第1話 化物屋敷
今日ボクは1人で学校から帰っていた。
シンちゃんは塾に通い始めて、火曜日と金曜日は一緒じゃない。
リョウちゃんは火曜日と土曜日は空手に通っている。
先週までタクちゃんは一緒だったのに、火曜日にスイミングに行きだした。
だから、火曜日のボクは1人で家まで帰ることになったんだ。
4年生になってからみんな塾とかお稽古とかに通いだした。
ボクも何かしたいとママに言ったんだ。
「ケンちゃんにはそんなのまだ必要ないわよ。いっぱい遊べていいじゃない?」
1人で何をするんだよ。
引きこもりになっても知らないぞ。
ボクは歩きながら小石を蹴って遊んだ。
どのくらい蹴ったらどこまで進むかがポイント。
家に着くまで何回蹴ることになるかな。
思い切り蹴ると知らない人の家の門から中に入っちゃった。
「やっべ」
家を見上げると、古い洋風の家だった。
ボクの学校で有名な化物屋敷だった。
空き家のはずなのに2年生の子が2階の窓に人影を見たとか
探検しようとした5年生の子は怪物に追いかけられたとか
怖い話ばかり聞くところだ。
「どうしよう」
いつもならみんなと一緒に走って通り過ぎるんだけど
小石の記録があと3回で100回に届くのでとても惜しい。
2階の窓に注意しながら、門へ忍び寄って中をのぞいてみる。
「怪物はいないよな」
そっと門を押してみると
ギィーーッと開く。
ボクは足音をたてないようにゆっくり動く。
小石は家の横の花壇の前にあった。
あと5メートルのところで走って取りにいく。
手を使ってもこの場合は無効としよう。
ボクが小石を拾った瞬間
後ろからダダダッと走ってくるものがいる。
怖くて振り返るとボクより大きな影が突っ込んできた。
ボクは怖くて目も開けられない、声も出ない。
しっかり瞑ったボクのまぶたを生暖かいものがなぞる。
とても臭い!
このまま頭から喰われる・・・神様、助けて!
「レオ、やめなさい。」
人の声が聞こえる。
「助けて!」
ボクは一所懸命に叫んだ。
突然、ボクに乗っかっていた怪物が「ウォン!」と吠えてボクの上からどいていった。
ボクは何とか起き上がり、声のしたほうを見てみると
真っ白い髪・・・真っ白い髭・・・着ているシャツもズボンも真っ白なおじいさんが立っている。
「おじいさん、誰?」
おじいさんは白い眉毛をちょっと上にあげて微笑んだ。
「おやおや、先に聞かれてしまったな。
ワシはここに住んどるんだが、レオが突然走り出したので気になってな。
君はここで何をしているのかな?」
咎めるではなく、とてもやさしい話し方だ。
「ボク、石が入っちゃって・・・取りに・・・」
ボクは握り締めていた石をおじいさんに見せた。
おじいさんはまた眉毛を動かして笑った。
「そうかそうか、レオが驚かして悪かったね。」
おじいさんは右に座っている大きな、これまた真っ白な犬を撫でながら謝ってくれた。
「ううん、ボクも勝手に入ってごめんなさい。」
レオは「ワフッ」とうれしそうに撫でられている。
まさか、犬とは思わなかった。
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