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『CROWN』
作:是音



TURN8〜能力戦・弐〜


「仲間になれ・・・だと?どういうつもりだ!」

ザックは本気の殺し合いをしている状況でのアウスの意外な発言に驚いた。

「貴様は一年前、都市部『DEADLY TABLE』で私と戦った時より格段に強くなっている。私は貴様が目の前に再び現れた時、もし貴様が弱いままなら処分しようと考えていた。
しかし今の貴様は処分するには勿体ない程の戦力に成長した。今の我々には戦力が必要。
もし仲間になるならば貴様の知りたがっている全てを教えよう。もちろん、この『CROWN』についても、その目的も、だ。」

(やはりこいつは全てを知っている!)

「オレはどんな理由や目的があろうと、無差別に拉致や人殺しをするお前達やこの『CROWN』とかいう馬鹿げたゲームを許さない!!必要な情報はお前から力ずくで聞き出す!!」

今もこの世界では魔鬼に襲われたり、生きる為の殺し合いをしている者が大勢いる筈だ。皆を救う為には自分がこの男を倒して、脱出方法を聞き出す他無い。
ザックは大きく深呼吸するとアウスを見据えた。

「どうやらこちらも力ずくで連れて行くしか無いようだな。
貴様は『CROWN』の必要性がわかっていないだけだ。今我々についてこなければ・・・貴様に未来は無いぞ!」

アウスはさっきより遥かに速いスピードで突撃して来る。仮面の下のアウスは本気だった。自分は使命で行動しているのであって、好きで人殺しをしている訳ではない。さっきの会話の中でザックにそう言いたかったが、今は不粋な考えは排除して戦いに集中することにした。

「オレの能力が影を飛ばすだけだと思うなよ!」

「!?」

間合いに入ろうとしたアウスの動きが止まる。まさかと思って目線を自分の影に送ると、案の定ザックのナイフが自分の影に刺さっていた。

「昔漫画でこんな術を見たことがあったんだよ。修行中レイモンドへの悪戯に使った技が役に立ったぜ。後で殴られたけどな。」

そしてザックの後ろの影が増大し、無数の槍となってアウスに襲い掛かる。

「くっ、融合!」

〈トプン〉という音と共にアウスが影のなかに沈み、影から地面へ転移する。
地面からザックを囲むように五本の巨大な腕が現れ、一斉にザックを押し潰す。が、腕の先にはザックの姿は無い。地面から現れたアウスは周りを見渡す。

「影を使った移動術も漫画譲りだ。」

アウスの背中に強い衝撃が走る。

「ぐぅ・・・っ」

ザックが初めてアウスに与えた攻撃は、皮肉にも一年前にアウスが初めてザックに与えた攻撃と同じ形だった。

「なめるなぁぁぁ!」

足で踏み留まったアウスは地面に腕を沈める。
〈ズン!〉
飛び出した土の腕にザックは殴り飛ばされた。
さらに起き上がったザックに追い打ちをかけるように地面から土人形が無数に這い出てくる。

「な、なんて数だよ。」

影刀を伸縮させながら土人形を切り刻む。しかし、アウスは腕を沈めたまま次々と土人形を精製していく。
(このままではキリが無い!)
と思ったその時

「ヒュー!人形同士仲良くやろうぜぇ!!」

上空から無数のレーザーが土人形をなぎ払い、飛んできた二枚のシールドが切断していく。

「ここは任せて、お前は本命を仕留めろよ!」

「すまない、サイ!」

走り去ろうとするザックを土人形が囲む。
〈グルルルルル・・・〉
地面から現れた《邪混沌》がザックを抱き抱える。
〈ズバン!〉
ザックと邪混沌の周囲に群がる土人形は一瞬にして粉々になる。

「サンキュ、新入りっ」

糸を巻き取る邪混沌の胸をポンと叩くとザックは再びアウスにむかって走りだす。
〈グルオォォォ〉
それに呼応するかのように邪混沌は一唸りすると、サイの援護に戻っていった。

