TURN4〜情報〜
暗い部屋。無数のモニターを見つめる一人の女。数々の映像が一定のタイミングで切り替わっていく。
〈ガー〉後ろのドアが開く。
「遅い。」
背を向けたまま中に入ってきた漆黒の衣を身に纏った仮面の男に言う。
「また遊んでいたわね。あなたにはやってもらう仕事がたくさんあると言っているでしょう?」
男はその言葉には答えずに報告を始めた。
「部隊を引き連れての例の情報捜査は進展無し。
次に個別行動での貴重能力調査の結果、ランク《JACK》の影能力、及びランク《QUEEN》の爆破能力を確認、交戦するも時間の関係上撤退。後に再調査の予定。
他には貴重能力は見当たらなかった為処分。途中『魔鬼』20体と遭遇、戦闘。」
「そう。今年は貴重能力確認数が多いわね。例の件同様調査の続行お願い。」
「了解。」
画面を見つめながら女は嘲笑する。
「何も知らずにただ殺し合いをするだけだと思っている。・・・本当に選ばれた者のみがこの真実を知ることができる。ね?アウス。」
「はい、メーヴェ。」
アウスと呼ばれた仮面の男は一礼して部屋を出ていった。
「殺されなかったのは本当に奇跡ね。」
ユノはソファに座って言った。ここはユノが拠点としている人目につかない一軒家だ。都会を模して創られたこの街には家がたくさんあるが、住んでいる人なんているはずない。といってもいつまでも拠点とするわけではなく、度々移動しないと標的にされてしまうらしい。
しかしながら、さっきは状況を打破する為に共闘したものの、この少女は自分を敵だと認識しているのだろうか?だが今は情報が足りない。
ザックはずっと聞きたかったことを質問した。
「君は戦い慣れているみたいだが、いつからこのゲームに連れて来られたんだ?昨日連れてこられた人達だけじゃないのか?このカードの意味は何だ?それにさっきの化け物も・・・。あの仮面の男は何なんだ?」
突然浴びせられる質問の嵐にユノは戸惑った。
「ちょ、ちょっと待って!あなたここに来たばっかりなの?・・・わかった、一つ一つ説明していくから。」
「まず、私がここへ連れて来られたのは一年前。突然だったわ。学校から帰宅途中にバスで少し眠って、目覚めたらここだったわけ。あらゆる場所から連れてこられた人達と出会った。殺し合いを避けてここから逃げ出す方法を探している人、純粋に殺しを楽しむ人、私も生きる為に何人も殺してきた。最初は自分の不運に泣いたわ。でも泣いてたって仕方ないじゃない。」
ザックは自分と同じ考えを持った人がいることを知って驚く。
「ここから逃げ出す方法を探している奴がいるのか!?」
「ええ、いたわ。もう死んでしまっていないけど。」
「そうか・・・。」
ザックは少し落胆した。
少女は次の話題を話し始める。
「このカードの名前は正確には《D-CARD{ディメンションカード}》というの。これに能力が備わっている事は知ってるよね?ちなみに私の《QUEEN OF SPADE》の能力は戦闘見てて気付いたと思うけど、戈の先に触れたものを爆破することができるの。で、このカードにはランクがあって、
貴重度の高い方から順に、《JOKER》《ACE》《KING》《QUEEN》《JACK》《数字》
となってるの。ただ、能力は進化していくみたいだから貴重度が高くても強いとは限らない。鍛え方によっては《数字》クラスでも《QUEEN》クラスの能力者を倒すことだってあるわ。
でも《JOKER》だけは別。貴重度も能力の強力さも他とは桁違いだという噂。
ハートやスペード等の関係は私には分からないわね。」
ザックはあの時意識が薄れていく中で聞こえた言葉を覚えていた。
『《JOKER》を使うまでも無かったな。』
おそらくこのゲームで最強はあの仮面の男だろう。
「それから、あの化け物の名前は『魔鬼』。さまざまなタイプが存在するけど、まだ詳しくはわかっていないの。どこから現れて、何の為に存在するのかも。とりあえず私達の敵であることは確かよ。ごめんね、私もまだ情報が集まってないの。」
ザックは最後に一つ少女に聞いた。
「オレはなるべく大勢を助け、このゲームから逃げ出したい。だが、ここでのルールは殺し合いだ。君はオレを敵だと認識しているのか?場合によってはオレ達は今から戦うことになる。」
ユノは笑いながら言った。
「馬鹿ねぇ、今から殺そうとする人物の為にわざわざ長ったらしい説明するわけないじゃない。正直ここで生き延びるためには仲間も必要なの。で、ここへ来るときの説明の中でルールは、『殺し合いをして勝ち残ることだ』ってあったわよね?一見するとそれは『最後の一人になるまで戦え』って意味に聞こえるけど、『ある期間まで人を殺してでも生き延びろ』って意味にも取れなくもないじゃない?私はそう思うわ。そして後者を信じて戦っているの。だから、あくまで私が戦うのは魔鬼に襲われた時や、無差別に人を殺す奴と出会った時だけなの。あの仮面の男のようなね。」
「なるほど、だがそんな期間の間だけ殺し合いをさせる目的は何だ?」
「それはこのゲームの企画者しかわからないわ。とりあえず私達が戦うことはないってことね。」
ザックは苦笑して肯定した。
「これからどうするんだ?」
「とりあえずここを移動してどこかに隠れないと。またあの男が来るかも知れない。」
「隠れるって何処へ?」
「地下の基地に私達と同じ考えをもつ仲間達がいるの。」
「地下のさらに地下か。だんだん人間がモグラみたいに思えてくるな・・・。って、基地!?このゲーム一体何年続いてるんだ?」
「一応この世界にも昼と夜があるみたいだから、それで数えると大体20年くらいらしいわよ。」
「に、20年!?」
「それに一年に一度あなたみたいに世界中から拉致されて送られてくるわけだから、最後の一人になるのは不可能ね。」
半ば呆れ顔のザックと共にユノは笑いながら家を出た。このゲームの世界が大きく動き出し始めていること等少しも知らずに。 |