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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~ 作者:ブロッコリーライオン

2章 出会い 七歳編

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32 相談という願い事

 明け方前に目を覚ました僕は、フカフカのベッドから出る前に一度大きく伸びをした。

「ふぁ~はぁ~……やっぱり迷宮とは大違いだよね」
 伸びをすると自然に大きなあくびが出てしまった。

 迷宮の固い床に寝るのとは違い、ベッドはとても寝心地が良くて、身体が固くなったり、痛くなったりするところがないから、いつまでも入っていたいと思っちゃう……。
 そこへ扉をノックする音が聞こえた。

「は~い」
 僕が返事をすると、扉が開いた。

「おはよう、クリス。今日もしっかりと起きていたか……体調はどうだ?」
「おはよう御座います、ゴロリーさん。元気いっぱいです」
 ゴロリーさんは既に寝間着から、普段着へ着替えを終えていた。
 僕も寝る前に新しい服へ着替えていたから、出掛ける準備は既に終わっていた。

「そうか、じゃあ店に行くとしよう……っと、その前に相談したいことがあるらしいな?」
 ゴロリーさんは一度部屋を出ようとして、足を止めて振り返りながら聞いてきた。
 きっとエリザさんが言ってくれたんだろう。

「はい。相談事は二つあります」
「じゃあ店に行きながら話すか」
「はい。あ、でも、一つは直ぐに話した方がいいかも知れないです」
「そうか……う~ん、それは朝食前か後では不味いのか? 抜け駆けで聞くとエリザの機嫌が悪くなるからな」
「あ、はい。それじゃあ、今日の訓練もお願いします、ゴロリー師匠」
「……クリス、もう一度言ってくれるか?」
「えっと、今日の訓練もお願いします、ゴロリー師匠」
「よし行こうか」
 ゴロリーさんはいつもよりも機嫌が良さそうに僕と手を繋いで、“ゴロリー食堂”まで移動するのだった。


 “ゴロリー食堂”の裏庭で、大斧を一つずつ両手に持ったゴロリーさんへ向かい、僕は武器で突く練習をしていた。
「クリス、慣れるまでは一突き一突きを正確に、そして素早く出し入れすることだけを考えるんだ」
「はい」
 僕は素早く、正確にゴロリーさんの脚を狙って突きだけを放つ。
 何度でも同じように突けるまで、一回一回力を込めた。

「正確な攻撃は相手に読まれやすいが、その正確な攻撃が出来ない者に大成はありえない。徹底的に基礎を磨くぞ」
「はい」
 僕は正確な突きになるまで、一点集中でゴロリーさんを突き続けるのだった。


 その後、エリザさんがいつの間にかお店に来ていたらしく、料理が出来たことを教えに来てくれるまで、僕は一切気づくことがなかった。
「クリス君、朝食の用意が出来たわよ」
「あ、エリザさん、おはようございます」
「はい、おはよう。ねぇクリス君、【集中】するのはいいけど、他への注意力が欠如しているわね。いずれその点も少しずつ鍛えて直していきましょうね」
 どうしても【集中】すると、意識している以外のことを考えられなくなってしまう。
 直せるなら直したかったことだし、エリザさんはその方法を知っていそうだから、お願いすることにした。

「はい、エリザ師匠」
「いい返事ね……ところでクリス君。その師匠って何かしら?」
 僕に聞いている筈なのに、エリザさんはゴロリーさんへ視線を向けていた。

「えっと、グランさんが親方と呼んで欲しいと言われて、ゴロリーさんは訓練中、師匠って呼ぶことになったんです。それでエリザさんに教わる時も師匠がいいのかと思って……駄目でしたか?」
「う~ん、最近“エリザお姉さん”って、呼ばなくなったから、クリス君が本当に信頼してくれたんだと思っていたのに……」
 ゴロリーさんから視線が僕に戻ると、エリザさんは少し悲しそうにしていた。

 だから僕は咄嗟になって、否定した。
「えっ!? 最初に会った日から、僕はおか……じゃなくて、信頼していましたよ」
「ふふっ、そう。それならいいわ。でも師匠って呼び名は好きじゃないの。だからいつも通りでいいからね」
 お母さんって、言いそうになったけど、バレてないよね?
「……分かりました」

 その後、三人で朝食をしている時のエリザさんは、凄く機嫌が良かった。
 そして食事が終わったと同時に、僕は二人に相談したい内容について説明をした。

 まず話をしたのは、スラムの子供達が迷宮に入って来たこと、そして彼らが冒険者になりたいということだった。
「それで僕はどうすればいいのか分からなくて……」
「ふむ、なるほどな。そのスラムの子供達を助けてはあげたいけど、自分ではそれが出来ないことをちゃんと理解しての相談だったんだな」
「はい、僕にはまだ何もかもが足りないですから……だけどゴロリーさんが以前“子供達なら”って言っていたのを思い出して……」
 ゴロリーさんは椅子に座ったまま腕を組み、僕の話を聞きながら目を閉じていた。

 僕は話をしても良かったのか、エリザさんを見ると困った顔をして笑っていた。

 それから暫らくして、目を開いたゴロリーさんは言った。
「クリスの頼みなら仕方ないな……そのトーマスって小僧と……冒険者のナルサスだな?」

「そのナルサスって、何処かで聞いたことがあったような……?」
「僕が冒険者ギルドに武術訓練の依頼をしに行った時の冒険者の人です」
 確かあの日はフェルに助けてもらって、初めてエリザさんと会ったんだよね……懐かしいなぁ。

