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空を走れ!!
「うひゃーすげえ!!」
 クリュウ達オークス工房の一味は、アイザの招きで飛走都市スカイレイルにあるスタジアムを訪れた。HSA(ハイサ)が走るスタジアムの構造はその場所ごとに違う。飛走都市スカイレイルのスタジアムは全てが海に面しておりHSA(ハイサ)が走る場所は海の上となっている。
「さすが一流ライナーとなればテスト飛走にスタジアムごと借り切っちまうのか」
 クリュウは感動に近いため息をこぼす。
「よく逃げずに来たわね」
 スタジアムの上段でアイザが仁王立ちをしている。
「あっったり前だろう。こっちは昨日なんか興奮して寝れなかったっていうのに」
「まったく、子どもねぇ」
 実年齢と背格好を見ればアイザにそう言われるのは普段であれば文句の一言も出るであろう。
 だがクリュウは目の前の2RBを前にアイザの軽口に目くじらを立てる気も起きなかった。
「……お嬢様」
 いつからそこにいたのか、アイザの横にはいつの間にか執事であろうかピリッとしたタキシードの青年が立っていた。
「あらゴンド……遅かったじゃない」
「はっ。お嬢様のHSA(ハイサ)、《スカイ》を整備してからこちらに向かいました所、遅くなってしまいました。申し訳ございません」
 身なりもそうだが、今のアイザからは優雅さの様な物が感じられる。
「そう、じゃあ《スカイ》を彼へ。準備なさい」
「お、お嬢様、今何と!」
 執事のゴンドは驚嘆とも言うべき顔を浮かべた。
 HSA(ハイサ)――大空の名を冠する《スカイ》といえば、天才ライナーアイザの愛機である。彼女をライナー界の頂点に押し上げたと言っても過言ではない。
「お嬢様、それはあんまりです。お嬢様の《スカイ》をこんな野良犬に貸し与えるなど」
 これにはさすがにクリュウもむっとした。だが彼らの会話にクリュウが口を挟む余裕はなかった。
「お嬢様は《スカイ》に乗っていても最速です。今更何を……」
「ゴンド、あの子はね……もうあたしについて来れないのよ。だからあたしは《ホープ》を作った。だから、あたしは《スカイ》を降りて更なる高みを目指す」
「もしそうであったとしても、何も別の輩を《スカイ》に乗せなくても」
 ゴンドは食い下がらない。《スカイ》を貯蔵するよう説得する。
 なんて、HSA(ハイサ)を愛している人たちなんだろう、クリュウはそう思う。ゴンドは、アイザと共に天駆けた友を汚されたくないそう思っていることが分かる。濃い日々をともにしたモノだからこそ他の者に乗って欲しくない。そう言う気持ちはアイザには無いのだろうか。
「ゴンド……HSA(ハイサ)は走る為にあるの。もしこの試合で《スカイ》が壊れてしまっても、あたしも《スカイ》も後悔はしない」
 アイザは言い切る。
「それにね……」
 クリュウは背がビクっと震える。
 クリュウとアイザの目がぶつかる。
「あたしが乗る性能は上でも不完全な《ホープ》と、性能が下でも調整が完璧な《スカイ》。いい勝負になるかもしれない、そう思わない?」
 アイザはクリュウを挑発する。
 そこには、
――お前の腕など考慮するに当たらない
 と、
――この飛走が2RBらしいものになったとしたとしても、それはお前の腕ではなくHSA(ハイサ)の性能によるものだと
 そう言っているように感じられた。
「……上等だ」
 小声でクリュウは呟く。
 この2RB……ただのテスト飛走では終わらせない。
 アイザの一言が、ただ子どものようにはしゃいでいた、クリュウの心に火を付けた。


