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昨日に引き続き投稿です
恩師
『勝者!! アイザ・ヨー!!!』
 実況が言うその声により勝者が告げられる。
 2RBが終わると沢山のマスコミがアイザの周りに集まる。
 それはもちろんその卓越したHSA(ハイサ)の腕もこともあるだろう。
 だが誰もがアイザのその点ばかりを見ているばかりではない。その容姿ばかりを褒め称えたりされたりもする。
 だからアイザは勝利の余韻に浸ることなくやってくるこの無粋な輩が嫌いであった。それとは逆に走っている瞬間は最高の気分を味わえた。その瞬間だけはHSA(ハイサ)がすべて……何事も『可愛い』では済まされないのである。そういった緊張感がアイザにとっては心地よかった。
「アイザさん、次は当然"ワールド・チャンピオン・カップ"ですよね。意気込みをお願いします」
 WCCと言われるその大会においてアイザは前回のチャンピオンであった。あのクロバ工業さえ所属のライナーをその座に置こうと死力を尽くす、2RB界至高の大会である。新チャンピオンが生まれるか、それとも現チャンピオンが最強か、と2RBファンにとっては見逃せない試合であった。
 記者の誰もがアイザの回答を耳を済ませて待っている。
 だがアイザは何も語らず上品な一筋の笑顔と貴族然とした一礼をすると控え室へと去った。
 次の日の新聞には『WCCに向けて、アイザ・ヨー"余裕の笑顔"』という見出しが付いた。


 《ディーゴ》のあるハンガーには、何時もと違う雰囲気が漂っていた。
 クリュウは良くは知らないが、先日の会議で町内会全体で《ディーゴ》の修理に協力しようと年配の方々が話し合ったらしい。
 クリュウにとって見れば棚から牡丹餅……ただでさえ手を焼き、人手が足りないのを補ってくれるというのだ、非常に助かる。
「ヒヒ、本当にS系だねえ、コレは。ヒヒヒ」
 そう怪しい声を上げるのは、ウエマーというEoM技師だ。
 彼が手を貸すからこそ、自分もという形で人が集まっている。正直の所クリュウの為に集まったわけではないのだ。
 クリュウはそれも仕方の無いことと思う。2RBの世界において名が売れているということは重要なことだ。名が売れていれば、ライナーであればアイザやギドレーのように出る2RBに引っ張りだこになる。工房の名が売れれば、そういった名だたるライナーが利用する、そして更に名が売れる。
 名無しのクリュウに対してこれほど手を貸してくれるというのは本来ありえないことなのだ。
「ヒヒヒ、僕の出番はまだなさそうだねぇ」
 EoM(エオム)は飛走出来るようになったHSA(ハイサ)に合わせて設計されるものである。
「それはそれでいいとして、ヒヒ。君はS系に乗れるのかい、ヒヒヒ」
「いや乗ったこと無いけど」
 様々なHSA(ハイサ)に乗ったことのあるクリュウであったがS系というものに乗ったことは無かった。それもその筈で、この国においても動態保存されているS系は数が少ないのである。それだけでも《ディーゴ》を復元させようというクリュウの無謀さが伺える。
「馬鹿が、ウエマーさんはそう言うことを言ってるんじゃねぇよ」
 その声に、クリュウがハンガーの扉のほうを見るとそこにはハタがいた。
 ハタは封筒のようなものをクリュウに投げてよこす。
「コレは?」
HSA(ハイサ)にはD系やE系といったそれぞれに合わせた資格があるだろう。S系を乗るにも資格がいるんだよ。それは、S系のHSA(ハイサ)講習を受けるための届出だ」
 中を開けば既に届出を受理されてあり、決められた日程に飛走都市スカイレイルの教習場へといってノルマをこなすだけとなっている。
「ヒヒヒヒ……アドウも随分と丸くなったもんじゃないか。ヒヒヒヒ」
「おめえが焚き付けたから予定が狂っちまったよ。まぁ親方は、ウチの社員として働く以上すべてのHSA(ハイサ)に乗れなきゃ意味がねぇ、だなんて言ってたがな」
 クリュウの周りの者が力を貸してくれる。
「ヒヒヒ、コイツのことは僕達に任せて、君は君に今出来ることをすればいいさ。ヒヒヒ」
 それに報いることがクリュウに出来るとすればそれは飛走(はしる)ことだけであった。
「「やるぞ!!」」
 《ディーゴ》のハンガーは熱い熱気に包まれた。