「あ~そういうこと……ちょっとスラムだけの繋がりだけじゃないかも知れないわね……下手をしたら派手になるわ」
 エリザさんは楽しそうにしていたけど、ゴロリーさんはエリザさんを前に手を出して、僕の目を見た。

「まぁクリスの頼みは分かった。ただどこまで力になれるかは分からないとだけ言っておく」
「はい。……本当に無理はしないでくださいね。僕はゴロリーさんやエリザさんの方がずっと大切なんですから」
「本当にいい子に育ってくれているわ」
「……分かった。それでもう一つの相談は何だ?」
 エリザさんは笑顔になってくれたけど、ゴロリーさんは口元を隠して、もう一つの相談事を聞いてくれるみたいだ。
 でも、さすがにあの卵を食器が並ぶテーブルに出すのは、ちょっと良くない気がした。

「えっと見てもらった方が早いので、テーブルの食器を片づけてからでもいいですか?」
「ん? ああ」
 ゴロリーさんとエリザさんは、直ぐに食べ終わった食器を片づけて、テーブルまで戻って来てくれた。


 そこで僕は黒い霧を出して、あの黒い卵を【排出】させた。
「……クリス、これは何処で手に入れた?」
 ゴロリーさんは卵見るなり、直ぐに質問してきた。

「えっと、僕がいつも迷宮の入り口に入る前に待機している、建物と建物の隙間です。何だか助けてを求められているような気がして、その隙間の奥へ行ってみたら、この卵が落ちてました」
 ゴロリーさんとエリザさんは視線を合わせてから、ゴロリーが卵について説明してくれた。

「そして白い卵は食用として市場でも売買されているが、その卵のようなカラーエッグは極めて魔物の卵である可能性が高い」
「えっ? じゃあ魔物だったんですか? じゃあ割らないといけないんですか?」
 せっかく助けられたかも知れないけど……。

「いや……少なからず魔物を扱う従魔士や従魔といった存在がいるから、直ぐに殺さなくても大丈夫だ。この街ではあまり見かけないが、少しはいるしな。冒険者ギルドでも魔物の従魔登録を行っているから問題はない」
 ゴロリーさんの言葉に僕はホッと胸を撫で下ろした。
 だけど、まだゴロリーさんの話は終わっていなかった。

「それで本題はここからなんだが、この黒い卵には魔刻印が打たれていない」
「魔刻印?」
「ああ、魔物がカラーエッグを産むと、孵化するまで……殻を破るまではカラーエッグに直接魔力を送り込んで育てるんだ。魔刻印というのは、大気中にある魔力を自然に吸収させる役割があるんだが……これに魔刻印がどこにも打たれていない」
「……えっとカラーエッグに魔力を与えないと、どうなるの?」
「……次第に腐って生まれてくることない」
 不安になって聞くと、ゴロリーさんは僕に目を見て教えてくれた。

「えっ!? じゃあもう……」
「いや、臭くなってはいないし、たぶんまだ大丈夫だろう」
 ゴロリーさんの言葉に、僕は固まってしまい。

 だってそれは……
「……昨日少し臭かったから【クリーン】を掛けたんです……」

「クリス君、そんな深刻そうな顔をしなくても大丈夫よ。そのカラーエッグはまだ生きているわ。だって魔力を感じるもの」
「えっ? あ、本当だ。でも、凄く小さな魔力です」
 僕は不安になると冷静ではいられなくなってしまうみたいだ。

「う~ん、クリス君の魔力を送ってあげてみて」
「おい、エリザ」
「大丈夫よ。魔刻印もないし腐り始めていたから、捨てたってことでしょう? それに街の中にあったということは、誰かが売ったか、売ろうとして持ち込んだのは間違いないわ。カラーエッグの放置は重罪だわ」
「いや、クリスが育てることになるんだぞ? そうなったら店には入れさせてやれんのだぞ?」
「それも大丈夫よ。どういう訳かシークレットスペースに入れることが出来るんでしょう? それならそこで育てればいいじゃない」
 エリザさんとゴロリーさんが言い合いをするのは珍しいから、僕は困ってしまう。

「……クリス、どうしたい? 正直に言ってくれていいぞ」
 そこへゴロリーさんから、急に話を振られたから、正直に気持ちを伝える。

「……出来れば、このまま助けてあげたいです」
「そうか……だが、いずれその魔物が大きくなった時、手に負えない魔物だった場合は……殺さなくてはいけなくなる可能性もあるが、それでもか?」
「……はい」
 色々な言葉が頭に浮かんだけど、僕は返事をすることしか出来なかった。

「はぁ~まぁいいだろう。……当然だが、このことは誰にも秘密だぞ。それと色々とルールを作るから、それを守るように」
「はい」
「良かったわね。じゃあ早速魔力をあげてみましょうか」
「はい」
 こうして僕は黒い卵に魔力をあげながら、ゴロリーさんとエリザさんとても感謝するのだった。
お読みいただきありがとう御座います。
当分は卵のままいきますw
i261163
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