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STORY:19 村中キャンプファイヤー
「俺を起こしゃあいいじゃねぇか。」


寝て起きたら隣に見知らぬ令嬢が横たわっていた。そして自分達の周りには大量の魔物の死体。焦るクロックにビンタをし、頭を落ち着かせた所で現状の説明をしたら、そう返してきやがった。

起こそうとしたよ!そりゃ何度もトライしたさ!でもな、でも起きなかったんだよあんたはっ!!

物食ってる夢やら綺麗なネェちゃんがどうやら、好きな夢ばっかり見やがって!!


「許してあげて下さい!何もせず寝ていたのは私も同じです。」


リーラさんがクロックを庇う。


「ちっ、貸し1だからな。」

「お、おぅ!」


リーラさんを従えて旅路を歩く。クロックの奴はいきなり紳士的になりやがって、歩く度にリーラさんに気を使っていやがる。・・お前、そんなキャラだったのな。


昼間という事もあり、魔物の襲撃もそう無い。村が近くなっているという事は賊な輩の出現も考えられるが、今俺は眠たさで機嫌が悪い。クロックもリーラさんにいい所を見せようと張り切っている。出て来たらボコボコにして後ろの連中の様にしてやる!

昨日襲って来た賊共は綺麗に縛り上げ縄で引っ張っている。


「おら、しっかり歩け!歩かないとまたお見舞いするぞ?」


俺が手の平をかざす時の真似をするクロック。いや、お前は出来ないだろうが。そしてそれを真に受ける輩共・・そんなに凄い技なんだろうか?自分では・・やめとこうか。

昼間に休憩を挟み、また歩き出す。俺達と変わらないペースで歩き続けるリーラさん。見た目と違って体力があるんだな。どこかの令嬢かと思っていたけど、割とアウトドア系なのかな?

考え込んでいたらリーラさんと目が合ってしまった。


「どうかなさいましたか?」

「いや、俺達と同じペースで歩き続けてるリーラさんってタフだなぁと思ってね。」

「あぁ、そういう事ですか。」


リーラさんは納得した様に頷くと自分の力を説明しだした。


「私は僅かですが魔術の素質がありました。そこで色々学んでみたのですが、今その魔術を使っているんですよ。木々から生命力を分けて貰う魔術というのがあるんです。それによって体力を常に回復させていますから。カズルイの兵士は皆が使える様になる魔術ですよ?」

「それは本当ですか!?」


カズルイの兵士が使う魔術と聞いて、クロックは息巻いた。

カズルイの兵士になりに向かってるんだもんなー。そりゃ技術的な物は出来る限り学びたいだろうな。


「カズルイの兵士は皆が魔術を使えるのはご存知ですか?でも全員が全員同じレベルで魔術を使えるわけではありません。魔力に応じた魔術紋章を体に刻み込むんです。タトゥーの様に。後は呪文を唱えるだけで印を結ばずに魔術が使えるんです。」


印?また見知らぬ言葉が出て来たな。


「リーラさん、印とはいった」

「魔術紋章はどうしたら刻めるんですか!?」


クロック・・


「兵士団団長以上の者に許可を貰わないと刻めませんよ?私はお父様伝いで許可を申請致しました。」


父親伝いで許可の申請、ひょっとしたらリーラさんってかなりいいとこのお嬢様なんじゃ・・


俺の考えとは全然別の所で落ち込んでいるクロック。多分兵士になる前に出来る事はやっておきたかったんだろうな。


「あ、見えて来ましたね。」


スナバの村が見えて来た。これでリーラさんの護衛も終了だ。まだまだ魔術について聞きたい事もあったが、それは追い追い誰かに教えて貰えるだろう。

村に入ると何故か雰囲気が悪かった。どこか沈んでいる様な雰囲気だ。原因はすぐに分かった。建物が数軒燃え尽きた後があるのだ。村人は一様に暗い顔でその回収作業をしている。