「お願いします」
 クリュウは教習場の受付嬢に書類を差し出す。
 S系の免許を取得するためには4時間の座学と6時間の実習が必要となる。HSA(ハイサ)の免許を取得はしているのでこの中には基礎的なものは省かれる。つまりS系HSA(ハイサ)についてのことのみ学ぶこととなる。
 他にS系HSA(ハイサ)に乗ろうという酔狂な者もいないのでマンツーマンの授業となる。
 授業内容もS系について知らない教師が古い教科書を片手に授業を行う。速度を上げるために蒸気を調節する"バルブ"やメーターの見方等をぎこちなくだが教わる。
 クリュウはこんな調子で午後の実習は大丈夫なのかと一抹の不安を覚えた。
 だが午後になりそんなクリュウの前に杞憂を晴らす人物が現れた。
「こんにちは、クリュウちゃん。またアナタに会えるとは思わなかったワ」
 そうヤクザも恐れおののくような低い声で話しかけられる。
「こ、校長!?」
 それはクリュウが以前通っていたアカデミーの校長――ボウホであった。
「ゴメンナサイね。ホントは午前中の授業も受け持って上げたかったのだけど……何しろこんな身分でしょ。手が開かなくってネ」
 黒光りする肌、厳つい顔……男の中の漢という容姿からは想像出来ない口調で話すボウホ。入学当初はクリュウもこの口調に慣れるのに苦労した。
「では、午後の授業を始めましょ」

 HSA(ハイサ)が走る為の教習場のコースは砂浜であった。そこには2機のS系HSA(ハイサ)が鎮座していた。《イッカーロ》と呼ばれる《ディーゴ》と似たようなHSA(ハイサ)、そして少し小柄な《ヴィーツク》と呼ばれるHSA(ハイサ)である。
「ドッチに乗る? 大変だったのよお。動態保存されてるS系を調達するのわ」
 アカデミー時代の無茶な走り方をするクリュウを知っているボウホは、壊さないでネ、と念を押す。
 クリュウは《ディーゴ》に近い《イッカーロ》を選択する。《ディーゴ》に近いほうが今後の為になると思ってだ。
(それにしてもどうして2機も持ってきたんだろう)
 教習の為なら1機で良いはずであった。
 クリュウはそんな疑念を持ちつつ《イッカーロ》に乗り込む。《イッカーロ》は現代の技術も幾つか搭載されてあった。その中でもOSや燃料供給機器がある為、現在の《ディーゴ》のように副座ではなかった。
「それにしても熱い……」
 ボイラーで常に火を炊き続けるS系のコックピットは40℃に近い。
『それじゃあ、走ってみテ』
 ボウホからのその指示が来て、クリュウは操舵石の上に手を置いた。
 基本的な操縦方法は、他のHSA(ハイサ)と大して変わりはない。
 操舵石でAlloyを操り、アクセルペダルで加速を行う。そして、速度調整を行うためのバルブを捻る。速度調節を行うという点においては、D系HSA(ハイサ)におけるギアを切り替えるクラッチに近しい物である。
 ただクラッチと違う点は、こちらは速度が上がると次のステップにと切り替えていくのに対して、バルブはメーターを見ながら捻り、調節するという所であった。用は繊細な操作が求められるのだ。
「でも、細かい調節が出来そうだ」
 そうポジティブに捕らえて、クリュウはバルブを捻る。
 そしてペダルを踏むと《イッカーロ》がゆっくりと動き出す。
 蒸気がシリンダーへと送られ、ピストンが軋む音を立てる。ピストンに引っ張られるように車輪が回転を始める。
 シリンダーから蒸気が噴出し、煙突からは黒い煙がもうもうと吐き出される。
 外から見ればその動きは、他のHSA(ハイサ)では見られない力強い鼓動であった。
 だが、クリュウは眉間を潜めた。
「……遅い……」
『ッフフ。そうでしょ。今のHSA(ハイサ)に慣れてると間違いなくそう思う筈ヨ』
 操舵石からのクリュウの意思通りにスカイレールは引かれているが、《イッカーロ》はその上をゆっくりと飛走する。
 また走るのが遅いのには理由がある。S系はその加熱しやすいボイラー故に装甲が厚い。更に動くためには魔炭石と水が必要となる。この2つの理由から、重量が通常のHSA(ハイサ)に比べて重いのである。つまりS系に俊敏さと加速性を求めることは出来ないのである。
 バルブを捻りメータを見ていたクリュウはある点に気がつく。
(メーターの動作も遅い)
 これはメーター自体がシリンダー内に送られる蒸気を計測している為であった。
「なるほど、経験が必要という訳か」


