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『CROWN』
作:是音



LAST TURN〜最終決戦〜


新資源システムが起動していないミシェルを、ザック達は圧倒していた。オズマの言う通り、ミシェルはオズマ達ほどの操作技術はなく、強いて言えば金色の龍怒が通常より性能がいいから戦況を保っていられるようなものだった。

「こんなもんかよミシェル!?」

「フフフ、舐めてもらっては困ります。」

ザックの剣撃をミシェルはヒートブレードで払う。コクピット内のパソコンを見たミシェルは内心焦っていた。
(あと一分ですか。なんとか持ちこたえないといけませんね。)

龍怒の背後に大きな岩が直撃した。アウスだ。
バランスを崩した龍怒はスラスターでザック達から離れようとする。
「逃がしはしないわ。」

機体がガクンと揺れた。スラスターでも持ちこたえられない程メーヴェに重量を重くされたのだ。龍怒は地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなった。接近してくるザック達に倒れた姿勢のまま口からレーザーを発射するが、躱されてしまう。仕方なく全方向にエネルギーシールドを張って時間を稼ぐ。

「白影回羅!!」

ザックの一閃でエネルギーシールドが砕け散った。

「終わりだな、ミシェル。」

その時、
『新資源システム起動準備完了、新資源システム起動準備完了、・・・』
コクピット内に音声が流れた。それを聞いたミシェルは即座にキーボードを叩く。モニターには『システム起動』の文字が出ていた。

「これで形勢逆転ですよ!!ハハハハハ!!」

突如重力を制御していたメーヴェの能力が弾かれた。アウスとザックも龍怒から離れる。

龍怒は飛び上がった。周囲を包んでいた虹色のオーラは全て紫色に変わり、広範囲に広がり龍怒を包み込んだまま巨大な人型を形成していく。
龍怒は人型の胸部に位置したまま飲み込まれ、そこに上半身だけ露出した。頭部には青い宝石が露出し、手には純白の盾と漆黒の剣、そして全身を紫色の甲殻に包まれた異形の巨人と化した。

「どうですか?これが新資源システムによって生み出された魔神『メサイア』です!エンドオブワールドなんて目じゃありませんよ、これは《世界》ではなく《宇宙》を終わらせる魔神なのですから!!ハーッハハハハハ!!」

ザック達はエンドオブワールドより遥かに巨大なメサイアに威圧された。
「くっ、起動しちまったか!」
「だが倒すしかない!」

アウスは炎の化身となって自分より何倍も巨大な火球を作り出した。
「獄炎鬼葬!!!」

アウスは胸に露出している龍怒めがけて放った。しかし純白の盾にあっさり弾かれてしまった。

「『ヒラリス』の新資源エネルギーで構築された盾は絶対に通りませんよ!『ヴァルガ』の新資源エネルギーで構築された剣の威力をその身で味わいなさい!」

メサイアが漆黒の剣を振り下ろした。巨大な体からは想像もできない速さで振り下ろされる剣を回避するためにメーヴェが剣の横へ圧力をぶつけた。しかしびくともしない。メーヴェはさらに集中する。

「Extreme Pressure!!!{極限圧力}」

完全支配能力の威力にはメサイアもかなわず、剣はザック達を大きくそれた。
ヴァルガの大地が大きく割れる。中からマグマが噴き出した。
アウスはエンドオブワールドを葬った時のようにマグマをメサイアの脚へ飛ばし、絶対零度で固めた。が、剥がれ落ちたのは岩だけだった。

「『メアス』の新資源エネルギーで構築された甲冑です。そんなちゃちな攻撃で破壊できるわけが無いでしょう?」

ザックがメサイアの懐に入った。巨大な体の弱点は体に取りつかれたら対処ができない点だ。

「『トガス』の新資源エネルギーでこんなこともできるんですよ。」

メサイアの額に付いた青い宝石から青色のレーザーが放たれ、かろうじて避けたザックの肩を焼いた。これでは近付けない。



激戦が繰り広げられているテラでは

「ザック達じゃミシェルを倒せないってどういうことよ!?」

ユノとシド、オズマが話している。
「だぁから、今頃になっても奴らが帰ってこないってことは、新資源システムが起動しちまって、奴らじゃ手に負えなくなってるってことだよ!」
「じゃあ私達はこのまま死ぬ時を待ってろっていうの!?嫌よそんなの!!」
「新資源システムは完璧なんだ!起動しちまったらもう止められねぇよ!」


