剣神-ブレイドマスター-(7/82)PDFで表示縦書き表示RDF


剣神-ブレイドマスター-
作:刹那



6:回想拒否


 あれから七、八分ほど歩くと、繁華街に出た。そこはさっきまでの静寂が嘘のように、人々の喧騒に包まれていた。

 しかし、ここに来たはいいのだが、どこに行けばいいかが問題だった。なにせ圭は深雪以外の女性経験は皆無。しかもその深雪とさえ、まともに繁華街を歩き回ったことはない。一応優希は女の子なわけで、気の利いた場所にでも連れていくべきなのだろうからして。

 そして圭なりに頭をひねって、

「………」

 ここにいる。

 ふたりは店内の二階にある開いていた四角いテーブルを挟んで腰をかけていた。若者や多数の人々が押し込む声を上げていて、店内に流れる滑らかなメロディと合わさり、店内は休日なだけあって賑わいみせていた。

 ふたりのテーブルの上には、ハンバーグ製造の行程をプリントしたプラスチックのお盆。その上には紙袋にくるまれたハンバーガーが数個と、ポテトのLサイズがひとつ、熱いコーヒーがふたつ乗せられていた。

(いくらなんでもこれはないだろ俺ぇっ!)

 考えに考えぬいたすえに、ファーストフード店に行き着いてしまった自分に自己嫌悪の波に襲われていた。今の今まで自分のポキャブラリーの無さをここまで恨んだことはない。

 そんな圭の心情を知ってか知らずか、優希の視線はハンバーガーに注がれていた。流石に呆れているのか……。

 ハンバーガーを指差して一言、

「……これって、なに?」

 …………はい?

「いや、なにってハンバーガーだけど……」

 現状に呆れかえってこんなことを言っているのだろうか。もしかしてハンバーガーを知らない、なんて考えが浮かぶが、いくらなんでもそれはないだろう。

 だが、嫌な予感と言うものはかなりの確率で当たるものらしい。

「ハンバーガー……ハンバーグの派生系かなにか?」

 優希は可愛らしく首を傾げる。しかも間違ってはいないのだけど、的外れな意見なのがなんとも。

「ま、まあ食べてみればわかるよ」

 訝しげに眉をひそめながら、得体の知れないものを触るように、恐る恐るハンバーガーを掴みあげる。暖かいハンバーガーの熱を包み紙越しに感じながら、包み紙を剥がす。パンズに挟まれたハンバーガーが半分だけ顔を覗かせる。

 少しの間ハンバーガーを見つめ、意を決したようにハンバーガーにかぶりついた。

 口を離して、一口一口じっくりと咀嚼する。かみ砕かれたハンバーガーが優希の喉を落ちていった。あ、と短く息をもらす。

「……美味しい」

 瞳を輝かせて告げる優希に、肩の荷が無くなるような安堵を覚えて、ほっと息をついた。

「ほら、ポテトも食えよ」

「うん」

 ポテトを手に取り、口に放り込むと、またもや優希の目が輝いた。そんな優希の反応を微笑ましげに眺めながら、圭は温まった黒い液体を嚥下する。程よい苦味が口の中に広がり、身体をほんのりと暖める。

 身を細めて優希を見て、これが父親の気分なのだろうか、と思ったところで、冷たいものが圭の中に落ちた。

 ──なにが父親だ。

 ギリッと音を立てるほど奥歯を噛み締める。

 そんな圭の様子には気づかず、優希は美味しそうにハンバーガーを頬張っていた。


今回は短いですが、七話がそのぶん長いので心配はいりません。してない人はすいません。

なんだか、優希がボケキャラになっていってます。これは危ない。まあツッコミよりボケよりなのは仕様ですが。なんだこの劣化セイバー。

毎度のように圭の両親について臭わせていますが、少々わざとらし過ぎますね(汗)反省……。











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