『掴みが早いわね』
 これにはボウホも驚いた。初めてS系に乗るにしてはクリュウは余りにも筋が良かった。並のライナー、いやアイザは分からないが、ギドレーではこうも行かないだろうと、ボウホは思った。
 元々、素質がありその飛走(はしり)にはボウホですら魅了された。だから、今までに一番期待し、それ故にクリュウがアカデミーを辞めると聞いた際には一番残念に思った生徒でもあった。
 長い間教師職にいるとこうして"才能"がある人間というのはごまんと見る。その中でうまく行った人間、行かなかった人間というのも知っている。
 ボウホも友人に頼まれなければこんな役目を引き受けなかったかもしれない。
「でも、ライナーに必要なのはそれだけじゃないのよねェ……」
『なんか言った?』
「なんでもないワ」
 ライナーは何も一人で飛走(はしっ)てる訳ではない。ボウホは知っている。そのHSA(ハイサ)を作った人、直す人、調整する人、EoM(エオム)を作った人、ライナーを取り巻く人間、そしてなにより2RBを観戦している観客がいて、初めてライナーは2RBを行えるのだ。
 クリュウにはそんな周りの人間を巻き込み、魅了してしまう、そんな力があるように思えた。
 あの頑固な友人を動かしてしまう程に。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
 ボウホはインカムを外してそう言う。
 クリュウが今どんな顔をしているのかコックピットで隠れていても分かる。きっと子どものような笑顔をしているのであろう。
「フフフ、その鼻を圧し折ってあ・げ・る」


 だんだん分かってくる。《イッカーロ》の特性が。
「イヤッホオオオ!」
 《イッカーロ》がアクロバッティクな飛走を行う。
 速度調整を行う際の2秒のラグももはや気にならない。速度調整を行うためのラグは通常D系であれば0.5秒、E系であればそれ以下とされている。
 これはS系に乗るのであれば克服しなければいけない問題点の一つであった。
 ボウホからの連絡は無い。どうしたのかとも思うが、それよりも《イッカーロ》で走ることが楽しくてたまらなかった。
『スタート地点へと戻りなさい』
 そんなドスの効いた声が聞こえてきたのはそんな時であった。
「OK。了解」
 クリュウは二つ返事で答える。
 《イッカーロ》はスタート地点へと戻る。
 だが、ボウホからの指令は無い。
 どうしたのだろう、とクリュウが思った瞬間、《イッカーロ》の物ではない別の汽笛が鳴り響いた。
 すると《ヴィーツク》がスタート地点へと歩を進めてきた。
 クリュウは何事であるか分からなかった。《ヴィーツク》はスタート地点に辿り着くと黒煙と蒸気を撒き散らす。
「なんだ?」
 まるで2RBでも行うのかと思わせる。だが、免許取得の実習においてそんなこと行うなど聞いたことも無い。
「校長?」
 クリュウはボウホに連絡を取る。だが返信は無い。
「ッ!!」
 その代わりこれが返信とでも言うつもりか、《イッカーロ》のモニターに2RBのシグナルが燈る。
「おもしれぇ」
 Three
 Two
 One
「ゴー!! シフトカラーズ!!!」
 相手はそれを言わず、
『さぁ、授業(リンチ)の始まりだ!!』
と、返してきた。
 その声はドスの効いた、間違いも無くボウホの声であった。