『いいか、余計なことは考えるんじゃねえぞ!!』
 HSA(ハイサ)《スカイ》の操縦席。外からの通信でアドウがそう言う。
 アドウは、クリュウのいつもとは違う雰囲気を感じ取ったのだろうか、何度も釘を刺す。
『いいか、このテスト飛走は《ホープ》の性能、ならびにEoM(エオム)の精度を確かめるためのもんだ。だから、テメェはただ《ホープ》の前を走っていればいい』
「わかってるよ」
 そう口では言うものの一度点いた火は中々消すことは出来ないし、消そうとも思わない。
『準備はいいかしら?』
「ああ」
 スタート前の背中を電流が駆け巡るような独特の緊張感をクリュウは感じる。
 "シフト カラーズ"というスタートの合図を前にその一瞬が長くも感じ、また短くも思う。
 電光灯に明かりがともる。赤が青に変わった瞬間に2RBは始まる。
 HSA(ハイサ)を動かす為の――自分の意思を伝達して動かす操縦石に当てた手が汗ばむ。
 この瞬間何度もアカデミーでテスト飛走で体感したが慣れることは無い。こと、今回に至っては、いつも以上に緊張していることがクリュウ自身良く分かっている。
 信号が―――青に……
 《スカイ》の視界を現すモニターに"GO! Shift Colors"と記される。
「シフト!カラーズ」/『シフト、カラーズ!!』
 2人の声が響いた。


 互いのHSA(ハイサ)が動き出す前に、海上に2本のスカイレイルが引かれる。そして動き出すと同時に、
『火速――ブーストアップ!!』
 クリュウのEoM(エオム)を発動させる詠唱が聞こえた。
「なっ!?」
 これには百戦錬磨のアイザも驚いた。2RBは確かに高速で一見するとスピードを競う競技に思える。だが実際、競技者――ライナーからすれば印象は異なる。一瞬で追いつくことが出来るHSA(ハイサ)の性能、もしくは《スカイ》が使用したような瞬発的に加速を行うEoM(エオム)さえあれば極端なスピードは必要無いのである。
 この火速のEoM(エオム)も通常ならば《スカイ》に搭載された剣で接近戦を行う為に使用することが殆どであった。
 HSA(ハイサ)にはクラスと言うものが存在する。これはそれぞれのHSA(ハイサ)の戦闘スタイルに合わせて、接近戦に特化した"ファイター"、相手の攻撃を防ぎその隙をカウンターで狙う"ディフェンダー"、EoM(エオム)による攻撃を重視した"ソーサラー"に分類される。そして、それぞれのクラスにあった武器を装備している。
 《スカイ》は分類上"ファイター"に値するが、実際はどんな戦闘も可能とするオールラウンダーな性能を持っている。
 《スカイ》は、先手で加速を駆けたことにより、"逃げ"に徹していることが分かる。
 2RBでは前を行く者は、不利となる。これは、ドッグ・ファイトという名前からも分かる。前を行くモノは獲物、後を追うモノが捕食者なのである。
 前を行く者が"ディフェンダー"か"ソーサラー"なら状況は違うが、"ファイター"が前を行くのは理に反している。そもそも、"ディフェンダー"や"ソーサラー"は加速のEoM(エオム)を搭載していること事態が稀なのだが。
 "ファイター"が前を行くことに不利がつくのはこれだけではない。"ファイター"は接近戦を得意とする故に、重要なのは武器を抜いて切りかかるまでのスピードである。これは、それまでに走ったスピードを生かしたり、EoM(エオム)を用いてスピードを底上げするという2つの方法がある。この通り、後方のHSA(ハイサ)は敵に攻撃するのにその分のスピードを無駄にすることが無い。だが前方のHSA(ハイサ)は、反転しなくてはいけない。これは、今まで走ってきた距離を無駄にすることになる。2RBのHSA(ハイサ)はそれほど長距離を飛走ることは出来ない。距離を走ればその分燃料を消費し、EoM(エオム)を使えば燃料を消費しただけ更に走れる距離が短くなる。
 だからライナー達は戦術(タクティクス)に気を使う。それは、空のスカイレールとなって現れる。戦術に考えがなくい者は引くスカイレールが乱雑である。それを引く者を揶揄する、"スパゲッティ・タクティクス"というような皮肉めいた言葉があるくらいだ。
 あれだけ炊けつけておいて、それでもテスト飛走に徹しこのような戦術を取るのならば、
(つまらないヤツ……見込み違いだったかしら)
 アイザは前を行く《スカイ》を見てそう感じた。


