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あなたがいれば私は 作者:雨月 歩
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弟の友達

 ーーー「今西和人」
 和人と出会ったのは10年前、私が15歳高校一年生の時だった。
 小学五年生になった弟の夏樹なつきが新しいクラスの友達といって家に連れてきた。
 当時の和人は11歳になったばかりで160センチ以上ある私の身長より頭一つ分以上小さくておかっぱ頭で色白で細くてメガネで大人しかった。いつも泥だらけで帰ってくる色黒の悪ガキな弟とは正反対で私は興味が湧いた。
 話を聞くと和人の性格は家の環境にあったのだ。母親は和人が物ごごろつく前に亡くなり、その悲しみを忘れるために仕事にのめり込んだ父親。寂しさから弟の和人に手を出すようになった姉。幸いそれに気づいた親戚が和人を引き取ったらしい。
 同情かもしれないが、そんな和人を可愛がってあげたかった。

 その年の夏休み。いつものように和人が家に遊びにきた。しかしその日は夏樹が母に連れられ出かけてしまっていた。


「ごめんね、夏樹今日はいないの」
「そうですか…じゃあ僕今日は帰ります」


 寂しそうなその背中を見てこの子は帰ったら何をするのだろう。寂しいのではないだろうか。そう思ってしまった。帰ろうとする和人の腕を掴み、私は「花火をしよう」と言った。

 時刻はAM11時。おにぎりを何個か作り、花火をもって近くの公園にやってきた。真夏の真昼間から花火なんて私は何をしているのだろう、そんな考えも和人のワクワクしている顔を見たらどうでもよくなってしまった。


「ねえ、和人はいつも家に帰ったらなにしてるの?」
「家事やって勉強…かな」


 そう言った和人の顔を見たらなんだか胸がキュウっと苦しくなった。これは同情なのかもしれない。別に和人じゃなくたってこういう気持ちになって苦しくなるのかもしれない。だけど今目の前にいるのは和人だから。だから私はーーーーー和人を思いっきり抱きしめた。


「私…和人のいいところたくさん知ってる。あなたの本当のお姉さんになりたかった」


 その言葉に嘘偽りは1つもなかった。この子の本当のお姉さんになれたら、ううん、なれなくても。この子を大切に想う気持ちは変わらない。

 私のその行動はのちに大きな過ちとなった。


 ***


 和人と出会って約2年。夏樹と和人は同じ中学に入学した。ほんの少しだけ背が伸びた和人だが相変わらず華奢で女の子と間違えそうになるくらいだった。そして相変わらず私の中では大事な弟のひとりだった。
 入学当日の夜は家で入学祝いをする予定になっていた。だけど珍しく和人が“ご飯の前にむかし2人で花火をやった公園に来てください”とメールをしてきていた。

(どうしたんだろう。何か相談事かな…?)

 公園を除くとブランコに乗りながら夜空を見上げる和人の姿があった。


「入学おめでとう、和人」
「…夕夏さん。来てくれたんですね」
「なーにいってんの。これからみんなでご飯だよ。早くいこうよ」


 和人は俯いてなにも話さない。何か本当にあったのかもしれないと不安になり、私から話をしようとした時。


「好きです」


 私より背丈の低い和人がまっすぐ目を見てそう言ったのだ。驚いて息をするのも忘れてしまった。


「この公園で花火をした日から…ずっと…ずっとずっと、夕夏さんのことだけを見てきました。…好きなんです」


 今にも泣き出しそうな和人の声を聞いて、少しでも傷つけずに諦めさせる言葉ばかり頭の中で考えては消してを繰り返していた。
 もちろんとても嬉しい。私だって和人のことが大好きだし大切だ。だけどそれは…弟として。私はあなたの姉になりたかっただけなのに。


「か、勘弁してよ。中学生になったから大人になったつもりなのかもしれないけど…私からしたらまだまだ子供だし第一5つも年の離れた男の子を異性としてみれない…。和人は私の…弟だよ。そんなこと言われたら、もう弟としても見れないよ…」


 しまった、と思った。きつく言い過ぎてしまった。違うのよ、和人。私はただあなたが大切で大好きで弟みたいにーーーー


「…弟になんて、なりたくなかった」


 あの時の和人の顔を忘れたことはない。今までの笑顔とはまるで別物で、怒りと悲しみだけの顔だった。

 それ以来、和人は家には来なくなった。
 私もその後すぐに高校の先輩と付き合ってしまったし、夏樹が中学二年生の時に和人が転校したという話だけ聞いた。
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