 スタート直後、
「火速――ブーストアップ!!」
 クリュウはボウホの口調に違和感を覚えつつもEoM(エオム)を噴かせた。飛走途中にこのHSA(ハイサ)にこのEoM(エオム)が搭載されているのは確認済みである。
 初速が遅いS系もEoM(エオム)で外部から加速してしまえば、その欠点が露見することは無い。
『ほお……』
 これにボウホが感嘆の声を漏らす。
 《イッカーロ》が後ろから火を噴出し加速する。
『だが、いいのか? 燃料を消費しちまって』
 《イッカーロ》は燃料を補給していない。本来、必要最小限の燃料しか積まないHSA(ハイサ)はそれほど長い距離を走れない。
(燃料を与える暇もくれなかったのはそっちだろうが!!)
 操縦に全神経を傾けながら、心の中でクリュウは呟く。
『まぁ、燃料切れなんていうものを狙ってやるほど――この俺様は甘くは無ェがなァ!!!』
 《ヴィーツク》は、先程の《イッカーロ》程遅くなくスピードに乗り始める。
 その小柄な体格が成せる業である。
 《ヴィーツク》は《イッカーロ》より車輪が小さく加速に乗りやすい構造をしていた。だがその分欠点もある。車輪が小さければ、回転数がその分増え燃料を消費してしまう。長距離を早く飛走するのであれば大きい車輪を積むのが鉄則である。
 《イッカーロ》は火速の恩恵もあり容易に上位を取る。
『ほお……S系に対して真上を取るか……甘ェぜ』
 その言葉が理解出来たのはその後すぐであった。
「うわッ!!」
 《イッカーロ》の視界が真っ黒に染まったのだ。
 何事かとクリュウは思った。
(これは!!)
 それは《ヴィーツク》が吐き出した黒煙であった。
 S系は走り出した時に大量の黒煙を撒き散らす。それが《イッカーロ》の視界を遮ったのだ。
『コレは、オメェの得意技だったっけなぁ』
 クリュウに今それを確認する暇は無いが、《ヴィーツク》はスパイラルアップで《イッカーロ》へと向けて上昇を始めていた。
 《イッカーロ》が煙を抜けるとそこは、黒煙竜巻の目……つまり、
『丸見えだぜええ!!!』
 予期していなかった攻撃が待っていた。
 《ヴィーツク》の蹴りが《イッカーロ》に襲い掛かった。
「グあッ!!」
 跳ね飛ばされ、《イッカーロ》のスカイレールが途切れる。
 装甲の厚い《イッカーロ》自体にダメージは少ない。
 だが、地表に向かって落ちていくコックピット内部には衝撃が走る。
 クリュウは揺さぶられるコックピットの中で《イッカーロ》がどの方向を向いてるのかすら確かめることが出来ない。
「うおおおおお!!」
 《イッカーロ》の車輪が空転する。それに合わせてスカイレールを引くように念じる。
 地表まで後僅か……という所で《イッカーロ》はスカイレールの上を走り出す。
『やるじゃねえか』
 クリュウは知る良しも無いが、ボウホは昔生徒が恐れる鬼教官であった。教え子を空中で嬲る様は皆にサディスティク・ティーチャーと比喩されるほどであった。
 《ヴィーツク》の連撃は続く。
 今度は炎射による攻撃だ。
 《イッカーロ》に、クリュウに体制を整える暇など与えてくれない。
 《イッカーロ》は高速で車輪を回すも、空中で着地したためにレールの上を車輪が空転してしまいスピードが乗らない。
 クリュウは顔を顰めながら、バルブを閉める。これにより車輪の回転数は落ちる。《イッカーロ》の実際に出ているスピードと車輪の速度を合わせる為の行為であった。
 だが少し閉めすぎた。
 《イッカーロ》の速度がガクッと落ちた。
 その瞬間、《ヴィーツク》が《イッカーロ》の上空を通り過ぎた。
 これは不幸中の幸い……ただ追い詰められるだけの獲物が後ろに出ることに成功したのだ。
 だが楽観してもいられない、このままモタモタとしていれば旋回されて再び速度が上がった時には後ろを取られることとなる。
 だがEoM(エオム)を使う訳には行かない。今度EoM(エオム)を使うとすれば一撃必殺でなければいけない。
 それほどクリュウは追い込まれていた。
 だが余裕が無いのはクリュウだけではない、《ヴィーツク》に乗るボウホも同じ立場であった。もともと、《ヴィーツク》も《イッカーロ》も2RB用のHSA(ハイサ)ではない。特に《ヴィーツク》はボイラーも車輪も小さく、持久戦には不向きである。元々、燃料を消費していた《イッカーロ》と走っても先に燃料を切らすのは《ヴィーツク》の方であったのだ。
 《イッカーロ》は《ヴィーツク》に合わせて旋回する。
『ッチィ……』
 ここに来て初めてボウホの舌打ちがクリュウに聞こえた。
 《イッカーロ》の動きに《ヴィーツク》は背後を取るのを諦める。
 その代わりに、
「来る!!」
 《ヴィーツク》はその小柄な車輪を生かし、小さく小回りをする。そして、《イッカーロ》へと向かって下り始める。
『火速――ブーストアップ」』
 慣性に更にEoM(エオム)による加速を生かした剣撃。
 《イッカーロ》は腰から剣を引き抜くと、それを受け止めに入る。
 《ヴィーツク》に対して《イッカーロ》はEoM(エオム)無しだ。
 これは賭けであった。重量の重い《イッカーロ》と慣性とEoM(エオム)によってスピードを上げた《ヴィーツク》。下手をすればどちらかが弾き飛ばされる可能性すらある。
 剣が交わり、鍔迫り合いとなる。
 《イッカーロ》は登ってきた(レール)を押し戻される。
 前に引いてきたレールの曲がり角……そうこのままでは後ろ向きで曲がれなく落とされる。
『終わりだなァ!』
「それはどうかな」
『なにぃ!!』
 慣性もEoM(エオム)による加速も衝突時ほどではない。
 クリュウがEoM(エオム)を使用しなかったのは、この瞬間を待っていたのである。
「炎装――フレイマー・エンチャントぉおお!!」
 本来であれば剣などの武器に火を点すEoM(エオム)――それをクリュウは、
 《イッカーロ》の全身が火を噴くようにした。
『なんだとおおお!!』
 密着しかかってた《ヴィーツク》と《イッカーロ》が……《イッカーロ》が剣を捨てることによって熱く抱擁する。
『馬鹿な。蒸し焼きになるぞ!!』
 クリュウにその言葉に対する返信をする余裕は無い。
 機内温度はどんどん上がり汗が噴出す。
 だが、次第に《ヴィーツク》に変化が訪れる。
 《ヴィーツク》の全身から蒸気が噴出し始めたのだ。
『このオンボロがぁ!! 』
 そして二機がレールから脱線する。
 落下する。
 そして、砂地に落ち。
 砂が巻き上がった。
 砂煙が収まると、そこには一機のHSA(ハイサ)の姿しかなかった。
『クソ、OSまでフリーズしてやがる』
 落ちたのは《ヴィーツク》であった。
 《イッカーロ》は間一髪の所をスカイレールにぶら下がっていた。
 