「リーラ様っ!」


子どもの1人がこちらへ駆けて来る。村人達もその声に釣られてこちらにやって来た。


「おぉぉ、リーラ様、ご無事でしたか。」

「青龍姫様がお守りになったんじゃ!」

「リーラ様!リーラ様!」


エラい慕われ様だな。やっぱりただ者じゃなかったか。


「リーラ様。」


何やら兵士の様な人達まで出て来た。こりゃすげぇや。


「!貴様達何者だ!リーラ様を襲った賊の者か!」

剣を構える兵士の声に村人達が一斉に後ろに下がる。お前等今気付いたのかよ・・


「答えろ!答えぬならここで斬り捨ててもいいんだぞ!」

「おやめなさい!その方々は私を助けて下さったのです!失礼な真似は許しませんよ!」


意外。リーラさんって大声を出す事もあるんだな。


「こ、これは失礼致した。」

「いいっすよ〜。気にしちゃいませんから。」

「ゼロさんとクロックさんです。丁重に持て成して下さい。」

「はっ!畏まりました!それとリーラ様、ただ今父君が技師達とこちらへ向かっております。明日にも着くとの事です。」

「分かりました。今日はこの村で宿を取りましょう。皆が火に当たれる場所、仮眠が取れる場所を確保して下さい。」

「はっ!」


リーラさんの指示に従い兵士達が散り村人達に指示を出している。俺が引き連れていた賊達も引き取って貰った。

村人達がどこからか大鍋やら薪やらを集めて来てちょっとしたキャンプが始まる。俺とクロックもその輪に混ざって食事の配給を受けた。


「だけどよぉ、リーラさんってどこの令嬢なんだ?王族ってわけでは無さそうだが、そこいらの貴族よりは上の位置にいそうだぞ?」

「俺が知るか!だけど、あの的確な指示や立ち振る舞いを見ていると確かにそう感じるな。」

「何を感じるんですか?」

「いや、リーラさんがね、ってリーラさんっ!?何やってるんですかこんな所で?」

「私の仕事は皆に指示を与える事です。それが終わったら割と暇なんですよ?」

「だからって驚かさないで下さい。」

「私の話をしていたんですよね?私がどうかしましたか?」


全然悪びれる様子も無く、首を傾げるリーラさん。溜め息を1つ吐くとリーラさんに質問した。


「リーラさん、貴方何者ですか?賊は貴方個人を狙っている様でした。加えて村人や兵士達の貴方への信望する姿。ただ者とは思えませんね。それに貴方は父から伝って魔術紋章を刻んだと言いました。貴方の父は何者ですか?」

「・・私の父はカズルイ国堅武大臣、フーガ=ミツカネです。」

「堅武大臣って何だ?」

「武官の1番上だよ。エナルトで言うとカナン将軍だ。」

「そんな所の娘を、よく掠おうとしたなあいつら。」


チラリと木に縛られている賊を見やる。兵士達に尋問された後でぐったりしている様だ。


「まぁいいや。疑問は晴れた。」


偉い所の令嬢だとは薄々感づいていたんだし、別に疚しい事はしてないしな。


肉と野菜の入ったスープをお代わりし、腹を満たすと俺は横になった。寝ていなかったのもあって、時間が来るとすぐ睡魔に従い眠りに付いた。











どれくらい寝ただろうか。辺りを見渡すと火が消えかけた焚火に真っ暗な夜空。薪をくべ、炎を点すと俺は軽く欠伸をしながら背伸びをした。

目を凝らして見ると緑色の燐粉の様な物が俺の周りに纏わり付いている。周りの木々から発生している燐粉。リーラさんにも纏わり付いている所を見ると、リーラさんが言っていた木々から生命力を分けて貰っているという事なんだろう。

寝静まっている者には村人達がかけてくれたのだろう毛布がある。有り難くそれに包まりながら、ぼぉっと焚火を眺める。パチパチと燃える音がする。再び欠伸をすると俺の頭は割とスッキリしてきた。この燐粉が体の回復を早めているのかもしれない。

起き上がり屈伸をすると疲労感も無く頭も体もスッキリとしてきた。


「どうかなさいましたか?」

「あ、起こしちゃいましたか?」


リーラさんが少し眠たそうに起き上がって来た。まだ寝ていいと促しても起きると言うのだから好きにさせておいた。


ぼぉっと焚火を眺めていると、何もする事が無い。ただただ黙っているのも何なんで、俺は疑問に思っていた事をリーラさんに問い掛けた。


「リーラさん、魔術についてなんですが、印というのは何ですか?」

「印というのは術を扱う為に、空間に描く紋章の1つですね。」


フィルさんがやっていた構えにも意味があったんだな。


「あ、高位の魔術師が杖を持つのも意味があるんですよ?」


それは初耳だな。杖というとアッサムさんが印象的だったな。色々な宝石みたいなのが埋め込まれていてかなり魔術仕様って感じだったな。


「カズルイの魔術宰相の話では、魔術の威力を上げる増幅機にもなるそうですよ?」


これも知らない話だ。カズルイの魔術宰相か・・一度じっくり説明を受けるのもいいかも知れないな。エナルトではアッサムさんから逃げる毎日だったし。


そんな風に考えながら、リーラさんと話して夜は明けていった。


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