TURN13〜追撃〜
「・・・隊長さん、被害状況を報告して下さい。」
「は!報告します。まず『ARIS』へのダメージは無し。同じくコンテナへのダメージもありません。
キメラ軍は今回二部隊のみの出撃でしたが、被害も少ない模様。個々で自己修復を開始しております。」
「ん、上出来♪どうやら『虎駝{こだ}』や『END OF WORLD』を出すまでも無かったね。」
報告を聞いたジークフェルドはご機嫌だった。
ジークフェルドの軍勢はまさに圧倒的だった。
襲ってきた魔鬼は鳥型とデモン型、そして竜型だったが、『ARIS』からの砲撃で空の魔鬼は全て撃ち落とされ、地上の魔鬼にはARISの中から続々と出てくるキメラが襲い掛かる。その数は軽く百体を越していた。
数と連携に押され、魔鬼の大群は短時間でただの肉傀と化したのだった。
「ジークフェルド社長!ここから南西50Kmの地点に新資源の反応があります!」
「ふむ。予想より近くにあったね。ではここに留まって魔鬼とテラの鉱物のサンプル回収作業を行おう。
あっと、それから・・・ん〜、まぁいいか。あのヘリの事は。」
「し、しかし社長!早く新資源を回収しなくても良いのですか!?」
隊長がジークフェルドに聞く。が、ジークフェルドはあくびをして軽く流す。
「いいのいいの、あの頑固ジジイ共の事は気にしなくても。どーせ自分達の事しか考えてないんだからさ。」
「は、はぁ・・・。」
〈ズガアァァン!〉
最後の蟲型魔鬼が爆発した。
「よし、片付いたな。」
「早くARISを追うぞ。」
全員がARISのいる方向へ歩きだした時、地面が揺れた。
〈ゴゴゴゴゴ・・・〉
「!!」
「地震か!?」
「違うわ!見て!」
ライアが指差す先には自分達が乗ってきたヘリがあった。はずだった。
「ヘリが無い!」
「どういう事!?」
すると全員を大きな影が覆った。
上を見るとそこにはヘリがへし曲がって浮いているように見えた。
だが、正確には巨大なムカデ型の魔鬼の牙に刺さっていたのだった。
「な、でかい・・・。」
「試作型魔鬼と同じくらいの大きさか。」
「だぁー!!ジークフェルドといいお前らといい、何でもでかけりゃ良いってもんじゃねぇぞ!」
「「そうだそうだ!」」
ついにキレたサイにジンとアンカーが便乗する。
ムカデ型魔鬼は牙に刺さったヘリをザック達に向かって飛ばしてくる。
アウスがそれを巨大な盾で防いだ。どうやらここの地面は硬度が高めのようだ。そしてアウスは両腕を地面に沈めて言った。
「目には目を・・・だ。」
するとムカデ型魔鬼と同じくらいの大きさの土人形が現われた。
「すげー!アウス!」
「ずるいぞそんな能力!」
アウスはジンとアンカーの抗議を完全に無視した。
「いちいち戦ってたらARISから放されてしまう。この土人形は時間稼ぎにしかならない。急ぐぞ!」
全員がムカデ型魔鬼の追って来られない場所まで走る。スティングに抱えられたメーヴェが言う。
「スティング、私は発作が起こる以外は普通に動けるのよ。病人扱いはしないで。」
「おっと、これは失礼しました。」
スティングはメーヴェを降ろし、一緒に走った。
「ジークフェルド社長、鳥型、デモン型、竜型魔鬼、及び周辺の鉱物のサンプル回収作業が終了しました。」
「ご苦労。テラの魔鬼はCROWNに送っている弱小魔鬼とは格が違うからね。貴重なサンプルは持ち帰って研究しないと。
じゃあ移動しよう。『ARIS』発進しなさい!」
「あ、あの・・・社長。」
レーダーを見ていた兵士の一人がジークフェルドを呼んだ。
どれだけ走っただろうか。巨大ムカデ型魔鬼に襲われてからかなり長い間走り続けていたので、みんなで少し休んでいた。
メーヴェは定期的に錠剤を飲む。
〈ゴォンゴォンゴォン・・・〉
遠くの方で轟音が聞こえた。
「もしかして!」
ザック達は音のする方へ走った。見ると崖を隔てて遠くに停留するARISが見えた。
「ARISだ!」
「山を避けてきたのに、なんで崖の向こう側なんだよ!」