「アーアぁ。負けちゃったワ」
 《ヴィーツク》から降りたボウホはそう漏らした。もちろん、S系で2RBを行うという異例の試合であったが、当然負ける気はなかった。というより、2RBの厳しさを教えるつもりであった。
 だが結果は、ボウホの負けである。
「先生!! 大丈夫か」
 クリュウは砂地に落下したボウホを心配して駆け寄る。
「テメェ!! あれほど壊すなと言っただろうが!!」
「ひ!!」
「まぁ、冗談はさて置いて……こんな事になるんだったら、海上のコースを貸しきるんだったわァ」
 半壊した《ヴィーツク》、装甲が焼け爛れる《イッカーロ》を見てボウホはため息を零す。
 じょ、冗談?、とクリュウは怯える。2RB中のボウホは普段のオネエ言葉と違い、恐ろしい程までにヤクザだった。それはもう声を聞いただけで、子どもが夜眠れなくなる程に。
「ともかく、合格よ。これから頑張りなさい」
 どこから取り出したのか、ボウホはチリンチリンとベルを鳴らす。
「よっしゃああ!!」
 その子どものような仕草、隠す気のないHSA(ハイサ)が好きという気持ち。
 ボウホは大人しく、クリュウに魅了され、応援してやろうと思ったという。


「ただいまー」
 クリュウはアドウ家の門をくぐる。
「おかえりなさいなのですよ。ごしゅ……」
 そこには服だけ可愛さを増したメーメが三つ指を付いて待っていた。
 最近、ルリに強制貸し出しされたままだったので、顔も見るのは久しぶりであった気がする。
 クリュウはニコリと微笑む。これは彼がフェミニストなのではなく、S系の免許を取れて嬉しいからである。
 だがメーメはワナワナと震えだす。
「別のHSA(おんな)の匂いがする……この浮気者ぉおお!!」
 メーメは涙を溜めて怒った。
 彼女のこの発言についてクリュウはその正体が分かるまで頭を悩ませることとなる。
 そして、この後クリュウはサリナにボコボコにされた。
こんばんは! 呉璽立児です。
忙しさで溜まりに溜まったネタが火を噴いた!!

車で言えばオートマの免許しか持っていないのでマニュアルの限定解除に行ったら、ちょっこと練習したあとに峠に連れて行かれて頭○字Dさせられたそんなお話です。

何時もは1週間に1話ぐらいのペースで上げているんですけど、今週は2回目の投稿ですよ~

ネタ帖では《イッヤーロ》になってたのが字が汚すぎて、PCで打つときに《イッカーロ》になっていました。こっちのほうが語呂がいいので

お楽しみいただけたらうれしいです。そろそろ、HSA(ハイサ)の元ネタが分かってきた人がいらっしゃるのではないでしょうか?


さすがに3連続は……無理?

9/17 キャー、恥ずかしいミスが残っていたので修正しました。


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