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Chapter:02 神話
Episode:13
「いい、の……?」
「いいって」
 その瞬間――あたしの中で何かが、ふっと軽くなる。

 ずっと辛かった。
 父さんや母さんと一緒だったころと違って、誰もあたしの本当の姿を知らなくて、でもそれを知られないように隠して……。
 こぼれる涙が止まらない。

「あたし……シュマー家の、次期総領なの……」
「――なるほど」
 なんだかあっさりとイマドが納得した。
「これだけで、分かるの……?」
「いや、わかんねぇけど。でもよ、よーするにそゆ立場なんだろ?」

 いい加減と言えばいい加減だけど、イマドなりに理解はしているらしい。
 あたしはひとつ息を吸って、話し出した。
「うちの家、ふつうは『次期総領』はいないの。
 けどあたしは……グレイスの名前を持ってるから、特別で……」

 うちの家でこれを名乗るのは、あたし一人だ。逆に言えばそれだけ、この「グレイス」という名前には重さがあるということになる。
 もともとの由来は、家の始祖メイア=グレイスから来ていた。
 遠い昔、まだ人が神と争っていたころ――彼女は神を封じたのだという。

「あれ、それって言い伝えと違わねぇか?」
「うん、少し違う」
 一般に伝えられている伝説では、神は封じられたんじゃなくて、「逃げた」ってことになってる。
「魔法の力を手に入れた人間は、軍を組織して天へ攻め込んで……」
「けど、居なかったんだよな」
「うん」

 世界を創りなおすという神に、人は逆らった。門をくぐり天へ攻め込み、それを見た神は、地上を予定より早く焼き払った。
 同時に神は天界に怪物を大量に放ち、人間を襲わせた。一瞬にして人々はパニックに陥り、散り散りになって地上へと逃げ戻ったという。
 それでも戦い慣れたごく少数は、天の城へ攻め入り玉座までたどり着いたが、そこに神の姿はなかった。

「だから、逃げたんじゃないか、って話だろ」
 イマドの言うとおりだ。
 そのあと、人は天界から魔獣に追われて逃げ戻り、焼かれてさらに貧しくなった大地のせいで、互いに争うようになった。
 そして消えた神は、いまもどこかに潜んでいるのかもしれない。そう伝説は締めくくっている。

「ただ、うちじゃ、そこが違うの」
「えーっとつまり、シュマーじゃそのメイアとやらが、封じたってなってるワケか?」
 考えながら言う彼に、うなずく。
 そして、続けた。



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