自分へと突撃してくるザックを見たアウスは地面から腕を抜き、土人形の精製を中断する。
地面から突き出てくる槍を全て回避し、アウスも驚く程の速さで急接近する。

「おおぉぉぉ!」

〈ドゴッ!〉
渾身の拳をアウスの仮面をつけた顔面にぶつける。吹き飛んだアウスの仮面にはヒビが入っていた。
アウスから出る殺気がさらに増した。そしてザックに叫ぶ。

「貴様、名前は何という!」

「オレの名前はザックだ!!」

放たれる殺気に圧倒されつつもザックは答える。

「ではザック、決着を付けよう。」

アウスは精神を集中する。そして遠くで炎上するヘリから炎を呼び寄せ、融合する。しかし、ザックは融合したアウスの巨大さに言葉を失った。

「我が名はジオ・エンプレス戦闘隊隊長アウス!クラスは《JOKER》!!」

身長が三メートルにまで巨大化したアウスは完全に炎の化身と化していた。

「ぅおい!何だよこのデカイ焚き火は!?」
「もしかして、あの仮面の男!?」

駆け付けたレイモンドとユノは炎の化身となったアウスに驚愕した。
三人は目線を交わし合い、呼吸を合わせる。

「行くぞ!」






死闘が始まろうとする、その時だった。

〈ヴォアァァァァァ!!!!〉

「!!?」
「何!?」

突然上空から響く魔鬼の超規格外の叫び声に、その場にいた誰もが、ダラム兵やZ・E戦闘員までが戦闘の手を止め、上空を見上げる。

「おいジン、ありゃなんだ?」
「って、オレに聞くなよ!」
「ま〜どう見たってあれは魔鬼だよねぇ。」
「でもあんな大きさの魔鬼見たことないわよ!?」

アウスとザック達の戦闘を遠くから見ていたアンカー、ジン、スティング、ライアは突然の乱入者に目を奪われていた。

上空には穴が開き、中から超巨大な魔鬼が一体這い出てきた。
その身体の腕や脚からは鎖が垂れ、頭から下半身まで包帯に覆われている。その包帯の下から覗く六つの眼球はダラム基地を見据えていた。
〈ヒィィィィィン〉
そしてその口はエネルギーを収束しはじめる。

〈バァン!〉
アウスの放った火球が巨大魔鬼の顔に炸裂する。
魔鬼は収束を止められ、大きく揺らいだ。
三メートルの大きさになったアウスでも巨大魔鬼の三分の一程度だった。アウスがダラム基地へ向かって叫ぶ。
「ボサっとするな!全員撤退しろ!負傷者を優先して搬送し、ヘリはなるべく遠くを迂回して領域を離脱しろ!!」

アウスの命令に我を取り戻した戦闘員は急いで撤退しはじめる。
三体の大傀儡を引き連れたサイがザックの所へ現れた。
「ふぅ、どうなってやがんだ?」
「それより、ダラムに攻撃されたらまずい!ザック、あの魔鬼を始末するぞ!ユノ、サイ、お前達はダラムの避難を手伝いに行け!」
レイモンドが叫んだ。

「よし急ぐぞ、ユノ!」
「え?ちょっ、うわぁ!」

牙陰はユノを強引に抱えると肩に乗せて走りだした。陽斬の肩に乗ったサイと邪混沌も後に続く。


すでに魔鬼にはアウスとダメージの少ないスティングが応戦していた。
スティングは音速打撃で魔鬼の目を三つ潰していた。激痛で暴れ、振り回す腕を巧みに避け、アウスの火球が動きを止める。
スティングはアウスを見上げながら言う。

「アウス、あれはまさか・・・。」
「あぁ、本社の試作品と見て間違いないだろうな。その話は後だ。さっさと片付けるぞ。」

ふと見ると魔鬼の動きが止まっている。アウスが不思議に思っていると、魔鬼の影を掴んでいるザックが叫ぶ。

「レイモンドがこいつの目を全部潰した!オレが動きを封じ込めてるから早く殺れ!!」

「フン、貴様に言われなくても・・・!」

アウスは魔鬼の腹に両手を添えて叫んだ。

「最・高・火・力!!!」
一瞬にして魔鬼を炎が包み込み、そして灰に変えた。

「やった・・・!」

ザックが思わず声を漏らす。アウスを見ると、元の漆黒の衣を纏った仮面の男に戻っていた。

「アウス・・・だったか?今のは何だったんだ?」

「・・・貴様達四人は明日我々Z・E隊の本部へ来い。別に仲間になれとは言わん。会わせたい人物がいる。そこで真実を知るがいい。明朝ここへ迎えにくるから考えておけ。」

そう言うとザックの反応を待たずにアウスは背を向け、ジンとアンカーに肩を貸してヘリに乗り込んだ。

「君たちはオレらに勝った。真実を知る権利がある。」

スティングがいつになく真面目な表情で言い、ライアに肩を貸してヘリへ乗り込んで行った。
ザックは黙って飛んでいくヘリを見つめていた。

「どうすんだザック?あいつらの考えてること、オレには全然わからんな。」

「とりあえずダラムに戻ろう。サイとユノに今の事を話す。それに・・・」

「それに?」

「ミシェルが心配してるぜ。」

ザックとレイモンドは互いに笑い合い、基地へ帰っていった。












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