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第一話 夢色魔殺し
 第一話 夜闇、来る



 しばらくして、屋敷一階に存在する来客用室に、先程ベッド上にいた青年の男が一人と、同じくそこにいた女性が四名、ぞろぞろと入室してきた。

皆、今度はちゃんと衣服を身に付けている。女性達は、部屋の壁ぎわに一列に並び待機させ、青年は客である中年の男と向かい合うかたちで席に着き、言った。

 「ゴホン・・・え〜、先程は失礼しました。私がイーザラントです。本日はどう言ったご用件でしょうか。」

 中年の男のゴミを見る様な視線にも負けずに、イーザラントは言った。

 「・・・私は地元で新聞記者をやっているギャンディットと言う者なのですが・・・ご存じですか?Oタイムズは。」

「すみません、ウチは新聞は取ってないんですよ。」

 「取っても読まないしねぇ〜。」
 今喋ったのは、ベッド上でイーザラントの上に乗って腰を・・・腰を使っていた女だ。

 「ま、まあそれはともかく、ギャンディットさん、新聞記者って事はもしや、今被害者続出中の吸精鬼の奴では?」

 「!!・・・よくご存じで・・・。その通りです。私の友人のJ・ソンとフレ・Dと言うのが、今回の吸精鬼事件は殺人ではないかと言って、それを証明する為に出てから一週間、一切の連絡が取れなくなってしまいました。

・・・私は今回の事件は、人がやったものとは到底思えません。

だって、人がカラッカラのミイラみたいになって発見されているんですよ?

だからもしかしたら、J・ソンとフレ・Dはもう・・・ですから、二人をどうか救い出して欲しいのです。お願いします。」

 「報酬は?」

 深々と頭を下げた男に対し、目の前の男、イーザラント・ダスト・カナートゥスは即座に言った。

ただの事件なら、断ってやろうかと思っていたが、吸精鬼絡みとなれば話は別だ。

恐らく敵はもう何度も体験している、あの手の敵だろうから。

 “ねぇイーザちゃん、受けるの?コレ。”

 腰使ってた女がイーザに耳打ちする。

 “ああ。例の手でな。”

 “え、アレを、ですか。好きですね、イーザさんも。”

 等と小言で話していると、置いてきぼりにされたギャンディットが口を開いた。

 「あの・・・よろしいでしょうか?報酬の話ですが・・・。」

 そうだった。イーザは手で続けて、と合図する。

 「えーっと・・・これだけしか用意出来ませんでしたが、よろしいでしょうか?」

 下手な雑誌より厚い札束を、男は申し訳なさそうに差し出した。

それを見たイーザと、周りの女達は顔色を変え、満面の笑みと高らかな声をもって、

 「任せて下さい!!」

 と言い、早速準備を始めてしまっていた。



 「マスターイーザ・・・この依頼と依頼主には、不自然な点が多々あります。」

 目的地へと移動中、口を開いたのは、初め客の対応に出た、エリスという、外見は16・7の少女だ。

冷静沈着、無表情とは言わないまでも、変化に乏しい顔、軽い足どり、そして青色の髪と目がさらに落ち着いたイメージを漂わせる。

イーザは、一人では少々不安でもあり、気になる事があったので彼女を連れて来たのだ。

 「それには俺も気づいてるさ。あいつは、友人を救ってくれと言ったからな。もう友人がどうにかなってるって言ってる様なもんだ。・・・とかだろ?」

 「理解されている上での行動でしたら、これ以上は言いません。」

 エリスが言う様に、確かに妙な点はいくつかある。だが、生活費は必要だし、金はやはり多くあるに越した事はない。

例え、依頼が危険なものでもだ。

「大丈夫、いざとなったらお前の本気を見せてもらうから。」

 「分かりました。・・・いざとなったら・・・。」

 いざとなったら、の部分には少々、人ならざる者の空気があったが、イーザは気に留めず歩いていく。

やがて、二人の眼前には建造途中で放棄された家屋が現れる。

街の郊外に存在する為、人は滅多に近づかない。

 「で、そのブレンディとエジソンってのは、ここに行ったきりって訳か。」

 「フレ・DとJ・ソンです。それでは発明家と・・・。」

 「分かってる。わざだよ。」

 そう言い、早速イーザは入口の扉を開ける。

この建造物、建設途中とは言え二階はほぼ完成し、一階はまだ骨組みの鉄骨が所々顔を覗かせているものの、素人目には八割方完成している様に見える。

何故、ここまでやっておいて放置しているのか、理解不能だ。

 「マスターイーザ、何者かが侵入した形跡があります。」

 「しかも、つい最近か。」

 床には一面にホコリが積もっている。だか、入口とその周辺には何かを引き摺った様な跡、そして複数の足跡が見てとれた。

 イーザとエリスは、懐中電灯の灯りを頼りに跡を追って奥へと進む。

やがて何かが、二人の目についた。近づき見るとそれは二人の人間であり、ともに仰向けに倒れていた。

 「こいつらは・・・フレ・DとJ・ソンだろ。・・・死んでるな。」

 倒れている二人は、ともに身長がニメートルを超えており、片方は顔をマスクで覆っていて、もう片方の顔はひどい火傷か何かで、ケロイド状になっていた。

そして付近にはバターナイフらしきものやチェーンソーが転がっていた。

(この二人、犯人殺す気だったんじゃ・・・。)

