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シンクロナイズド キリング
作者:瀬田 和佳
 おや? どうやらあなた宛ての手紙が一通、こちらに届いているようです。 差出人は明らかではないようですが、それも中身を読めばわかるかもしれませんよ。

 さあ、どうぞお読みになってください。








-前略


 いきなりのお手紙ごめんなさい、でも本当に久しぶりですね。

 ってか、お前誰だ!って感じ? そりゃそっか。(笑)

 でもまあ、君ならそのうちわかると思うから、ちょっとしたお楽しみってことで、あえて名乗らないままにしてみるよ。

 でも一応ちょっとヒント。 あんまり簡単には思い出せないかもね。
 君とは昔クラスメイトの間柄だったんだけど、しょせん僕は君の人生のちょっとした楽しみに使われてただけの、ゴミ同然の人間だっただろうから。


 ね? まだ何の事か、全然思い当たることないでしょ? まあ、君は皆の中ではどちらかっていうと見てただけみたいな穏健派の加害者だったし、それも仕方ないのかな。

 いやあ本当に、『鼠壁を忘る 壁鼠を忘れず』ってことわざのとおりだね。 こんなこと言う僕だって、たまに家に出てくるクモやらゴキブリにどれだけひどい事をしてるかなんて考えてみたって、全然ピンと来ないもの。 考えてみたらすごく的確なことわざだって思う。




 ところで、なんで僕が急にこんな手紙をよこしたか、少しは気になる? もちろんちゃんとした目的があってのことだから、もし良かったらちょっと読んでみてほしいな。


 僕、そろそろ疲れたから、自分の人生なんてしょうもない茶番はこのへんでもうおしまいにしちゃおうかと思ったんだよね。
 その報告が一つと、あと君にちょっと伝えておきたいことがあったからでね。

 実は僕、実際何年たったのか良くわかんないけど、君達との『楽しい学園生活』の頃から今までずっと、あることを必死で研究しててね。 文字通り死ぬ気で。(笑) それをとうとう数日前にやり遂げたわけ。


 何かっていうと、『自分と他の誰かの肉体感覚を同調させること』なのね。 つまりは、同調した二人の片方が傷つけばもう片方も同じ傷を負うってこと。


 これで僕の目的だけはもうわかった? 
 そう、積年の恨みを晴らすってことで、君にも一緒に死んでもらうからね。

 それにしても、我ながらものすごいモチベーションを発揮したもんだって思ったよ。 心理学に生理学、あと宗教やら脳科学も片っ端から勉強したもん。 黒魔術なんてのにも手を出してみたりしてね。 あんなに生き生きした気分で自殺の準備に取り組めたっていうのも、考えてみるとおかしな話だけどね。

 あ、そうそう。 ちょっと面白い事がわかったから、ついでに教えてあげる。 心理学を何年も学んできた僕が確信を持って言える、『僕たち』の本性だ。
 僕達は虐げる側と虐げられる側、正反対の立場にあった者同士だったよね。 でもね、根元の部分では本当に僕達は似た特徴を持ってて、びっくりするほどシンクロしてたってことに気づいたんだ。


 じゃ、僕の心の中はこうなってるっていうのを、今から書き出していくね。

 人前ではもっと明るくて幸せそうな自分でいたいのに、どこかうまくいってない気がして、そんな自分のことをいまいち好きになりきれないなんて思ってた。 それでも常に改善したいって向上心はあって、生まれ変われるきっかけが欲しかった。
 いざという時には頼りになる人だと思われたいけれど、でも意外と傷つきやすくてときどき臆病になる一面もあるかな。 そのせいで、たいていの悩み事はまあまあ簡単に忘れられる一方で、特に人間関係についての問題があるとくよくよ悩みがちになるタイプの人間だ。

 自分がどれだけ満足してるか、っていうのを真剣に考えることがあって、その上で自分の満足と周りとの調和を大切にしたいと考える、言っちゃなんだけどけっこう立派なポリシーがある。 それに自分の考えることの独創性にも少し自信があって、根拠もないのに人から別の意見を押し付けられるっていうのは好きじゃないね。 
 ああ、あと、ある程度は変化のあることやいろんなことが経験できる生活も望んでたかな。 独創性を伸ばしてみたいって意味でも。


 これは僕の心について書いたことなんだけど、君の心の中の分析でもあるんだよ? たとえ意識的に否定しても無駄だよ。 もし今これにほんの少しでも何か感じることがあったなら、それが君の本性だ。


 君はすでに、さっきまでよりも少し息苦しく感じてて、心拍数も上がってるはずだ。

 さて、なぜそんなことわかるんでしょう?
 この手紙を読んでる今この瞬間にも、僕は君の事を見てるから。 ていうか君の家のまん前に立ってるから。
 僕の鼓動がバクバク高まってくれば、それは君がこの手紙を読んで動揺してる時だって証拠だな。


 さあ、勇気があるならその窓から外を見てごらん。 向かいの道路を。 今の僕の姿を見たら、一体君はどう思うかな? ちょっと凄い姿だよ?

 とりあえずお前らへの気持ちがたっぷり伝えられる道具をたくさん用意してきたから。


 いっとくけど、楽に死ねる方法でぼくが死ぬとは思っちゃだめだよ。 気が狂うくらい強烈で苦痛に満ちたやり方で追い込んでやるから。
 生爪や眼球よりも何倍も痛みに弱い部分を発見したし、楽しみに待ってなよ。


 君達は僕よりましに生きてきただろ? 家族は元気? アルバイトもやってるかな?
 学校は楽しいですか? 好きなテレビもあるよね? 恋人どうしてる? きになるひとは? 将来の夢は何?

 きみは、明日に少しでも希望があるんだろうか?




 そういうのが全部台なしになるよ。 いまから。

 その部屋でもだえながら ひとリで死んじゃえ。



 それじゃあみなさんさようなら、また来世で 

 くたばれ ぎぜん者ども-










 ……あらら、これはまたストレートな事書いてあるもんですね。 相当の恨みがこもってるじゃないですか。


 あれ? でもこの手紙の日付、だいぶ前のですね。 てことは、この彼の呪いみたいなものは、結局失敗に終わってたんでしょうね。
 あははは、だとしたらバカな話ですね。 それとも怖気づいてやめちゃったとか?



 それにしても、あなた――

 この彼が誰だったかは聞きませんが、こんなに書かせるなんて、いったい彼に何したんです?


 それとも、本当にもうすっかり忘れちゃったとか?
 そんなわけないですよね。 何をしたのか、私にだけ内緒で教えてくださいよ。


 さあ、さあ。


 手紙の送り主に、心当たりはありましたか?



 企画のためにちょっとこしらえてみたものの、5分で読める超短編を意識したらこういう物語にすらなってないもんになってしまいました。
 ま、ホラーのニュアンスとして、であるかはともかく、いくらかでも納涼のお力添えになれば光栄なことです。


 最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
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