「・・・一つだけ方法があるよ。」
突然口を開いたシドに視線が集中する。
「ザック達が勝てる方法があるの!?教えなさいよ!!」
「・・・でもダメだよ。僕達はミシェル側の人間なんだから。」
「まだそんなこと言ってるの!?あんた達もこのままだと死んじゃうのよ?」

オズマもシドも黙っている。そこへアザブルが降りてきた。

「シド、もういいじゃないか。お前は十分ミシェルに尽くしてきた。こんな時ぐらい逆らってもいいんじゃないか?」
「アザブル・・・でもさ・・・。」

「お前はどちらが正しいかちゃんとわかっているはずだ。違うか?シド。」

「・・・うん、わかった。」

シドが渋々返事した。そしてコクピット内のパソコンを起動する。
「新資源システムで構成された怪物はそれぞれの世界の新資源エネルギーが絶妙なバランスを保っているんだ。そのバランスを保っているのが『テラ』の新資源エネルギーなんだよ。つまり、その中枢となるエネルギーを破壊すれば・・・。」
「保たれていたバランスが崩れるのね!」
ユノが生き生きと答える。
「そういうこと。しかもテラの新資源エネルギーはミシェルのコンピュータと密接にリンクしているんだ。」
キーボードを叩きながらシドが説明する。
「そこに、僕特製のウィルスを送り込めば・・・ごめんよミシェル・・・。」

悲しげな顔でシドはリターンキーを押した。

「これでザック達は勝てるのね?」
「まだだよ。中枢を壊しただけなんだ。バランスを崩させるにはもう一つどれか新資源エネルギーを破壊しなければならないんだ。」
「あとはザック達次第ってことね・・・。」




再び異世界ヴァルガ

パソコン画面を見たミシェルは驚愕した。テラの新資源エネルギーをコントロールしているソフトがウィルスによって壊されているからだ。

「な・・・このウィルスは、シドだと!!?・・・っ、アイツめ私を裏切ったのか!!テラの新資源エネルギーが停止してしまいましたか。これは・・・まずいですね。」



「おいザック、様子が変だ。」
「どうでもいい、とにかくどれか一つずつぶっ壊して戦力を削ぐぞ!」


ザックは走った。アウスとメーヴェも後に続く。
一番壊しやすそうな場所は・・・額の宝石、つまり『トガス』の新資源エネルギーだ。
だがそう簡単に近付ける筈もない。が、ここが自然完全支配能力使いアウスの見せ所。なんとメサイアの片足の下の地面に深い深い大穴をあけたのだ。これによってバランスが崩れた為に額から放たれた青色のレーザーも、振り下ろした漆黒の剣も狙いを大きくそれた。
そしてメサイアの足に取りついたザック達は額の宝石ヘ向かって駆け上がる。

「させません!」

胸から上半身をむき出しにした龍怒が取りついたザック達にレーザーを連射した。地面の上と違ってここでの回避は難しい。レーザーがザックに向かって飛んてらいく。
(避けられない!)
しかしザックは横に吹き飛ばされた。アウスが体当たりして身代わりになったのだ。レーザーはアウスの胸を貫通し、アウスは下へ落下していった。
「アウス!!」
「ザック・・・貴様は・・・行け!貴様にしかできんことだ・・・!」
「ザック!アウスは私がみるから大丈夫!あなたは早く新資源エネルギーを破壊しなさい!」

落下していくアウスを追うようにメーヴェが駆け降りていった。
ザックは額目指して駆けのぼる。龍怒が尚もレーザーを発射するが、目の前に現れたザックにレンズを全て破壊されてしまった。
「くっ!」
「ミシェル!お前の相手は後だ!!」

