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STORY:21 面会と刻印
馬車が走る事それから1日。翌日の夕方に街らしい風景が広がってきた。流石に王都だけあって活気がある。人も多く、下手したらカズルイの方がエナルトよりも繁栄しているんじゃないか?と思わせる程だ。


「これから王城に向かうクロック君はそこで入隊の試験を、ゼロ君はこちらへ来てもらおうか?」

「「はい。」」


クロックと別れ、王城の中をフーガさんの後を付いて回る。とある部屋に通されるとそこには大臣達の様な人が大勢いた。


「ムルウ様、フーガ只今戻りました!」


大きく頭を下げるフーガさん。国で武官のトップが頭を下げるって事は・・


「おかえりフーガ。娘は大丈夫だったかい?」

「はっ!この者が娘を保護しておりました!ゼロ、カズルイ国王のムルウ様だ。」


やっぱり王族か・・どうしていきなり会わせるのだろうか?心の準備とかさ、必要じゃん?じゃあ時間くれるって言ってもやっぱ緊張するんだけどさ。


「そなた、名前は何と言う?」

「あ、ゼロです。」


うわっ!文官っぽい方々の視線が一気に強くなったよ!何だよ、名前言っただけじゃんかよ!


「よいよい、そなたはこの国の者では無さそうじゃからな。して、フーガ、この者がどうかしたか?」

「はい、エナルトの王より書状を預かっているとの事で連れてまいりました。」

「エナルトの王、シバリオ殿か。見せてみろ。」


途端に優しい顔付きに真剣味が出る。書状を鞄から取り出しフーガさんに手渡す。フーガさんはそれを開き中身だけをムルウ王に手渡した。


「ふむ、確かにシバリオ殿の書印だ。何々・・」


ムルウ王は書状に目を通していくと、眉を吊り上げたり眉間をピクつかせたりと、顔の変化に忙しなかった。

最後には元の穏やかな顔付きに戻っていたから恐らくはこの場で俺が敵だと言われる事は無いだろう。


「ふむ、確かに書状を受け取った。してゼロとやら、そなたこれからどうする?ここに書いてあるのが本当の事なら、恐らくは我が国でもお主を丁重に扱わねばならぬのだがな。」

「そうですね、青龍姫には会わなきゃいけないのでそうしてもらえると有り難いです。でも丁重じゃなくていいですよ?向こうでもただの客人扱いでしたし。」

「なっ!我らが青龍姫様を呼び捨てにするとは、フーガ!斬ってしまえ!」


文官の1人が叫ぶ。しかしフーガさんは動こうとしない。


「キクエナ殿、ムルウ様の言葉を忘れたか?たった今、ムルウ様が客人扱いをすると言ったのだ。どうして斬れよう?」

「そうだよキクエナ?それにフーガは国の為にしか動かない。例え私の命令であっても国に反する事ならしない。だから堅武大臣なんだ。キクエナの信仰精神は分かる。だが、ここは私に免じてくれないか?」

「し、失礼致した。」


青龍姫を呼び捨てにしただけで怒り出すなんてよっぽど信仰が深いんだろうな。

っていうか、これでムルウ王とフーガさんに貸し1か・・してやられたような気がするな・・


「とりあえずゼロ殿は我が国でも客人として扱う様に。その事に異存は無いね?」


大臣達は何も言わない。しっかりと国王が舵取りをしているからこその団結力だな。


「ネルぜー、ゼロ殿の事は任せたよ?」

「畏まりました。」


執事の様な人が俺の方へとやって来た。


「こちらへどうぞ。お部屋へ案内致します。」


ネルゼーさんに従って部屋を出る。部屋を出る時にペコリと頭を下げるのも忘れない。ネルゼーさんはその光景をにこやかに見守るだけだった。










「ムルウ様、どういう事でしょうか?あの者には何かあるのですか?」


文官から声が上がる。ムルウは再び書状を見つめながらそれを読み上げた。


「ゼロ殿、炎龍姫様に五龍を集めると予言されし者。分かるか?五龍招来だ。聖女リリス様も同じく五龍を招来した者だ。ゼロ殿もその可能性があるという事だ。皆も分かっておろう?近頃の魔物の活発化を。ゼロ殿はそれに関係するのやも知れぬ。無下には出来んよ。」


