第19話 殺人兵器再び!?
ボクはいやな汗を全身から噴き出させている。
目の前にはリーサルウェポン(手作り弁当)を持ったナオちゃん。
後ろにはちょうどボクらに日陰をつくっている大木が。
に・・・逃げ場がない。
ボクが活路を探していると、ナオちゃんがボクの顔を覗き込んでくる。
「ケンタくん?
もしかして、サンドイッチ好きじゃなかった?」
可愛いな、ナオちゃん。
・・・いやいやいや、そうじゃない。
ここはサンドイッチがダメと嘘を通すか?
「あ、この前給食のカツサンド美味しそうに食べてたもんね。
大丈夫。このカツサンド、すっごく自信作なの!」
ハイ、消えた!
どうする?まだお腹すいてないことにするか?
いや、時間伸ばしても一緒だし・・・。
何より食べないとナオちゃんが傷つくよな。
ここは覚悟を決めて!
・・・
・・・
・・・
食えねぇ。
たしか杉田先生、運動会の後1週間食あたりで休んだんだよ。
どうする?どうすんだよ、ボク!
「あれはまずいな。何とかしないと。」
草むらではシンゴたちがあせっていた。
「このままじゃ、せっかくのデートでケンタがデリートされちゃうわよ。」
カナは案外余裕があるようだ。
「えっ、ナオちゃんって料理ダメなの?」
「そうなんじゃよ。
人間誰しも欠点はあるもんじゃ。」
いつの間にか野次馬たちは合流していた。
「完璧な女の子より、ちょっと不得意分野があるほうが可愛らしいものね。
さすがね、ナオちゃん。」
「いや、ケンタのママ。
あれはそんなにやさしいモンじゃねぇっすよ。」
カオリの平和な発言にシンゴが思わずツッコミをいれる。
「さて、どうするかの?
こうしておってもケンタくんのピンチは変わらんし・・・。
ん?」
おじいさんの視線の先には大あくびをするレオの姿があった。
「そうじゃ!
レオが突入すれば大丈夫じゃよ。」
「「えっ!」」
「レオはこと体に関しては丈夫じゃから、ナオちゃんの弁当の1つや2つものともせんわい。」
おじいさんは自信満々だったが、突然の指名に当のレオは声が出ないほど驚いていた。
「さぁ、友達を助けるためじゃ。
逝ってこい、レオ!」
「行くだろ!?
このじいさん、大丈夫か?」
シンゴのツッコミを他所に、レオは決心したのか涙を流しながらケンタとナオミの方へダッシュしていった。
しかし、ケンタたちまでは100m以上離れている茂みで覗いていたため、間に合うかどうかギリギリのところだ。
「はい、ケンタくん。
あ〜ん。」
ナオちゃんは満面の笑みでボクにカツサンドを差し出す。
こんなに嬉しくない『あ〜ん』は初めてだ。
覚悟を決めよう!
そのとき、ボクのポケットで尖った何かが動いた。
そうだ!ペンの力を使って、カツサンドを美味しくすればいいんじゃないか?
そうすればすべてがうまくいく。
最初の望みがこんなことで正直ガッカリだけど背に腹はかえられない。
そう考えてポケットの中のペンを握った。
・・・いや
やめとこう。
それはさすがにナオちゃんに失礼だ。
この力は本当に必要になるとき、誰かを助けるときに使うんだ!
ボクはナオちゃんを真っ直ぐ見つめて恐怖を隠すように笑った。
「いただきます。」
勢いよくカツサンドにかぶりつく。
・・・・・・
ん?
