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あなたがいれば私は 作者:雨月 歩
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過去の過ち(2)

 ーはあ。

「今日24回目だよ、夕夏ちゃん」
「大島さん…」


 夕夏の働く歯科医院で勤務医として働いている大島真司おおしましんじ31歳。イケメンで仕事もできるのに何故だか彼女がここ数年いないらしい。特定の人を作っていないだけの気もするけども。


「今日ご飯でも行こうよ。話くらい聞くよ」


 そう言っていつも悩み事も全て聞いてくれる。私のお兄ちゃん的存在の人だ。



「私、後悔してるんです」

 全てを話し終え、ビールを一気に飲み干した。…“後悔”。彼に…和人に、再会するまではあの日のことは若いころの苦い思い出ぐらいにしか思っていなかった。
 だけど、変わり果てた彼を見たら、人の人生を左右してしまったという罪悪感で押しつぶされそうになった。そんな私の気持ちも全てお見通しだった。いったいどれだけ彼を傷つけたのだろう。


「まあでもあれだね。そんな昔のことを今でも引きずってるなんて、よっぽど夕夏ちゃんのことが好きだったんだねその彼」
「大島さんポジティブ…」
「過ぎちゃったことは仕方ないじゃないか。後悔してるなら、しっかり謝って許してもらったらどう?」
「謝るって言ったって…あの表情を見てないからそんなこと言えるんですよー」


 あの時。告白された日、なんて言うのが正解だったのだろう。“ごめん”“ありがとう”どれも違う気がしたから、悩んだ末のあれだった。どちらにせよ、あの時の和人のことは弟以上には見れなかったんだから。

 だけど、今思えば弟以上の感情は本当になかったのかと思う。初めて会った時から興味はあった。弟と真逆だからっていう単純な好奇心からだけど、知りたいと思っていたんだ。

 結局家族のこと以外なに1つ知らないけど。


「とりあえず、飲もうよ」

 優しい顔で笑う大島さんは、昔の和人に似ていた。


 ***

 土砂降りの雨の中を走り、なんとか雨宿りができるところまで来れた。
 タクシー代渡されたけどさすがに話まで聞いてもらってそれは嫌だったから返してしまった。
 けど、さすがにこの雨はタクシーじゃなきゃ無理かも…。

 そこに見覚えのある男の子が同じ雨宿りの場所まで走ってきた。息切れしながらも、服にかぶった水をはたいている。何度かくしゃみや咳き込みをしている。

 ーー和人。
 こんな偶然あるのだろうか。もし謝るなら今なんじゃないだろうか。でも…勇気が出ない。また拒絶されてしまうかもしれない。

 夕夏は恐る恐る和人の顔を見ると、少し辛そうな顔をしていて赤く熱っぽい。


「ば、ばか…!なにしてるの!?はやく、これ」


 夕夏は自分の上着を脱いで上からかけるとベンチに座らせた。


「お前…いつから」
「はあ?私の方が先にいたわよ。いいからしっかり拭かないと」


 やっぱりすごく熱があるみたいだ。


「雨弱まりそうにねえし俺行くわ」


 ふらついた足で歩こうとしている。送って行きたいけどきっと嫌がるだろう。でも少しでもはやく帰って欲しいけどこんな雨の中また濡れてしまったら…。


「これ、使いなさいよ!家帰ったらすぐお風呂に入って寝るのよ!じゃあね」


 強引に折り畳み傘とホッカイロを渡して夕夏は大雨の中走って帰った。
 弟でしかなかったころの和人だったら、家まで送っていけたのに。変わってしまったのは彼だけじゃないのかもしれない。心臓がドキドキしている。水に濡れた和人が無駄にいい男に見えたから?また何か言われるかもって怯えていたから?そんなのわからない。だけど今は少しでもはやくーーーーあの日のことを謝りたい。

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