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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~  作者: ブロッコリーライオン
3章 飛躍 十歳冒険者見習い編
60/70

60 作戦参加

 店内には昨日に引き続き、今日も騎士の皆さんが集まって何かを真剣に話し合っているのが見えた。

 その席にはゴロリーさんの姿もあり、何だか声を掛けづらい雰囲気だったので、とりあえずジュリスさんに声を掛けることにした。


「ジュリスさんはあの席に混ざらなくてもいいんですか?」

「うん、いいのいいの。あの会議の内容は明日の朝にシュナイデル隊長から申し送りで聞くから大丈夫。それよりお腹減ったよ~」

 ジュリスさんはお腹を押さえて、本当にお腹が空いているみたいだった。

 僕はさっきご飯を食べたばかりだったけど、店内に入ってから美味しそうなニオイを嗅いでいて、だんだんお腹が減ってきた。

「そうなんですね。それじゃあ早速、カウンター席へ行きましょうか」

「ふふっ クリス君の指定席だね」

「はい」

 二人で笑いながらカウンター席へ移動しようとしたところで、会議をしていたゴロリーさんと目が合った。

 するとゴロリーさんは騎士の皆さんに声を掛け、シュナイデルさんと一緒にこちらへとやってきた。


「クリス遅かったな。少し心配していたんだぞ?」

「ごめんなさい。今日はとても調子が良くて、一気に九階層まで進んでしまったんです」

「そうか、別に怒っている訳じゃないぞ。ただ今は色々厄介事が重なっているからな」

「はい」

 僕はゴロリーさんが怒っていないことにホッとして頷いた。


「こんばんは、クリス君。まだ迷宮に潜り始めてから一週間だろ? それなのに九階層まで進んでいるのかい」

「シュナイデルさん、こんばんは。迷宮探索が順調なのも皆さんに鍛えていただいているおかげです」

 たぶんエクスチェンジを使ってスキル交換しただけでは、ここまで強くなれることはなかったと思う。


「そうかそうか。ジュリス、これが大人の対応だぞ。ジュリスみたいに「天才が努力してますから」なんてことは言わないんだぞ」

「うわっ飛び火した~。もう勤務外ですから、お説教は止めてくださいよ隊長。それにクリス君に剣と盾の使い方を教えているのは私ですよ」

 シュナイデルさんは溜息を吐き、ジュリスさんは嫌そうな顔をして先にカウンター席へ座ると、エドガーさんに料理を注文し始めた。


「今は団長だ。はぁ~」

 シュナイデルさんは団長になってからも気苦労が絶えないみたいだ……。

 でもシュナイデルさんが騎士の中でジュリスさんを一番信頼していることは皆知っているし、たぶんそれはジュリスさんも分かっている。

 そういえば会議って中断したんじゃなくて終わったのかな? 気になったので聞いてみることにした。


「もう会議は終わったんですか?」

「いや、まだまだ作戦を練っている途中だよ。前回あれだけの警備網を敷いていたにも関わらず、捕獲対象に逃げられてしまったし、今回は冒険者ギルドも関わってくるから、絶対に失敗することが出来ないからね」 

「そうなんですね」

「それでクリス、今日の迷宮探索はどうだった?」

 じゃあ昨日からあんまり進展がないのかな? ゴロリーさんを見ても、昨日とは違い作戦のことを聞いても問題はなさそうだ。

 これなら今日の迷宮の話をしてもいいかな。


「あの参考になるかは分からないんですけど、さっきも話をした通り今日の探索で九階層まで行ったんです。そしたら僕のことを探していると思われるパーティーが複数いました。それでその一組が近くを通った時に、騎士団が近々動き出すみたいなことと、十二階層には当面近づかないようにしよう……そんな話をしていました」

「なんだって!? それは確かなのかい?」

「はい。間違いありません。あ、それとこれは関係ないと思いますけど、【索敵】を念じた時に集中していなければ見失ってしまうような、とても薄い反応があったんです。それが【隠密】スキルだってことはさっきジュリスさんから教えてもらいましたけど」

