序章
一発の雷鳴と共に雨が降り出した。
停電によって暗闇だった室内に稲光が差す。と、苦しんでいる一人の少年の様子が浮かび上がった。
骨が焼け、心臓が大きく波打つ。尋常で無い痛みに思考が停止し、意識が遠のくのが自分でも生々しく感じられた。
コナンはこの痛みを以前にも何度か体験している。
戻るんだ……
朦朧とする意識の中でコナンは静かにそう確信した。
冗談じゃねえ。
震える自分の手を隣で握ってくれている小さな温もり。心配そうに覗き込む、幼馴染み。
確かに”工藤新一”に戻れるのは願ってもないことだ。この日をどれほど待ち焦がれていたことか。だが、完全に戻れる保証は無い。いつまた”コナン”になるか分からないのだ。
「………ら……ん…」
だから絶対に…絶対に、バレる訳にはいかねえんだよ。
そんな思いを嘲笑うかのように、未発達だった体は急激に成長していく。痛みも最高潮に達した。そして。
どくんっ……、と大きく体が揺れて、コナンは落ち着きを取り戻していった。
「コナン君……?」
真っ暗な中、荒い息づかいが響き渡る。
「コナン君、大丈夫? やっぱり病院に行った方が───」
横たわる体を手探りで触った蘭は、ハッと手を引っ込めた。そこには、さっきまでの小さな少年の姿は無い。代わりにあったのは立派な男の体だった。
こんな事ってあり得るのだろうか。それよりも、コナンはどこへ行ってしまったのか。
訳が分からず、困惑する。
再度、雷鳴が響く。部屋の中が一瞬明るくなった。けれど、それによって浮かび上がったのは、風邪気味の小学生では無かった。
コナンが居た筈の場所に横たわった人物。乱れてはいるが、その顔を見間違うわけがない。小さい頃からずっと一緒だった。けれど、最近は見たくても見られなかったその顔が、今、目の前にある。
まさか…そんな……
「新一……」
何か冷たいものが蘭の頬を伝った。
話の始まりは、この日の蒸し返るような暑い午後へと遡る。
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