ザックは額の前まで辿り着いた。深く息を吸って青色の宝石を見据えた。
「よしなさいザック!やめるのです!!」

「『無影一閃』!!!!」
ザックの渾身の一閃は青色の宝石を真っ二つにした。

メサイアが小刻みに震える。ヴァルガも地響きをたてている。
「ぐぅ・・・!やはり崩壊が始まりますか!脱出を・・・な、なに!?」


メサイアから飛び降りたザックはアウスの所へ向かった。
「ザック・・・やったな・・・。」
「喋るなアウス!」
アウスの傷は想像以上に深刻だった。出血が止まらない。仮面は粉々に砕けていた。
「ザック、メサイアの様子が変だわ。崩壊をはじめている。それに・・・なによあれ!?」

バラバラと崩れ落ちるメサイアの足元には小さなブラックホールが発生していた。どんどん広がっている。

すると後ろに巨大なワープゲートが開いた。ARISだ。
『ザック!アウス!メーヴェ!無事〜!?』
『早く逃げるぞ!この世界は飲み込まれる!』

テラの魔鬼を全て倒した後、シドの忠告を聞いた一同はARISに乗ってザック達を迎えにきたのだ。

「くぉぉぉ・・・に、逃がしませんよ・・・一人で死ぬなど・・・!」

ミシェルだ。ブラックホールの吸収力をスラスター全開で耐えながらザック達に近づいてくる。が、ここにきてスラスターが壊れた。
「ぐぉぉ・・・私の・・・70年が・・・私の・・・野望が・・・崩れて・・・」
ミシェルはブラックホールの中へ消えていった。

「よし、アウス、メーヴェ、逃げるぞ!」
「すまないなザック。」
「悪く思わないで。」

ザックは土の腕でARISの方に投げ飛ばされた。さらに体重を軽くされ、圧力で加速したザックはARISの装甲に激突した。
「何するんだよアウス!メーヴェ!」

「二人とも早く来い!」

レイモンドが管制室から叫ぶ。
アウスもメーヴェも笑っていた。

「ブラックホールの大きさからして二人を助けるのは不可能だよ。ザックだけでも助けようとしたんだね。」
シドが言った。


「メーヴェ!あなたを失いたくありません!あなたは私の姉のような存在だった!嫌です!別れたくない!」
ライアが叫ぶ。

「アウス!メーヴェ!何でだ!?オレ達はいつも一緒の筈だ!」
スティングが叫ぶ。

「嫌だよアウス!メーヴェ!」
「嫌だぁぁぁ!!」
ジンとアンカーはもはや泣き声だった。
一同が涙していた。


「ライア、あなたはいつも私を気遣ってくれたわね。女性隊員が入って来たと聞いた時は本当に嬉しかったのよ。戦いが終わったらユノちゃんに真実を語りなさいよ。」
「スティング、貴様は昔から私の傍で働いてくれていたな。私の唯一の理解者だった。本当に感謝している。」
「ジン、アンカー、あなた達にはいつも笑わされていたわね。でもちゃんと私のことを守ってくれていた。明るくて優しい双子、私の大切な双子。ありがとう。」
「ダラムの面々にも感謝している。こんな我々でも仲間だと言ってくれた。許してくれた。共に戦ってくれた。心から、礼を言う。」

ARISに乗り込んだザックも涙を流していた。
「・・・アウス。最強の男、アウス・・・っ!」

「ザック・・・結局貴様との決着はつかずじまいだったな。すまない。だが、貴様の行動力にはどこかひかれるものがあった。我が永遠のライバル・・・また会おう。」

発進したARISを見送りながらアウスが呟いた。

「フフフ、本当に最後まで守り続けてくれたわね、アウス。」
「当然ですメーヴェ。」

アウスはメーヴェを抱き寄せた。

「私、なんだか疲れたわ・・・アウス。」
「もう休んでもいいですよ、あなたは頑張りすぎた。ゆっくり眠ってください、メーヴェ。」

最愛の二人は黒い穴の中へと消えていった。



新資源は全てブラックホールの中へ飲み込まれてしまった。それらをエネルギー源にしていた『トガス』『メアス』『ヒラリス』『ヴァルガ』そして『テラ』は崩壊していったのだった。












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