 それが探している暗殺者なのかは分からないけど、シュナイデルさんやゴロリーさんの眉間に(しわ)が寄った。


「こちらの動きを読まれているのなら、少し早く動かないと不味いかもしれないな……ゴロリーさんはどう判断しますか?」

「同意見だ。騎士団で高レベルの【索敵】が出来る者は何人いる?」

「残念ながら我が騎士団で【索敵】スキルと【隠密】スキルのレベルが高い者は一人しかいません」

 シュナイデルさんの視線がジュリスさんに向けられた。

 しかしジュリスさんは今、エドガーさんの料理に夢中で気が付いていない。


「ジュリスだけか……今回は冒険者ギルドも絡んでいるから下手に冒険者は使えないしな……」

「ゴロリーさんが動けば、何とかなりませんか?」

「ならないこともない……と、言いたいところだが【隠密スキル】を使った暗殺者が接近してくるか、攻撃を仕掛けて来なければ気付けないだろうな」

「それならエリザさんはどうですか? 索敵魔法を使えるのでは?」

 シュナイデルさんがそう口にした瞬間、ゴロリーさんがシュナイデルさんを睨みつけた。

 あまりない光景に僕は驚き、声が掛けられなくなってしまう。


「……却下だ。理由は分かっているな」

「……申し訳ありません。不謹慎でした」

 シュナイデルさんが謝ると、ゴロリーさんは腕組みをして目を瞑った。

 もしかすると気持ちを落ち着かせているのかもしれない。

 それにしても【索敵】スキルなら僕も役に立てるかもしれない。

 僕は作戦に参加出来るように立候補してみようと決めた。


「あの……それなら僕が同行します。【索敵】スキルもありますし、少しはお役に立てると思うんです」

「……クリス、相手は暗殺者なんだぞ」

 目を見開いてゴロリーさんは怒った顔をしているように見えるけど、ただ心配してくれているのだということが良く分かる。


「はい。でも僕はその暗殺者と冒険者グループに目をつけられていますし、ゴロリーさんと一緒なら大丈夫ですよね?」

「……はぁ~、迷宮のことを聞くんじゃなかった。分かったクリスが同行するなら、俺も迷宮へ入る。いいなシュナイデル」

「ええ。助かります。ですがゴロリーさんはいいんですか?」

「どのみち作戦を立案しているうちに迷宮から出られたら厄介だ。クリスも狙われていると分かった以上、この騒動が終わるまでは一人で迷宮へやる訳にもいかないだろうしな。ただエリザに何と説明するかだけが問題だ……」

 ゴロリーさんは気怠げに溜息を吐いた。


「……エリザさんには事後報告ではダメなんでしょうか?」

「騎士団がここを出禁になるぞ。下手をすれば騎士達が真っ黒焦げになる。もちろん俺もな……」

 エリザさんが怒ったら本当にそうなる可能性は高いと思う。でもそんなに怒らないと思うんだけどな……。

「そうだ、同性であるジュリスなら説明出来るんじゃないか?」

 シュナイデルさんが名案とばかりにそう口にすると、カウンター席まで声が届いていたのか、ジュリスさんは椅子に座った状態でこちらへ顔を向けた。

「えっ、嫌ですよ。エリザさんが怒ると本当に怖いんですから。こう手に雷をバチバチさせて笑顔で近寄って来る姿なんて、もう完全にトラウマものなんですから」

 そういえば以前一度だけ、ジュリスさんがエリザさんを怒らせて雷を落とされたことがあったな~。

 いつも物怖じしないジュリスさんが、一ヵ月くらいの間エリザさんの前ではとても大人しくしていたんだよね。


「……仕方ない。ゴロリーさん、これからお宅へ訪問させて頂いてもいいでしょうか?」

「いいが……仮にクリスを同行させる許可が下りたとして、いつ作戦を実行するんだ?」

「明朝、まだ日が昇るか昇らないかぐらいから迷宮へ入りたいですね。その時間帯から迷宮へ入れば喩え見つけることが出来なくても、もう一度ぐらいは機会(チャンス)がありそうですから」

 そんなに早く? それじゃあ明日は皆で迷宮へ行く事になるんだ……そう考えると、何だかワクワクしてきた。


「そうだな。じゃあ説得に向かうか……」

「僕も行きます」

「いや、クリス君はジュリスと食事をしていて欲しいな」

「ああ。エリザもクリスに怒った姿を見せたくないだろう」

 僕には想像出来ないけど、ゴロリーさんとシュナイデルさんはエリザさんが怒ると思っているみたいだ。

 その理由が気になったけど、僕は二人に従うことにした。


「わかりました……それじゃあ帰りはエドガーさんと一緒に帰ればいいですか?」

「いや、ジュリスに送ってもらってくれ。ジュリスいいな?」

「本日の払いが隊長の驕りであれば、喜んで引き受けさせていただきます」

「元々その気だっただろ」

「えへっ」

「そういう訳だからクリス君、出来るだけゆっくり食事をしてきてくれるかい?」

「分かりました。夕食を終えたらジュリスさんに送ってもらいますね」

 それからシュナイデルさんが騎士の皆さん達に声を掛けた後、ゴロリーさんと一緒にお店から出ていった。

 僕はエドガーさんに料理を注文して、ジュリスさんから騎士団の訓練や迷宮の話を聞きながら夕食を楽しんだ。


 その後、ジュリスさんに家まで送ってもらい、中に入ると少し焦げた顔のゴロリーさんとシュナイデルさんが出迎えてくれた。でもエリザさんとは顔を合わせることがなかった。

 そして少数精鋭による迷宮探索の説明を受け、今日は早く寝ることにした。


お読みいただきありがとうございます。

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