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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~ 作者:ブロッコリーライオン

2章 出会い 七歳編

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42 騎士との訓練そして……

 エドガーさんが“エヴァンス高級宿”を辞めてから直ぐに、エドガーさんとレイシアさんの赤ちゃんであるミレーヌちゃんが産まれて“ゴロリー食堂”は“エドガー食堂”へと生まれ変わった。

 その理由はゴロリーさんとエリザさんが、“初孫であるミレーヌを溺愛するためだ”と、エドガーさんが笑いながらそんな風に嘆いていた。

 そんな色々な変化が合って、あっという間に夏が過ぎて秋が来たと思ったら、もうすぐ冬が訪れようとしていた。

 そして現在、僕は右手に刃引きされた剣を持ち、左手に盾を持って、同じ格好をした騎士のお姉さんと対峙していた。 
 お姉さんとこうして訓練をするのは、ゴロリーさんと騎士のおじさんが交わした約束があったからだ。

 最初は“ゴロリー食堂”の常連となった騎士隊の隊長であるシュナイデルさんが、僕に訓練をつけてくれていたのだけど、シュナイデルさんが来れない日には、こうして騎士のお姉さんであるジュリスさんが相手になってくれている。
 ジュリスさんは新人騎士だけど、剣術や盾術のセンスがいいとシュナイデルさんが太鼓判を押す力量で、この数か月それを僕は自分の身体で実感している。

「クリス君、何だか先週よりも動きが格段に良くなっているんだけど、気のせいかしら? それよりも八歳でその強さは少し反則だと思うのよ」
「えっ、本当ですか? それは嬉しいです」
 僕はジュリスさんの言葉がとても嬉しかった。

 訓練を初めて数か月経つけど、最初はただ笑われているだけだったから、成長しているみたいな言葉が本当に嬉しい。 

 まぁジュリスさんが何度も戦ってくれているうちに、あることに気が付けたことが大きいと思うけど。
 ジュリスさんは茶色の長い髪を後ろで結んでいるから、その髪を見ていれば、動き出すタイミングが何となく分かることに気が付いたのだ。
 その時からようやく攻撃を受けてから、こちらが攻撃するという闘い方を出来るようになってきた。

「うわ~その笑顔は卑怯よ」
「えっと笑顔は駄目ですか?」
 騎士は訓練中に笑っちゃいけないのかもしれないな。

「そういうことじゃないんだけどね。じゃあもう一本行くわよ」
「はい」
 たまにジュリスのさんの言っていることが分からない時もあるけど、ジュリスさんと戦っているのは、ゴロリーさんへ打ち込みをするよりも楽しい。
 もちろんゴロリーさんが攻撃を受けた感想を言ってくれるので、とても参考になっていることは間違いないのだけれど……。

 僕とジュリスさんの攻撃は、お互いの盾へ行うことが決まっていて、どっちが叩くとかの順番はない。
 だから一方的に叩かれることもあるけど、それは何となくイメージで対応出来ている。

 ただたまにだけど、僕が剣を振ることに【集中】していると、ジュリスさんがその守っている盾で僕を押し退ける攻撃もしてくるから、僕はその攻撃を受けて何度も地面に転がされている。
 そんな時、僕達の様子を見ているゴロリーさんから僕へ注意が飛ぶ。

「クリス、攻撃だけに【集中】し過ぎるな。魔物の一撃はそれだけで致命傷になる場合もあるんだから、攻撃よりも防御に意識を置くんだ」
「はい」

「体格差がある相手の場合、攻撃をわざわざ受けずに、避けたり、いなしたりする必要があるから、それは騎士の動きをしっかり見て覚えるんだぞ」
「はい」
 僕はゴロリーさんの助言を聞きながら、どう動くべきかをイメージしていく。

 今も昔も変わらず、僕がイメージするのは夢で見たあの黒髪の女性の剣技、そしてそれを防いでいた僕の動きだ。
 ただ決定的に違うのは夢の僕は、黒髪の女性よりも背が高かったことだ。

 だから今は全部出来なくても、しっかりと剣を振るうことと、ジュリスさんの動きをちゃんと見る、この二つだけは絶対に守ると決めている。

「クリス君の師匠さんは厳しいね~」
 ジュリスさんは苦笑しながら、僕にだけ聞こえる声でそう呟いた。

「そうですか? ゴロリーさんは優しいですよ?」
 確かに厳しく聞こえるけど、訓練が終わった後には必ず褒めてくれるし、ゴロリーさんが沢山の食事を準備してくれるのだから。

「クリス、対人戦は相手の視線や呼吸、身体の動き、全てに【集中】するんだ。フェイントを仕掛けて来ようとしても、全てがフェイントということはない。相手の性格と攻撃パターンを読むんだ」
「はい」
「えっと、そんなに難しいことは騎士隊でも習いませんけど?」
 ジュリスさんは驚いてゴロリーさんへと視線を向けた。

「クリスは伝説の冒険者志望だからな」
「えっ? クリス君は伝説の騎士志望だって、隊長から聞いてますよ」
 えっ? 僕はそんなこと言った覚えはないけど?

