノ思イ出、タクサンデキタ。サヨナラ」


と、別れの挨拶を告げると、宇宙船に乗り地球を飛び立っていったのだった。


それから数日後、見覚えのある宇宙船が地球に飛来した。地球人達は慣れた様子で迎え入れる。何しろ、モック星人との遭遇は二度目であり、星人の言葉もわかる。自分達には経験があるのだ。

宇宙船から姿を現した、この間とは別のモック星人に、地球の代表はモック星の言葉で挨拶をした。


「長旅ゴ苦労様デシタ。ワザワザコノヨウナ辺境ノ星ニオ越シクダサイマシテ、アリガトウゴザイマス」


だが、再び問題に直面する。何やら答えた相手の言葉がわからなかったのだ。


誰かが言った。


「地球にも様々な言語があるように、きっとモック星にも様々な言語があるのだろう。さしずめ、この間のモック星人が日本人なら、今回は外国人か…」

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