「よし!!」
 クリュウは手ごたえを感じていた。
(すごい機体だ)
 決して新しい機体とはいえない《スカイ》。だが、幾度と無く改修を繰り返してきた《スカイ》からは洗練された性能を感じた。
(お前、すごいよ……だけど――)
 《ホープ》の性能は《スカイ》より更に上を行っている。
 それは、近くで《ホープ》の組み立てに携わったクリュウ自身良く分かっている。同じ0(ゼロ)からスタートしたのでは、《スカイ》が《ホープ》の前を行くことは不可能であった。
(《ホープ》の売りは、燃費の良さ……そして加速性能)
 実際、火速のEoM(エオム)が終わり開いた距離は詰められつつあった。
(だけど、こちらとそちらではHSA(ハイサ)経験(、、)が違う)
 HSA(ハイサ)にはライナーをサポートする"OS"――オペレーション・システムというものが搭載されている。これは瞬時の加速、そしてEoM(エオム)使用に消費するエネルギー等を経験(、、)に基づいて算出、実行するものである。OSの精度が経験に関係する分、まっさらな《ホープ》に対して《スカイ》には分がある。
 だが弊害もたしかにある。乗っているライナーが違う分、すぐには思ったような行動を取ってはくれないのである。
 先ほどの火速のEoM(エオム)もそうであった。本来ならばあれほど距離を離す必要はなかった。これはアイザの戦術に影響されているのであろう。
(コイツにあった戦術を取らないと)
 クリュウは次の行動に移す。
 《ホープ》に接近させない。中距離を保つ。そのために、
 スカイレイルをUの字に描く。
 《スカイ》が《ホープ》に優っている部分がもう1つある。
 それはペンデュラム機構というものを搭載することで、コーナリングを得意とする部分であった。
 通常であれば、現在の《スカイ》のスピードのままUの字にコーナリングするのは自殺行為である。
 これは、スカイレールの上を飛走する文字通りの綱渡りである。
「曲がれええ!!」
 腹部のコックピット部分が横に倒れる。
 ちょうどそこへ《ホープ》のスカイレールが横に引かされた。
 《スカイ》と《ホープ》はすれ違うように入れ違った。


『曲がれええ!!』
 そんな声と共に、《スカイ》は後方へと走り抜けていった。
「そう……そうよ。それがその子の正しい乗り方よ!」
 アイザは歓喜した。
 まさか《スカイ》をそのように乗れる者が他にもいたとは思わなかった。
(面白い……面白いわ、クリュウ!!)
 クリュウは決してつまらないライナーなどではなかった。
 アイザはここ最近感じてこなかった、強敵との対決に興奮を感じた。
(でも、ここまでのテクニックを持ちながら何故逃げるの)
 《ホープ》はスピードを殺さないように大きな弧を描いて曲がる。
 《スカイ》はそれに同調させるように再び――今度は直角にコーナリングする。
(もう、逃げさせなんかしない)
 アイザは《ホープ》を《スカイ》と平行に飛走するように走らせる。
(貴方はあたしの背格好は知らなくても、あたしの2RBは見て来たのよね。さぁ……どうするの?)
 《ホープ》は《スカイ》の後継機、同じくオールラウンダーに戦えるようになっている。
(つまり"ソーサラー"の真似事ぐらい出来るのよ)


