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『CROWN』
作:是音



TURN11〜人〜


海上ヘリポートはとてつもない広さだった。旅客機10機は軽く離着陸できるだろう。そこへ向かった20人の戦闘員達は、一斉に銃を構えた。

「魔鬼・・・では無いようだな?」

複数のワープゲートから無数に現れたのは魔鬼ではなく、人だった。皆妙な和服を着ている。

「お前達は本社の人間か?目的は何だ!?」

和服の者達は無言で遠くから近づいてくる。
Z・E戦闘員は銃を構え直す。

「動くな!質問に答えろ!!」

その時、和服の一人の眼が赤く光った。



「大丈夫ですか?メーヴェ」
「ええ、もう大丈夫よ。アウスは彼らに話してくれたかしら?」
「きっと話してくれましたよ。」

ベッドへ運んだスティングとライアは言った。
と、そこへ

「だからオレが先だって!」
「邪魔だ!どけよ!」
「お前がどけよ!くらえ剛拳!」
〈ギィン!〉
「効かん!」何やらドタバタしながらジンとアンカーが入って来た。

「こらお前達、騒がしいぞ!」

スティングが二人を叱る。それを気にもしない様子で二人が何か喋ろうとした瞬間、

〈ビー!ビー!ビー!ビー!〉
『海上ヘリポートに複数のワープゲート出現。総員、魔鬼の襲撃に備えよ。繰り返す、海上ヘリポートに・・・』

「何だぁ!?」
「ワープゲート・・・だと?」

ジンは報告を邪魔されたことに怒り、スティングは不思議そうな顔をする。
そしてメーヴェは深刻そうな顔つきになった。

「スティング、ライア、それにジン、アンカー。何か嫌な予感がするわ、行って来て頂戴。」

その様子を見た四人はビシッと背筋を伸ばし、消えた。



「私は少し様子を見に行ってくる。」

警報が気になったアウスは部屋を出ようとする。

「じゃ、オレ達も行くぜ。」

「・・・勝手にしろ。」
そう言うと五人は部屋を出て海上ヘリポートへ向かった。



「な・・・何だこりゃあ!!」
「ひでえな。」

先に海上ヘリポートへ着いたスティング達はその惨劇に驚愕した。
血だらけのヘリポートには最初に到着した20人、そしてその後援護に駆け付けたであろう30人の戦闘員の死体が至る所に転がっていた。そして遠くにうごめく物体が見える。

「こ、これは一体・・・!?」後ろで遅れて到着したアウス達が同じように驚愕している。

「スティング、これはどういう事だ?」
「アウスか。多分あいつらの仕業だよ。」

遠くの物体を見つめたままスティングはそう言って指差す。
そこには返り血を浴びた人間が多数こちらを見ている。だが姿形は人間だが、眼は赤く、鋭い爪と牙が生え、血が滴り落ちていた。

「何だあいつら?」
「人間じゃない・・・!」

レイモンドとユノがそう言ったのと同時に化け物が三体襲い掛かってきた。

〈ゲアァァァ!〉

「下衆が・・・舐めた真似を!」

怒ったアウスが鉄の地面に腕を沈める。そして地面から高速で鋼鉄の槍が突き出る。槍は一体の脚を貫くが、他の二体は機敏な動きで回避し、腕を沈めたままのアウスに襲い掛かろうとする。しかし目の前に飛び出た鋼鉄の盾に激突し、動きが止まったところをジンとアンカーの攻撃が襲う。

「『剛拳』!」
「『剛扇』!」

二人の攻撃で二体の頭は潰れ、その場に崩れ落ちた。
そして脚に槍が刺さって身動きがとれない一体をレイモンドの対徹甲弾が穴だらけにする。

「こいつら、動きが速いな。」

〈オオオォォォォ!〉
すると他の化け物達が突然叫び声をあげ、次々と人の姿から異形な姿へ変化していく。
身体が巨大化する者、爪や歯がさらに鋭く伸びる者、腕がさらに二本肩から生えた者。
そして今度はその中の十体が襲い掛かってくる。

