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Chapter:02 神話
Episode:12
◇Rufeir
 話して……いいんだろうか?
 あたしは悩んでいた。
 自分がシュマー家だと言うのは、どのみちイマドには話さなければならないと思っていた。
 だからそれは、別にいい。

 だいいち今でも、イマドはあたしの特異体質に併せた薬を持ってくれていて、何かあったときは対応してくれることになっている。
 でも……その先は別だ。
 聞けば、いやでもあたしにまつわる一連の流れに、巻き込まれるだろう。
 そんなことに、イマドを巻き込んでしまっていいんだろうか?

――グレイスは死神。
 そう、昔ファールゾンが言っていたのを思い出す。
 でもそんなあたしに、イマドが意外な言葉をかけた。

「『グレイス』は、ンなに珍しいのか?」
「知ってる……の?」
「お前の普段のラストネームが、ホントはミドルネームだってことはな」

 どうやら母さんから聞いたらしい。
――またお節介して!
 ほんとうに母さんと来たら、油断も隙もない。

 あたしの本名は、ふだん学院などで使っているのとは、少し違う。グレイスは実際には、ラストネームではなくミドルネームだ。
 ルーフェイア=グレイス=シュマー。それが本当の名前だった。

 シュマー家と言うのは、軍関係者の間ではわりあい有名だ。かなり長い間続いている傭兵の家系で、子弟を戦場で育てることで知られている。
 ただ家の人間は実際にはシュマー姓を名乗らないから、ちまたじゃ噂だけで誰も実態はしらない、という状況になっていた。
 それにしてもいったいどこまで聞いているのか、不安になる。

「けどそしたら……何を、知ってるの?」
「だから、お前の名前だけだって。
 けどグレイスってのがメチャクチャエライのは、さっき分かった」
「そっか……」

――こんなに察しがいいなんて。
 けど、次に思い出す。イマドに隠し事は、できたためしがない。

「で、グレイスってなんなんだよ?」
 気軽な調子で彼が訊いてきた。
 どう説明するか迷う。
 だいたい、ちょっと説明して分かるようなものでもないし……。

 違う。
 それ以前にあたし、どうしてこんなにすらすら話してるんだろう?
 イマドは……関係ないのに。
 知ってほしいのと、言ってはいけないのとの間で、あたしは黙ってしまった。

「ま、さっきも言ったけど、言いたくなきゃそれでいいしな。
 けどよ……他に誰も知らないっての、けっこうつらいぜ」
 はっと顔を上げる。
 イマドと視線が合った。
 寂しいのか哀しいのか分からない、イマドの不思議な表情に、なぜか涙がこぼれた。


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