(まずい……)
 《スカイ》と《ホープ》の位置関係。今のこれは"ソーサラー"の攻撃態勢ともいえる。アイザは《スカイ》を駆って過去に何度もこの態勢からEoM(エオム)を放っている。
(来るか?)
 中盤でこの態勢に持ち込まれると……特に今の(、、)アイザは危険だ。
 《ホープ》は《スカイ》よりもオールラウンドに戦える性能が向上している。この状態で打ち合っても勝ち目は無い。
『炎射――ショートフレイム』
 詠唱と同時に《スカイ》に向かって小さな炎が飛んでくる。
(これはブラフだ)
 クリュウは瞬時に察知する。
 これを避けると同時に、避けた地点に向かって伸びたスカイレールから飛走する位置を予測して、強力なEoM(エオム)が飛んでくる。
 考える時間は無い。
 クリュウは《スカイ》を曲げる。
 でも、ただ曲げるのではない。
 スカイレールが前もって螺旋状に上へと……そう描く。
 "スパイラル・アップ"――この飛走はそう呼ばれている。
 本来儀礼用の見せる(、、、)飛走技術であった。アカデミー在籍中に幾度と無く挑戦し出来るようになった。2RBである以上この飛走はスパゲッティ・タクティクスと言わざるを得ないだろう。そしてこのスピードで螺旋状に昇るのは至難の技であった。
 さすがのアイザも意表を付かれたのであろう。"スパイラル・アップ"によって2打目のEoM(エオム)を交わすことには成功した。
 本来であればこれほど強力なEoM(エオム)を使用した以上、HSA(ハイサ)は減速するものである。だが、《ホープ》にはそれを補う機構が搭載されている。
 それは"ハイブリット"と呼称されていた。HSA(ハイサ)の車輪部に電魔駆動のモーターを設置しているのだ。通常は魔油によるエンジン駆動で《ホープ》は動いている。だが、今の状況のような火のEoM(エオム)を使用し、エンジンに再び火が灯るラグを雷魔駆動によって補うのだ。このときの雷魔駆動のエネルギーはエンジンによって走ることで発電される為に、1つの機関を動かす為に燃料を1つしか積めないという、2RBのルールに違反することも無い。
『やるわね』
 アイザがクリュウを賞賛する。
『さぁ、上を取ったってことは攻めてくるんでしょう』
「当然」
 今度はクリュウが攻めに移る番である。
 2RBでは上位を取ったものが攻撃の際に有利になる。
 これは下って攻撃をする際に慣性の法則により速度が増すからである。また、下ることによって消費するエネルギーも抑えることが出来る。
 故に2RBにおいてライナー達は互いに上を目指し、そして上を取られないように飛走するのである。
 アイザの意表をつき、上を取ったクリュウは今有利な立場についていた。
 後でアドウに怒られるかもしれない。
 それでもクリュウは剣を抜く。
 《ホープ》も迎撃する為に剣を抜いた。
 《スカイ》が下降を始める。
 アイザであればここで剣撃をおとりにしてEoM(エオム)で攻撃を仕掛けるのであろう。OSもEoM(エオム)の使用準備を完了している。
 だがクリュウは――使わない。
 純粋に剣撃のみで仕掛ける。
 こちらに向かって昇ってくる《ホープ》が避けるには機関で加速するにしろEoM(エオム)を使うにしろ労力が必要になる。
『火速――ブーストアップ!!』
 《ホープ》はEoM(エオム)を使って加速した。
 《スカイ》と《ホープ》が交叉する。
 金属どうしがぶつかる、火花を散らす、音を鳴らす。
 そのまま鍔迫り合いをするでなくお互いは切り抜けた。
 そして立場が逆転する。
 《ホープ》が上位に立ち、《スカイ》が下方にいる。
『甘いわね。攻撃が甘すぎるわ。せっかくな有利な状況を無駄にしたわね』
「クッ」
 確かに、《ホープ》にほとんどダメージを与えることが出来なかった。出来たとすれば、《ホープ》にEoM(エオム)を使わせたぐらいであった。確かに《ホープ》は《スカイ》に対抗する為に多量のエネルギーを消費したであろう。だがそれまでの飛走を鑑みると《スカイ》の方が多量にエネルギーを消費していた。
 実際、下る時には《スカイ》の燃料は残り30%を切っていた。
 クリュウはこれ以上スカイを下らせないように舵を切った。
『早い、早すぎるわ』
(あ!!)
 クリュウはここで始めて自ら飛走ミスを犯した。
 舵を切るのは上位の相手が舵を切るのを見てからで良かったのだ。下位が先に曲がればそれに合わせて、上位の相手もそちらに曲がる。
 これは決定的なミスであった。
 《スカイ》が先に舵を切らなければ、アイザは昇り続けることしか出来なかったはずであった。
 《ホープ》が下り始める。
 《スカイ》には先ほど《ホープ》が行ったような芸当は出来なかった。
 それを行うほど燃料が、無いのだ。
 ここで加速してもあまり意味は無い。
 クリュウには剣を抜き相手を迎え撃つ他なかった。
『雷装――エレ・エナジー』
 ここにきて《ホープ》は下る際に駆動を雷魔駆動に変えていた。当然EoM(エオム)も雷属性に変わっている。
 《ホープ》の刃が雷を帯びる。
 《ホープ》が剣を――《スカイ》はそのままの剣で受け止める。
 剣を通して、電気が《スカイ》にダメージを与える。それだけでなく、《スカイ》の剣にヒビが入る。
(まずい!!)
 クリュウは、瞬時にEoM(エオム)を使うようにOSに指示を出す。想定されていなかった分、少しラグが生じたが……EoM(エオム)が使用可能になった。
「火速――ブースト・ブースター!!」
 アイザは鍔迫り合いになることを想定したのだろう。剣を押す力が増した。
 だが、
『に、逃げた!!』
 クリュウは剣を捨てて、ブースト・アップより優る瞬発力で離脱する。