「ほぅ。シュナイデルめ、原石を見つけたとでも思っているんだろうな。クリスは騎士になりたいのか? たぶん騎士にはシュナイデルが推薦してくれるだろうし、成ることは出来ると思うぞ?」
 ゴロリーさんは僕の気持ちを知っているから、わざとそう言ってくるけど、僕がなりたいのは冒険者で、それ以外にはない。

「いえ、冒険者になります。ゴロリーさん達のように世界を見て回ってみたいですから」
「そんなぁ~。クリス君が成人になって騎士になってくれたら、私の部下にする予定だったのに~」
「そうだったのか。ジュリスはそんなに上を目指していたのか」
 ジュリスさんが肩を落とした後ろから声がしたので、その方向へ視線を向ければ、シュナイデルさんがいた。

「た、隊長。今日は騎士団の集まりがあったのでは?」
 怯えた顔でジュリスさんはシュナイデルさんへと視線を向けた。

「ああ。貴重な情報を市民が提供してくれるおかげで、今日も早く終わった。それよりも上を目指しているのなら、ある程度の仕事は覚えてもらう必要があるぞ」
「わ、私、直ぐに眠くなるから、座学は嫌いなんですよ~。クリス君だって文字とか数字がいっぱい出て来たら眠くなるよね?」
「えっ、そうですか?」
 僕は本を読むのも好きだし、カリフさんが出してくれる数字の問題を解くのも楽しくて好きだから眠くなったりはしないなぁ。

「クリスは既に識字能力、計算能力は大人顔負けだぞ」
「そうなの? じゃあクリス君が私の手伝いをするっていうのはどうでしょう?」
「馬鹿者! ジュリス、子供に仕事を任せようとするな」
「うぅっ」
 シュナイデルさんはジュリスさんを叱っているけど、実はいつものことだから、僕も動じることはない。

「明日から少しずつ書類作成の仕事を与える。いいな」
「はっ」
「部下への躾は終わったかシュナイデル?」
「ええ、ゴロリー殿」
「そうか。ではこちらからも用件を伝えておくが、クリスは冒険者になるのだから、騎士に推薦しても無駄だぞ」
「……これだけの逸材はプレッシモ連邦国軍の中でもそう多くはいませんから、最後まで勧誘は続けさせていただきますよ」
「思ったより強情だな」
「それで左遷されていますからね」
 ゴロリーさんとシュナイデルさんはお互い笑い合っていた。

「それで今年も冬にスラムの浄化作業をするのか?」
 ゴロリーさんはシュナイデルさんに騎士団の仕事について聞いた。

「ええ。昨年は一度失敗しているだけに、今回は応援も来る予定ですから、何とかなるでしょう。騎士団の怪しい者は既に尾行をつけて張らせていますからね」
 実はスラム街の人達を取り締まったのだけど、あまり成果を上げられていないみたいだった。
 その原因となったのは、スラム街を騎士団が捜索するという情報がどこかから漏れた為だって、前にゴロリーさんから教えてもらっていた。

「それならいいが。子供達はしっかりと守ってくれ」
「もちろんです。さて、詳しい話は“エドガー食堂”の中でにしましょう」
「そうだな。ジュリスも今日は無料で好きなだけ食べていけ」
「ありがとう御座います。本当に隊長がクリス君の訓練に誘ってくれて良かった。私も最近実力が伸びてきているし、クリス君には感謝だよ~」
 シュナイデルさんが騎士の中で、僕の指導してくれる人を探していて、最初に声を掛けたのが新人騎士のジュリスさんだったらしい。

 僕の訓練指導してくれる対価として“ゴロリー食堂”だった頃に訓練を指導した日の昼食は食べ放題にすると提案をしていた。
 新人の騎士さんはお給料が少ないらしく、ジュリスさんは他の騎士さん達に声を掛けることなく、僕の訓練をしてくれることになったのだと、シュナイデルさんが苦笑いを浮かべながらそう話してくれた。
 そしてそれは“エドガー食堂”になった今でも続いている。

 僕は必死に頑張ることしか出来ないけど、それでいいと言ってくれる皆の為にも目標は変えないで頑張ることを決めた。

 それから冬が本格化する前にエクスチェンジを使用してスキルを交換した僕は、また風邪を引かないようにエクスチェンジ禁止令が出て冬を過ごしていった。


 そんなある日、誰かに話し掛けられている気がして、いつもより少しだけ早く目が覚めた僕は、語り掛けてくる正体が直ぐに分かり、シークレットスペースから【排出】させた。
「産まれるのかい?」
 僕は産まれる為に魔力が欲しいと言われている気がして、カラーエッグに魔力をあげていく。
 するとカラーエッグを中から叩く音がして、僕はいつの間にか声を掛けていた。

「ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ」
 僕の声が聞こえたのか、ゴロリーさんがいつものようにやって来て、カラーエッグから魔物が孵ることを伝えると、直ぐにエリザさんを呼んで来てくれた。
 それから少しずつカラーエッグに入った亀裂が大きくなっていくと、中から卵を押し出すようにポロリと殻が削れたところから、とても小さな顔が見えた。

「あとちょっとだよ。ガンバレ」
 声を掛け続けるとようやく卵が割れて、真っ白な綿毛みたいな小さなヒナが、僕の顔を見て小さく“ピヨ”と鳴いてくれた。
 何故だか分からないけどその瞬間、僕の目からは涙が流れたし、この小さなヒナがとても大事な存在に思えてならなかった。

「あれって何の魔物だ? 分類は鳥獣だろが、真っ白なんて聞いたことがないぞ」
「たぶんコンドル系かエレメンタルバードの一種だと思うけど……卵の大きさから言っても小さ過ぎるし……何より可愛い過ぎるわ」
「……クリスにはまた秘密にしないといけないことが増えたな」
 ゴロリーさんとエリザさんのそんな言葉が耳に届いていたけど、僕は僕の顔を見て首を傾げるこの子から、ずっと目を離すことが出来なかった。

お読みいただきありがとう御座います。
作者のイメージでは、大人の拳大ぐらいのまん丸ふっくらした真っ白なヒナとなっております。
ヒヨコに近いですが、将来的には飛行する予定です。
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