「ほら、これやるよ」
「え?」
あたしの目の前に、小さな包みが差し出される。
「これ……?」
「いや、いちおうその――俺からな」
「くれるの?」
あたしがそう言うと、困ったように彼が頭を掻いた。
「だ〜か〜ら、俺からだって!」
「えっと、何が……?」
「だから、誕生日のプレゼントだっつーの!」
「あ……!」
やっと意味を飲み込む。
「えっと、その、もらっていいんだよね……?」
「お前がもらわなかったら、誰がもらうんだ」
「あ、そっか」
イマドがため息をついた。
「ったく、どこまでボケてんだ」
「ご、ごめん……」
自分がなさけなくなって、なんだか泣きたくなる。
でもその前に、イマドが包みをあたしに持たせた。
「開けられっか?」
「う、うん」
リボンをほどいて、包み紙を破らないようにそっとはがしていく。中から箱が出てきて、それもそっと開けた。
「あ……♪」
自分の顔がほころぶのが分かる。
出てきたのは、可愛いキーホルダーだった。
「ごめんな、ンなちっちゃいモンで。
まさかお前が、あそこまで大金持ちのお嬢さんだとか、思ってなくてよ」
「ううん、いい。これで、いい……」
どうしてだろう? 悲しくないのに、涙が出てくる。
「大事に、するから……」
「ンなたいそうなモンじゃねぇって。
それよりそろそろ、戻るか? いい加減暗くなっちまったし」
言われてあたりを見回すと、確かにもう日が落ちて、空に星がまたたいていた。
吐く息も少し白い。
「――そうだね」
優しい潮騒の音を聞きながら、学院への連絡船に乗った。ほかに乗客はいない。
船の後舷へ出てみると、街の明かりが遠ざかって、暗い海の上にゆらめいた。
振り仰ぐと、煌く星が目に飛び込む。
海にまたたく灯と、空にまたたく星。
この光景を忘れたくない、そう思った。
Fin
◇あとがき◇
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。明日より第6作「表と裏」の連載となります。いままでどおり、毎日“夜8時過ぎ”の更新です。
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