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Chapter:02 神話
Episode:15
「あと四年で……あたし、総領になるの。でも、あたしには……ムリ……」
 こんなことを人に言ったのは、初めてだった。今まで周囲にはシュマーの人間しかいなくて、とても言えなかった。

 あたしにとってシュマーの人間たちの、あの敬愛のまなざしは重荷だった。
 彼らはあたしを疑わない。そういうふうに出来ていない。グレイスと総領には絶対服従、それがシュマーだ。
 だから、間違うなんて許されない。

「そんなの、あたしに、出来るわけ……」
 うつむいてため息をつくあたしに、イマドが言葉をかけた。
「ん〜、お前ならできるんじゃねぇかな」
「――どうして?」
「すぐ泣くから」
「え?」

 これは――初めて言われた。当然意味などわからない。
 あたしの驚いた様子に、イマドは「上手くいえない」と言いながら、言葉を続けた。
「なんつーのかなぁ……お前マジ泣き虫だろ? ぜんぜんリーダーっぽくないって言うか」
 気のせいか、ひどいことを言われてるような……。

「でもよ、だからいいと思うんだ。リーダー然としてるヤツって確かに頼り甲斐あるけど、どっか雲の上って感じじゃん。
 だけどお前だと、誰かになんかあっただけで泣いちまってさ。そりゃそーゆーの、リーダー向きじゃないかもしんねぇけど、ついてく側にはありがたいぜ?」
「そう、なの……?」
 あたしはいつも周囲から、泣くのを止めろとばかり言われていた。

「全員が全員そうとは言わねぇけどさ。
 でもお前みたいなのがトップだと、『あ、心配してくれてるんだな』って気になるんだよな。自分たちのこと、ただの駒みたいに考えてねぇなって。
――だから、できると思うぜ」
 毎度のことで我ながら情けないけど、また涙が出てくる。

「ほらな、これだけで泣いちまうし。
 まぁ、お前自身はそうとうツラいだろうけどさ、周りは好きでついてきてる、ってパターンになるんじゃねぇのか?
 だから、やってみろよ」

 最大級の、励まし。
 イマドにそう言われると、できそうな気がする。
「ありがと……」
 泣きながらだけど、笑ってみる。
 そんなあたしを見て、彼も笑った。

「そうそう、その顔な。
――あ、そうだ。すっかり忘れてたぜ」
 何かを思い出したようで、イマドがポケットをまさぐった。


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