ムルウは書状を纏めると懐へとしまった。












「やっぱ城っていう所は広いですねぇ・・」

「この青龍城は築城してから改築を繰り返しておりますからな、今も広がっておりますよ。」


ネルゼーさんと談笑しながら城内を歩く。ここもレッドカーペッドだ。何か緊張するんで話してないと持たん。

「ネルゼーさんは僕の付き添いになるんですか?」

「いいや、ゼロ殿には後で専属の使用人を寄こします。普段の事はその者にお申し付け下さい。さぁ、こちらです。」


部屋へと案内されて俺はびっくりした。エナルトの部屋よりも広い部屋が宛がわれたのだ。こんなに広い場所に俺1人・・落ち着かねぇ・・


「では、また後で。」


お辞儀をして扉を閉めるネルゼーさん。俺は早速荷物を解き始めた。

だが、所詮は少ない服のみである。ソファーの上に並べて置くだけで十分だ。・・やる事がもう無くなってしまった。

仕方なく窓の外を眺めてみる。どうやら窓からは訓練場が見える様で、兵士達が槍を使って訓練しているのが見えた。

「使っているのは・・十文字槍(じゅうもんじやり)か。確か魔術石が施されているって言ってたな。クロック、試験に受かったのかな?」

コンコン


部屋をノックする音がする。恐らくネルゼーさんが言っていた使用人だろう。ドアを開けると俺よりも長身なメイドさんが立っていた。


「ゼロさんのお世話を担当致します、シェリと言います。」

「どうも、ゼロです。早速で何なんだけどさ、新しく入隊した兵士が見たいんだ。どこに言ったら見れるかな?」

「時間帯で言いますと、まだ試験の最中ですね。参られますか?」

「うん、ちょっと知り合いが受けているんだよね。」


一応エナルトでは副将軍候補だったんだ。既に落ちているって事は無いよな?

シェリさんに従って城の外に出る。左の方には、さっき部屋から見えた兵士達の訓練風景が広がっている。


「新入隊はこちらです。」


シェリさんに言われて右の方に視線を向けると、そこには鎧も着けていない槍だけを持った新兵の卵達がいた。まだ試験は続行中らしく、巻き藁に向かって何人かが槍を振っていた。このレベルなら合格だな。


「元々入団試験は兵歴の無い者の素質を計る為の物です。知り合いの方に兵歴がございましたら、こちらではなく既に魔術紋章を刻んでおられるかと思われますが・・」

「確かにここにはいないみたいだな。その魔術紋章を刻む場所に行ってみようか?」

「畏まりました。」


再び城内に戻ると城の中を進み出す。どうやら城の離れで行われている様だ。


「元々魔術紋章を体に刻むという行為は禁術とされていました。しかし、その当時そこまで強くなかった我が国はその扉を開いたのです。夥しい数の人体実験が行われたという歴史もあります。その上で安全な魔術紋章の確立が成され、今日に至ると言われています。」


どこにでも黒い歴史はあるもんだ。それを聞かされてもどうしたらいいのやら。

離れにやって来ると薬品の臭いが漂って来た。紋章を刻むといっても生半可な物じゃないのだろう。

一呼吸置いて扉を開ける。すると薬品の臭いと共に肉の焼ける様な臭いまで漂って来た。廊下には長椅子があるが、そのどれもが横になった兵士で埋まっている。見ると紋章の痕が刻まれている。肉を紋章の形に焼き、そこに液体を流し込んでいる様な感じだ。


「すいません、失礼します。」


シェリさんがそう言って扉を開けて出ていってしまった。普通の人の感覚ならそうなるだろう。俺はこんな物に慣れてしまっている自分に辟易した。廊下に寝転がっている人達の中にクロックの顔を見付ける。体を見ると紋章が3つ。1日で3つの紋章を刻んだ事になる。痛みの為か気を失っているが、無事に試験を突破した証だ。


ガラガラガラガラ


また1人処置室の様な場所から運び出された。確かにこんな光景は黒い歴史として十分だ。


「今日はこれで終わり?」


処置室から出て来たのは意外にも若い女性だった。


「あら?貴方も紋章を刻む予定?」

「いえ、知人を見に来ただけです。」

「そう。今日紋章を刻んだ人ならあと数時間もすれば動ける様になるわよ。紋章の効果が出るからね。」

「あぁ、回復でしたっけ?」

「そうよ?よく知ってるわね。」

「教えて貰いましたからね。」

「そう。さて、私も休憩するわ。また誰もいない時にいらっしゃい?紋章について教えてあげる。」

「分かりました。では。」


離れを後にすると、廊下の柱に寄り掛かっているシェリさんがいた。


「大丈夫?」

「はい、大分落ち着きました。すいません。」

「謝る事は無いよ。普通ならそうなるさ。さて、知り合いも無事に入隊したみたいだし、部屋に戻るとしますか。」


フラつきながらも部屋へと案内するシェリさん。今度来るとすれば1人で来ようと思った。
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