(何故、ここに来て逃げるの!?)
 本来あの場面であれば、ブースト・ブースターによって鍔迫り合いに持ち込むのが正しかったはずだ。
 《ホープ》の電魔駆動もアイザが思ったより性能が低く、馬力が出ていなかった。
 ブースト・ブースターは瞬発力が高い分、その加速時間は短い。逃げるには使うしかなかったとはいえ、どうして、倒すという選択肢を行わないのか……。
 アイザは悪寒に近いものを感じる。
(何!!何をしようとしているの?)
 長年の2RBにおいて感じたことの無い嫌な予感をアイザは感じる。
『火速――ブースト・アップ!!!』
(ここにきてまた、火速ですって!?)
 《スカイ》に乗っていたアイザだからこそ分かる。《スカイ》の燃料は、その飛走距離を考えるにもう底を尽きかかっている。
 それを分かっていながら、クリュウはEoM(エオム)を使用した。温存するのではないという露骨な選択をした。
 アイザはありえない1つの勝利条件が頭に浮かんだ。
(まさか……オーバーラン……)
 オーバーラン――2RBにおいて定められた距離を走りきることによって勝利するということを意味していた。だが現在において廃れている勝利条件でもあった。元々、お互いに力が互角であり勝負がつかなかった際にこの距離を走りきった者を勝者としよう、と制定されたルールであり、超攻撃力、短期決戦が主流の現2RBにおいて、この勝利条件を満たした者はここ十年いないはずである。 
 もし、初めからオーバーランをクリュウが目的としていたのならば、最初の走り方からして合点がいく。
「そうは……!!」
 エンジンに火を灯し《ホープ》がスピードを上げる。
「――させない!!!」
 EoM(エオム)を使用し、最後の攻撃を仕掛ける。
 燃料が底をついた《スカイ》は攻撃を防ぐ手段も無く。脱線し、海に墜落した。


「お嬢様、お見事でした」
 《ホープ》を降りた、アイザは汗だくであった。
 見ていた立場からすれば、それほど接戦したようには見えないのであろう。アイザの疲弊している様子をみてゴンドは不思議そうな表情をしている。
「……データを」
「はい、こちらに」
 ゴンドはすかさず《ホープ》の飛走データをアイザに手渡す。
「これじゃないわ、《スカイ》との戦闘データは!」
「それは……ございません。申し訳ございません」
 本来これは、《ホープ》の飛走テストである。旧機のデータは取っているはずが無かった。それでも、主の期待にこたえられなかったことを悔いゴンドは真摯に頭を下げる。
 アイザも当たり前のことに気がつき冷静になる。
(危なかったわ、本当に後数メーヤで……オーバーランだったかもしれない)
 見れば引き上げられた《スカイ》からクリュウが降りてきているところだった。《スカイ》はボロボロでこれではゴンドの言うとおり表面だけ直して貯蔵するしかないかもしれない。降りてきて早々クリュウは、アイザと出合った当初のように頭をぶたれていた。
 だが、彼の表情には悔しさのようなものが浮かんでいた。
(正面から……しかも、ヨー・アイザに……しかも、オーバーランで勝ちに来ようなんて)
 ギャアギャア騒いでいる工房の一面を見ながらアイザは思う。
(面白い、なんて面白いヤツなの、クリュウ・イワサギ)
 アイザは堂々たる舞台で、クリュウが駆る彼のHSA(ハイサ)と戦いたい。そう思った。
いきなり2話投稿です。
今回はバトルシーンまで、連続で投稿しました。

楽しんでいただけたら幸いです。

今回2個目のオリジナル小説になります。練りに練ったネタを放出した形となりました。ジャンル的にも前作よりも受け入れられやすい物になっていると思います。

これからよろしくお願いします。


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