挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマークする場合はログインしてください。

101人目の王女

作者:青い鴉
 ある国に、101人の王女がいました。その多くは養子でしたが、彼女たちはこう言いました。私の父は国王陛下。ゆえに私は王女様。銀のお皿に銀のスプーン。国に養われるのは当たり前。

 ある日、国王は死にました。
 法律で、100人目の王女までは遺産を相続できました。でも101人目はなにもなし。これっぽっちの木のスプーンすら相続できません。「みてごらんあのかわいそうな王女を。彼女は何も相続できなかったんだよ」人々は噂しました。
 賢い王女はそれでもくじけませんでした。この日がいずれ訪れることを知り、市井の仕組みを多少なりとも理解していました。
「この国では、食い詰め者は奴隷になるしかありません。それは王女といえども同じこと」
 彼女は自分で自分を売りに掛けました。
 驚いたのは奴隷商です。いったいいくらで売ればいいのか、とんと見当もつきません。貴族たちは眉をひそめ、足早に去っていってしまいました。それを見て、商人たちも去っていきます。奴隷市場に残ったのは、何も知らない農民だけ。
「めんこい子だから2デナリで買おう」
 そうして彼女は農民の奴隷になりました。

 毎朝早起きして、牛の餌やり、牛舎の掃除、搾乳作業や牧草地の手入れ。終わる頃には日が暮れる生活。忙しいことこのうえありません。けれども、王女はこう言って自分を励まし続けました。「それでも私の父は国王陛下。この国を立派にするのが私の役目」
 よく働く奴隷を見て「牛の世話を続ければそのうちいいことがあるよ」と農民は言いました。神様は働き者に褒美をくださるからね、と。

 ある年、この国を病が襲いました。天然痘という恐ろしい病気です。罹った者は、死ぬか、それとも一生顔にあばたが残るかでした。この病は王宮と後宮をも襲いました。聖職者の祈りも通じません。100人の王女は、皆死ぬか、あばた顔になるかしました。あばた顔になるくらいならと、自殺した王女もいました。
「ぜいたくの罰が当たったんだよ」と農民たちは言いました。

 でも不思議なことに、101人目の王女だけは、病にかかりませんでした。昔から、牛の世話をする者は、天然痘にはかからないのです。美しい王女の話は、たちまち国中に広まりました。
「その者は神に祝福されているに違いない」話を聞いて、ある国の王子が農民のところに駆けつけました。「どうか王女を私の妻に迎えたい。だが、ああ、問題は王女の身請け金だ。彼女を買い取るのに、一体何千何万デナリあれば十分だろう?」

 王子は身分を隠し、農民のところに相談に行きました。
「ここによく働く娘がいると聞いてきた。私はどうしてもその娘と結婚したい。一体いくらあれば足りるだろうか」
「あんたはここの相場をよく知らんようだから言っておくが」と農民はきつい調子で言いました。
「100デナリもあれば、立派な結婚式を開けるだろう」
 これを聞いて王子がなんと驚き喜んだことといったら!

 国中の人々が、この顛末を聞いて面白おかしく歌いました。
「2デナリで売られた王女が、100デナリで結婚式を開く! なんとその差は50倍! けれどもそれを驚くなかれ。彼女はとても働き者! その美しさは100万倍!」

 この王子と王女は、いつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項をご確認ください。

名前:

▼良い点
▼気になる点
▼一言
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