「美味しい。」
予想外の味に、ボクは半分呆然となりながら感想を言った。
「ほんと!?よかった。
最近ずっと料理の練習してたんだ。」
「ナオちゃん・・・」
ボクはナオちゃんの健気な姿に感動した。
嬉しくて抱きしめたくなった。
「ナオちゃん、ありがグフォッ!」
突然横から何か大きなものが激突し、ボクは2mくらい吹っ飛ばされた。
わき腹を押さえながら、振り返るとそこには白い大きな犬が息を切らしてながら、ボクを見ている。
「あら、レオ。
どうしたの、お散歩?」
レオはナオちゃんの足元へ首をすり寄せ、撫でて欲しいとねだっていた。
ボクは混乱した頭をクールダウンさせ、状況を考える。
「ボクのわき腹に突進してきたのはレオか。
ということは、もちろん・・・」
ボクはレオが走ってきた方を振り返ってにらみつける。
茂みがガサッと音を立て、中から考えていた通りの人物たちが姿を見せる。
心なしか皆気まずそうな表情をしている。
「さて、なんとなく答えは分かってるけど、一応聞いておこうか。
何でここにいるの?」
4人は並んで体育座りをしている。
「ワシはレオの散歩の途中でのう。」とおじいさん。
「お前がちゃんとやってるか心配だったんだよ。」とシンちゃん。
「アタシ、暇なのよね。」とカナちゃん。
「ケンちゃん、グッジョブ!」これはママ。バッチリ親指を立てている。
「反省の言葉はないのかよ!」
4人の自由な発言についつっこんでしまった。
それから10分ほど並んでいる4人に対してのボクの説教が続いていたが、
「ねぇ、お腹すいたからそろそろ皆でお昼にしましょ?」
レオと遊び飽きたナオちゃんの言葉で、雰囲気がガラッとピクニックへと変わってしまった。
人を和ませる、いや、人の心を掴む人徳がナオちゃんの一番のいいところなんだな。
皆でカツサンドを賞味したあと、おじいさんはレオの散歩の続きに、ママは夕飯の買い物に行った。
残ったのはボクとナオちゃん、シンちゃんにカナちゃん。
4人で広井公園をブラブラと紅葉狩りをすることにした。
「安心しろよ。
カナを連れて適当なところで消えてやるから。」
シンちゃんが僕の肩に手を置いて言う。
そんなに落ち込んで見えたかな?
「大丈夫だよ。
今日はもう十分すぎるくらいナオちゃんのいいところを知れたから。
これ以上を望むのと神様に贅沢言うなって怒られるよ。」
あの神様なら怒りはしないだろうけど、めんどくさそうにはするだろうな。
ボクの口ぶりがツボに入ったのか、シンちゃんは声を出さずに笑っていた。
少し歩いて、真っ赤に紅葉した紅葉の並木道に進んだ。
燃えるような紅色に皆言葉もなく木々を見上げていた。
「すごくキレイだね。
初めてじっくり見るけど、絵とか写真の世界みたい。」
いつの間にかボクの隣に来ていたナオちゃんが感想をもらす。
そんなナオちゃんの横顔に見とれてしまい、上手く返事が返せなかった。
ボクに振り返って、不思議そうな表情をしたので、慌ててしまう。
「いや、そんな世界だったら、ナオちゃんによく似合うなって思ってさ。
今とっても溶け込んでたよ。」
褒めたのかよく分からないボクの言葉に、何それと言いながら、風でくるくると飛んでくる紅葉の葉と踊るようにはしゃいでいた。
「ケンタくん、来年も再来年も観にこようね。」
ナオちゃんのふとした言葉にボクの頬が緩む。
「そうだね。
こんなにきれいな景色をナオちゃんと一緒に観られると思うと今から楽しみだよ。」
ボクらのやりとりを見ていたシンちゃんとカナちゃんは少し恥ずかしそうにしていた。
シンちゃんが近づいてきて、ボクに耳打ちする。
「ケンタ、今の会話はほとんど告白みたいなモンだぞ。」
「そんなんじゃ・・・」
ボクは慌てたけど、風に乗って紅葉と踊るナオちゃんの姿はさっきの台詞なんて気にしていないようだった。
ボクは自分の顔が紅葉と同じくらい紅くなっているだろうと、帽子を深くかぶりなおし、恥ずかしさに耐えていた。
月曜からどんな顔して学校に行けばいいんだろうか。
「ちゃんと告ッちまえばいいだろうが。」
シンちゃんの言葉が心に刺さる。
告白か。
劇が一段楽したら考えてみよう。
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