「うおい!こんなたくさんいるのに、何で少数で襲い掛かってくるんだよ!」

「多分戦闘力を見極める為と、オレ達を消耗させる為だろう。」

「ああ。それにこの統制のとれた動き。こんな化け物の何処にそんな思考力が?」

ジンの怒りにスティングが冷静に判断し、アウスも肯定する。

「くっ、《影走り》!」

自分に向かってくる三体に向けてザックは影刀から黒い刄を放つ。そして巨大化した化け物の脚を切断する。
が、崩れ落ちる化け物の肩を踏み台にして脚力を強化された二体の化け物が高く跳び上がる。
さらに脚を斬られて崩れ落ちた化け物の巨大な腕が伸び、ザックの脚を掴む。

「しまった!」

身動きがとれなくなったザックに跳び上がった二体の爪が襲い掛かる。

「ザック!」
「くそ!」

遠くで応戦していたサイとスティングがそれに気付くが、助けに行く事ができない。ザックが腕で顔面を覆ったその時

〈ズズン!〉

ザックに襲い掛かる二体の腹をそれぞれ二本の戈が串刺しにしていた。

〈バァン!〉

「だらしないわねザック!」
「それでもアウスと渡り合った男なの?」

ユノとライアが二体を爆破して木っ端微塵にしながら皮肉る。

「すまない、助かった。・・・どうでもいいんだが、いつからお前等そんなに仲が良くなったんだ?」

ザックは脚を掴む化け物にとどめを刺しながら、ニコニコするライアとムスッとしているユノを見た。

「知らないわよ!この人が勝手に・・・」
「またまた〜、今だって息ぴったりだったじゃない♪」

言い訳するユノをライアが茶化す。
その時ザックは自分達に向かって来る火球に気付いた。

「避けろ!」
〈ズガァン!〉

三人が先程までいた鉄の地面は黒く焦げていた。
遠くで口から煙を吐く羽の生えた化け物がいた。

それを見たユノとライアはたじろぐ。

「何よこいつら・・・これじゃまるで」
「魔鬼じゃないのよ!」



〈え〜と、ちょっと違いますねぇ。正確には魔鬼と人間との融合。《キメラ》です。〉



「!!?」

突然化け物の方から声が聞こえ、全員の意識が一体の化け物へ集中する。《キメラ》という化け物の首にはスピーカーとマイクが取り付けられていた。

「・・・ジークフェルド!!」

「やあ、君か。まだ仮面なんか被ってんのかい?」

アウスが憎しみの籠もった口調で声の主の名前を言うが、ジークフェルドはまるで友人と話すかのような口調だ。

「誰だ?」

「イリュージョン社の社長《アルバート・J・ジークフェルド》よ。」

ザックの問いにライアが答える。

「それは本当か!」


「じゃああいつが全ての首謀者・・・。」

それを聞いたレイモンド、サイ、ユノ、そしてザックは怒りの眼差しを向ける。アウスはジークフェルドに叫んだ。

「ジークフェルド貴様、いや貴様等本社はやはり我々を裏切るのか!?」

〈う〜ん、裏切るとかじゃなくて、『人工魔鬼計画』の他にある二つの計画の・・・いわば競争ってやつだよこれは。そして、君達は競争に負けた。ただそれだけ。〉

雑音混じりのスピーカーから軽い口調で答えが返ってくる。不思議とキメラ達はおとなしくなっている。

「競争・・・だと?貴様等のテラ侵攻作戦は『人工魔鬼計画』と『CROWN計画』の二つで成り立っているのでは無かったのか!?」

〈うん。でも最強兵器を作り出す『人工魔鬼計画』は良いとして、
もう一つ最強軍隊を作り出す計画には能力者を養成する『CROWN計画』の他に『DNA計画』って案があったんだよ。〉

「DNA計画だと?それは今ここにいる醜悪な化け物共のことか!」

〈ご名答!でも化け物じゃなくて《キ・メ・ラ》と呼んで欲しいねぇ。これは一種の芸術なんだよ!
君達も実際に戦ってみてわかったろ?
デモン型魔鬼より遥かに高い戦闘力!統制のとれた動き!素晴らしいだろ?まさしく最強の軍隊だ!!〉

スピーカーの向こう側からは興奮するジークフェルドの声がする。

〈さらに5年前の本社会議で君達は危険な思考を持っていると判断され、『CROWN計画』は『DNA計画』の予備計画として扱うことになったのさ。
ただ最近の研究で、覚醒能力者が魔鬼との融合に適しているという結果が出たのでね。急遽『CROWN計画』の内容を変更したのさ。
フフ・・・
《融合材料回収計画》とね。〉