かなり距離がある上に、目の前には底の見えない崖があり、そこを越えなければ辿り着くことはできない。
だがここでもアウスの能力が役立った。腕を沈めたアウスが橋を架ける。
「早く行くんだ。」
橋をザック、ユノ、ライア、メーヴェ、サイ、ジンと次々に渡り切った瞬間
「戻れ!アンカー!!」
レイモンドが叫ぶと同時に、地中を掘り進んできたムカデ型魔鬼が崖下から橋を破壊して現われた。
危うく落下しそうになったアンカーをスティングが助ける。
崖を隔ててザックに向かってアウスが叫ぶ。
「ザック!貴様等は先に行け!!」
「しかし!」
「停留していたARISが発進しようとしている!今逃せば追い付くのは難しくなる!こっちは大丈夫だ!レイモンドやスティング、アンカーがいる!!こんな蟲は瞬殺してすぐに追い付く!」
「アウス・・・。」
「ザック!急いで!」
「くっ、・・・アウス!瞬殺だぞ!すぐに追い付けよ!」
ザック達は崖に背を向けて走りだした。
「フン、私を誰だと思っている。」
ムカデ型魔鬼の攻撃を避けながらつぶやくアウスに、両手にマシンガンを持ったレイモンドが背中を合わせる。その顔には焦りが見られる。
「お前、これ知ってて瞬殺なんて言ったのかよ・・・。」
「・・・フッ、当然だ。」
「さすがにこれで瞬殺は・・・」
「ちょっとなぁ・・・」
アンカーとスティングも後退りする。二人とも顔面が蒼白だ。
〈ゴゴゴゴゴ・・・〉
気が付けば四人の周囲を五体の巨大なムカデ型魔鬼が取り囲んでいた。
アウスは取り出したライターの火をつけた。そしてそれに手をかざすと同時にアウスが巨大化し、炎の化身と化す。それを見たレイモンドが目を丸くする。
「おいおい、ザックとやり合った時よりでかくなってるよ・・・。」
「私が自然を単独でしか支配できないと思うなよ!!」
地面から突き出た巨大な槍がムカデ型魔鬼の一体を貫く。そして動きが止まったところを獄炎が包み、一瞬で灰にした。
「うわ、すっげ。」
「瞬殺だな。」
「オレ達も負けてられないよねぇ。」
三人も残りの四体に向かって行った。
「どうしました?」
突然呼ばれたジークフェルドは兵士の方を見た。
「えっ・・・と、進行方向線に接近してくる六つの生体反応があるのですが・・・。しかもこれは、人間です!」
それを聞いたジークフェルドは笑った。まったく、今日は楽しくて仕方無い。
「彼等ですね。先回りして乗り込むつもりですか。ARISはこのまま新資源へ向けて移動なさい。彼等の迎撃には・・・そうだねぇ、『虎駝{こだ}』を三機出そうか。」
「虎駝・・・ですか?あれは我が軍の非常時の主戦力では?」
「特別機動隊の連中も暇そうだし、三機減っても支障無いよ。」
「了解しました。」
そう言うと兵士は通信マイクに向かった。
「特別指令、特別指令、本艦に六人の覚醒能力者が接近中。特別機動隊は『虎駝』三機で迎撃にあたれ。繰り返す・・・」
〈ビー、ビー、ビー、ビー〉
『虎駝一号機カラ三号機スタンバイ。搭乗員ハ至急出撃準備オ願イシマス。』
「準備はいいな?」
「ハイ」
「ハイ」
隊長らしき黒いヘルメットの男が部下に指示を出している。
「敵は覚醒能力者だ。油断すると殺されるぞ!虎駝の性能に頼るな!いいな!?」
「了解」
「了解」
部下二人は黄色のヘルメットを被って機体に乗り込む。それを確認した隊長も機体の胸部ハッチから乗り込んだ。
機動歩兵『虎駝{こだ}』はイリュージョン社が開発した《対上級魔鬼戦闘用》の最新人型兵器だ。
全長は四メートル、特殊合金の装甲を持ち、高機動戦を目的とした推進スラスターと人工筋肉を内蔵している。武装はレーザーマシンガン、ヒートブレードという、イリュージョン社の誇る戦力の一つである。
ただ、その高性能を追求した結果、量産は不可能となり、配備されたのは二十機のみとなったのだった。
「システムスタンバイ、オールグリーン。推力スラスター起動。生体センサー作動。FCS作動。
よし、コード『CO-D-A1』虎駝一号機、出る!」 |