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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~  作者: ブロッコリーライオン
3章 飛躍 十歳冒険者見習い編
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57 作戦会議

 お店の中へ入ってきたゴロリーさん達は、少し怖いと感じるぐらい表情が硬かった。


「ゴロリーさん、お帰りなさい。シュナイデルさん達もいらっしゃいませ」

「クリス、戻って来ていたか」

 ゴロリーさんは厳しい表情を崩して、どこかホッ笑顔になった。


「はい。アイネ達のところへ行っていたんですよね?」

「ああ。イルムさんから連絡があって、会いに行っていた。一応シュナイデル達も連れてな」

 ゴロリーさんはそう言って、シュナイデルさんへと視線を向けた。


「こんばんは、クリス君。出来れば近づいて欲しくなかったけど、今回の件はよく友達を守ったね」

 その言葉を聞いた僕は、とても心が苦しくなった。

 何故なら本当の意味で助けたことにはなっていないし、逆に助けたことで騎士団の計画を潰し、アイネ達が狙われるきっかけを作ってしまったからだ。


「いえ、それでアイネ達の様子はどうだったんですか?」

「まぁ落ち着いていたし、問題はないだろう。それより鍛錬を頼まれたぞ。ちゃんとした戦い方は教えられないと断ったけどな」

「そうですか」

 どうやらアイネ達は、いつも通りみたいだな。

 本当にそれだけは良かったと思える。


「クリス、それより今日の件を少し詳しく聞かせてくれ」

「はい。でもその前に、僕が冒険者ギルドでお世話になっている受付のマリアンさんを紹介したいんですけど、いいですか?」

「ん、ああ」

 僕がそう告げると、マリアンさんが僕の隣にきてくれた。


「こちらが冒険者ギルドで僕の担当をしてもらっているマリアンさんです。そしてこちらが僕の師匠であり恩人のゴロリーさん、それから対人戦の訓練をしてもらっている騎士団長のシュナイデルさんとジュリスさんです」

「初めまして、冒険者ギルドで受付をしているマリアンと申します。この度は突然お邪魔して申し訳ありません」

 マリアンさんが自己紹介すると、ゴロリーさんとシュナイデルさんが見合って頷いた後、自己紹介を始めた。


「ああ、クリスの保護者兼師匠をしているゴロリーだ。クリスから思いやりのある受付と聞いている」

「いえ、そんなことはありません」

「騎士団長のシュナイデルといいます。それにしても冒険者ギルドの受付をされている方が何故こちらへ?」

 シュナイデルさんの問い掛けには僕が答えることにした。


「それは僕から答えますね。前に集団に近づかないように言われた後、カリフさんからも同じことを言われたんです。それで僕が大量にギルドへ魔石を運んだことで……」

「その集団として疑われたのか?」

「はい。ただレベルを確認したところで直ぐに疑いは晴れたんですけど、マリアンさんが困っているようだったので、力になってあげたかったんです。でも、僕にはまだそんな力がないから……」

「はぁ~仕方ない」

 ゴロリーさんは苦笑しながら、騎士団の人達をカウンターへ誘導した後で、シュナイデルさんと一緒に僕達が食事をしていたテーブルへと移動して、話すことになった。


「それで? 冒険者ギルドではなく、今回は個人で相談に来たと考えていいのか?」

「はい」

「色々と覚悟はしているみたいだな。それで冒険者ギルドでも加担している者がいるんだな?」

「……はい。ですが証拠がありません」

 きっとマリアンさんの噂を流した人だと思う。


「……そもそも迷宮へ入る冒険者の大半の食い扶持は魔石だ。たまに魔石以外にも何かを落とすことはあるが、低階層ではそうあることではない。レベルも上がらないし、集団になるメリットは少ない」

「はい」

「それでも集団にいる理由があるとしたら、なんだと思う?」

「……恩……もしくは恐怖でしょうか」

 恩は分かるけど、恐怖って……あ。

 僕の頭の中で、防具を着けず武器しか持たない冒険者達と、スラム街を牛耳っていた人、そして冒険者ギルドが繋がっていく。


「そうだ。ほとんどの冒険者が武具を買わなければ戦えない。ただ誰もが最初から強いわけではないし、装備が整っている訳ではない。それに宿で生活するにも金がかかるからな」

「それでは集団でいることで、それらを提供していると思われているのですか?」

「ああ。普通はある程度強くなれば、パーティーで独立するんだろうが、スラムを牛耳っていた男が迷宮にいるという情報もあるし、その者は暗殺者だったはずだから恐怖心があるんだろう」

 ゴロリーさんの推測が正しければ、レベルは上げられるけど、一定以上には強くなれないってことになる。


 するとここで、シュナイデルさんが口を開いた。

「それでマリアンさんでしたか、この一年で何か変わったことが冒険者ギルドで起こっていませんか?」

「……ここ数か月、ランクの低い冒険者、冒険者見習いがまとまっているようには感じます」

「それ自体は悪いことではあるまい。まだあるのではないか?」


 ゴロリーさんの追及に、マリアンさんは一度目を瞑ってから話し始める。

「はい。今回のアイネさん達みたいに無理矢理な勧誘を受けたと聞いたことはあります。それとその冒険者達をその後、あまり見かけなくなっています。私の担当ではないので、そう感じるだけかもしれませんが……」

 今までアイネ達が襲われなかったのは運が良かったってことなのかな。


 でも一度こういうことがあると、迷宮には行きたくなくなることも分かる。

 冒険者は迷宮へ入るだけが仕事ではないし。


「その者達が迷宮内部で殺されている可能性や、奴隷商人に売られている可能性があることは知らないですか?」

「「……」」

 僕とマリアンさんは、シュナイデルさんの告げた言葉が衝撃的過ぎて、声が出せないでいた。

 それでも話の流れで、アイネ達が危険なことが分かった。


「次に狙われているのは、アイネ達ですよね」

「ああ。だからこそ、今回こうして騎士団の精鋭に集まってもらったのだ。たぶん近々アイネ達が狙われるから、その前に動くことにしたんだ」

「騎士団が、冒険者の為にですか?」

 マリアンさんは戸惑っているように見える。

 それは僕も同じで、本には騎士と冒険者が交わることがないと書いてあったからだ。


「正確には、騎士団が捕まえ損ねた悪党を、捕まえるために動くのです。それでマリアンさん、申し訳ないが貴女にも協力していただきたいのです」

「はい。お受けします」

 即答だった。


「もしかすると冒険者ギルドにいられなくなるかもしれませんよ?」

「はい。それでもクリス君やアイネちゃん達を守れるなら、お手伝いさせていただきます」

 その表情を見て、僕は冒険者ギルドで助けてくれたマリアンさんを思い出した。


「なるほどな。クリスの人を見る目は確かみたいだな」

「そうですね。それでは早速作戦会議を開きましょう」

 ゴロリーさんとシュナイデルさんはそう言って笑い、その後、集団に対する作戦会議が始まった。

 ただ僕はその作戦に参加することをゴロリーさんが認めてくれなかったので、家に戻ってエリザさんと魔法の訓練をしてから眠りに就くのだった。


お読みいただきありがとう御座います。

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