短編集 by伊之口浩作(2/7)PDFで表示縦書き表示RDF


2XXX年。地球は人間の過ちによって滅んだ。
これは、地球最後の男の死に際の話。
短編集 by伊之口浩作
作:伊之口浩作



地球最後の男


 ある所に一人の男がいた。
 薄暗い部屋の隅で、机に向かって何かを書き留めている。
 部屋の中央には、先端が輪になったロープが垂れており、その下には小さな椅子が置いてあった。
「これで……、いいだろう……」
 男は紙を持ち上げ、内容を確認する。
 紙に書かれた内容はこうだった。
『地球は滅んだ。ごく一部の人間のちっぽけな理想に、馬鹿などこぞの指導者がいきり立ち、結果、人類の大多数をむごたらしく殺してくれたのだ。俺はもう、こんなすさんだ地球にいたくはない。ここで、後々の禍根を断つために、愚かな【人】という動物を滅ぼすために、俺はここで死のうと思う。このメモが再び日の目を浴びるときには、愚かでない人類が栄えていることを祈る』
 男はメモを金庫にしまい、輪っかになった麻縄に手を掛けた。
 数秒間目を瞑り、覚悟を決めて瞼を開ける。
 その時だった。男の部屋のドアを叩く音が響く。
「!」
 男は我が耳を疑った。何故なら、地球上の生物は、彼を最後の男として息絶えてしまったからである。規則正しいリズムからして、風が何かを吹き上げ、それがぶつかる音でも無さそうである。
「!!」
 彼は驚愕のあまり、椅子から転倒し、頭を強く打った。そして、その傷が原因でこの世を去った。地球上で最後の男が、この世から居なくなったのである。

「やはり、亡くなっているわ……」
 男の死体の側には、一人の女がいた。
「彼が最後だとしたら、私たちはどうなるの?」
 そう言って、ドアからもう一人の女が入ってくる。
「わからないわ。もう、人間は滅ぶしか無いのでしょうね……」
 女は男の死体の瞼をそっとずらし、彼の強張ったままの顔を穏やかな死に顔にした。
「彼が『地球最後の男』。人間が再興するための、たった一人の存在だったのに……」












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