「あと四年で……あたし、総領になるの。でも、あたしには……ムリ……」
こんなことを人に言ったのは、初めてだった。今まで周囲にはシュマーの人間しかいなくて、とても言えなかった。
あたしにとってシュマーの人間たちの、あの敬愛のまなざしは重荷だった。
彼らはあたしを疑わない。そういうふうに出来ていない。グレイスと総領には絶対服従、それがシュマーだ。
だから、間違うなんて許されない。
「そんなの、あたしに、出来るわけ……」
うつむいてため息をつくあたしに、イマドが言葉をかけた。
「ん〜、お前ならできるんじゃねぇかな」
「――どうして?」
「すぐ泣くから」
「え?」
これは――初めて言われた。当然意味などわからない。
あたしの驚いた様子に、イマドは「上手くいえない」と言いながら、言葉を続けた。
「なんつーのかなぁ……お前マジ泣き虫だろ? ぜんぜんリーダーっぽくないって言うか」
気のせいか、ひどいことを言われてるような……。
「でもよ、だからいいと思うんだ。リーダー然としてるヤツって確かに頼り甲斐あるけど、どっか雲の上って感じじゃん。
だけどお前だと、誰かになんかあっただけで泣いちまってさ。そりゃそーゆーの、リーダー向きじゃないかもしんねぇけど、ついてく側にはありがたいぜ?」
「そう、なの……?」
あたしはいつも周囲から、泣くのを止めろとばかり言われていた。
「全員が全員そうとは言わねぇけどさ。
でもお前みたいなのがトップだと、『あ、心配してくれてるんだな』って気になるんだよな。自分たちのこと、ただの駒みたいに考えてねぇなって。
――だから、できると思うぜ」
毎度のことで我ながら情けないけど、また涙が出てくる。
「ほらな、これだけで泣いちまうし。
まぁ、お前自身はそうとうツラいだろうけどさ、周りは好きでついてきてる、ってパターンになるんじゃねぇのか?
だから、やってみろよ」
最大級の、励まし。
イマドにそう言われると、できそうな気がする。
「ありがと……」
泣きながらだけど、笑ってみる。
そんなあたしを見て、彼も笑った。
「そうそう、その顔な。
――あ、そうだ。すっかり忘れてたぜ」
何かを思い出したようで、イマドがポケットをまさぐった。
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