アウスの、そしてその場にいた全員の頭が真っ白になる。

「な・・・なら、ここにいる化け物達は・・・!」


〈そう。『君達がCROWNで回収した能力者達』だよ。〉


「!!」
「な・・・っ」
「酷い・・・。」

「ジ、ジークフェルドォォォォ!!」

アウスが鬼神の如き叫び声をあげた瞬間


〈ゴッシャァァァァッ!〉


ヘリポート上の全てのキメラが強烈な見えない力で地面に押さえ付けられた。そのあまりの力の強さに身動き一つとれない。


「・・・ジークフェルド。やはりあなたは私達を騙していたのね。」


そこには冷たい眼をしたメーヴェがいた。

〈ザザー・・・・メーヴェ・・か・・・ガガ・相変わ・・・ずの・・・さだね。〉

押し潰されたスピーカーからは雑音まじりの声が聞こえる。

「あなたは私に『新資源が手に入れば世界に調和が保たれる。その為には能力者が必要不可欠なんだ。』そう言った。」

〈ガガ・・・ふ・・ははは・・メー・ヴェ・・平和に犠牲はつきもの・・・んだよ・・・ふ・ふふ・・〉

メーヴェの眼は怒りよりも悲しみに満ちている。

「貴様は私の手で必ず殺す。それがこの亡者達にしてあげられる私のせめてもの償い・・・。」

メーヴェの白い頬を涙が伝う。そして


〈ベッシャァァァ!!〉


その場にいた全てのキメラが一気に潰れる。
ザック達はその光景を黙って見ていた。・・・見ていることしかできなかった。



キメラの強襲でZ・E隊は戦闘員を50人亡くした。レイモンドは残った戦闘員をダラム基地へ移動させるようにメーヴェに指示した。
メーヴェはレイモンドに一言礼を言うと倒れてしまっのだった。



ベッドルームで眠るメーヴェの周りで話すザック達は強い衝撃を受けていた。

「お前達は予想通り本社に裏切られたわけだな。」

「フン、どちらにせよ我々は本社と決別するつもりだったさ。」

「でも、メーヴェさんのあの能力。」

「ああ。なんて威力だよ。あんな数の化け物を一瞬でミンチにしやがった。一体どんな能力だ?」

ユノとレイモンドが圧倒的なメーヴェの能力に興味を示す。

「メーヴェの能力は本当にタチが悪い。確認された能力中最強最悪の《重力・圧力完全支配能力》だ。私のJOKERなど足元にも及ばない。」

アウスが眠っているメーヴェを見ながら寂しげな顔で言った。

「ただ、メーヴェはこんな力を欲してはいなかった。いつも、自分は普通に生き、普通に生活し、普通に寿命を迎えたいと私に言っていた。部隊の総隊長、最強の能力者であるという肩書きこそ彼女を苦しめているものだ。」

「じゃあもう心配ないじゃん!」

ユノが突然明るく喋ったのでアウスは驚いてユノを見た。

「だってもう本社とは決別したんでしょ!?だったらもう総隊長とか能力の貴重さとか気にしなくて良いんだよね!?これからのメーヴェさんの肩書きは、私達の『仲間』だよっ。」


「さすが!」

ライアが突然ユノに抱きつく。

「な、ちょっ、何よ!私は当然の事を言っただけよ!」


スティングとサイが笑みを浮かべる。

「そうか、仲間・・・か。」
「なんだ?さっきの戦いで全然活躍できなかったから、へこんでるかと思ったぜ。」
「それはお前もだろ人形使い!」


ユノの言葉を聞いたジンとアンカーが顔を見合わせて叫んだ。
「あー!おい!」
「報告先に言われちまったじゃねぇか!」

「ったく、うるせえガキ共だぜ。」

レイモンドが完全に呆れ顔で見る。


ザックと仮面を外したアウス、そして騒ぎで目が覚めたメーヴェが顔を合わせる。

「貴様との決着は邪魔が入ってしまったからな。いずれ決着をつける!」

「ハン、望むところだよ。」
しばらく皆の様子を見ていたメーヴェはザックを見て言う。

「ザック、感謝するわ。こんなに楽しそうなみんなを見るのは久しぶりよ。」

「まぁ元は敵同士だった訳だが、何の因果かこんな事になっちまった。オレらも悪い気はしない。気にすることはないさ。」

「・・・ありがとう。」

誰もいなくなった基地内だが、ベッドルームだけは活気に溢れていた。

イリュージョン社のテラ侵攻作戦まであと一ヵ月。












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