 13日のどうたらや、なんたらの悪夢とかの異名をもってそうなこの二人の死因は、よく分からない。

何故なら、外傷があまりに多いからだ。目で見てはっきり分かるだけでも、刺し傷に弾痕、殴打跡に切り傷、毒針等々。

 (なかなか死なんかったんだな。)

 と、イーザは思った。

 「マスターイーザ、これは明らかに吸精鬼絡みではありません。」

 「そうだな。これは殺人事件だろう。」

 さて、どうしようかねといろいろ考えを巡らせていた、その時だった。

 「あんたら、ここに何か用?」

 と、女の声が建物内に反響したのは。二人が声のした方を見上げると、二階部分へと通じる剥き出しの階段の上、フロアーに女が一人立っていた。

懐中電灯に照らされ、その相手がエリスと同じくらいの年頃というのが分かる。

赤色のショートヘアーに、深紅の瞳をもつ少女だった。

ただ、普通でないのは、大胆に肌を露出させた格好と、頭に二本生えている角、そして背中には巨大な、コウモリを彷彿とさせる翼がある所だ。

 (マスターイーザ、奴は・・・。)

 (ああ。)

 「あんたらさぁ、もしかして私をやっつけに来たとか?」

女の言葉に、エリスが前へ一歩進み、相手の深紅の瞳を睨み付け、体から闘気を発し全力で威圧する。

質量が存在する殺気は、周りの空気を一気にざらつかせ、呼吸を少々重くした。

 「ふーん・・・あんた、なかなか出来そうね。」

 女も負けじとオーラを身に纏い対抗する。だが、

 (うあっ、なっ、何?こいつ・・・。)

 押し負けている事にすぐ気付く。

肌がヤバイ相手だと言っている。勝てないかもしれないとさえ、女は思った。

 “おいエリス。殺さず取り押さえてくれないか?”

 “何故です?”

 “ちょっと気になる事があってな。”

 “マスターイーザがそう言うのでしたら。”

 「スキありぃ!!」

 イーザとエリスがひそひそ話をしている間に、女は二人目掛け巨大な火球を放った。

だが二人は至って普通に会話を続けている。

 「マスターイーザ、よろしいですね。」

 「ああ、頼むぞ。」

 「今夜は眠れなさそうです。」

 「オイッ!!」

 次の瞬間、着弾したと思われた火球が消滅する。

 「・・・?・・・!!」

消滅した火球の先、そこに存在していたのは、角と黒色の立派な翼を生やし、胸部と腰部を僅かに隠した服?を身に付けた姿に変化したエリスだった。

 「ハァァァァァァ・・・。」

 彼女の全身から、圧倒的な魔力がほとばしる。それは衝撃波となって大気を震わせ、ホコリを舞い上げた。

 「ぐっ、まさか・・・。」

 思わず女は目を閉じてしまい、それがそのまま敗因となった。

エリスは女の視界から一瞬の内に消え失せ、気付けば彼女を背後から拘束していた。

 “おとなしくして下さい。でないと、貴方を無理矢理黙らせるしかありませんので。”

 耳元でそっと囁くエリスに、女は得体の知れない何かを感じたのか、おとなしくなった。

 「では、マスターイーザ、どうぞ。」

 「おう、おいお前。」

 「私にはルシア・リヴェントンって名前がっ・・・あります・・・ハイ。」

 強気な発言が、背後からの魔力の高まりを感じたせいで、後半部分が消え失せそうになってしまった。

 「よし分かった。ルシア、お前か、ここ何日かの吸精鬼事件の犯人は。」

 「え〜っと、うん。報道されてるの半分は私だけど・・・もう半分は分かんない。」

 「そうか。で、ここでくたばってる二人については?」

 「そいつら、私がここに住み始めてからちょっとして・・・なんかいつの間にかそこに・・・って、本当だって・・・私殺ってないから・・・ウソじゃないからイチイチ殺意剥き出すのヤメテー!!」

 「マスターイーザ、どうやら本当のようです。」

 「いや、まあこいつのせいじゃねぇってのは分かってるんだが。」

 とりあえず確認事項はなくなったので、ルシアを解放し三人は円になって今後の事について、相談を開始した。

 「じゃあルシアは死体からも精気吸っていたって事だな。」

 「うん。あんま腐ってない死体からなら少しとはいっても間接的に吸えるでしょ。」

 「可哀想に。私達は毎晩直接的に吸い放題なのですが。」

 エリスの発言に、ルシアが突如、目を輝かせ喰いついてきた。

 「マジで?そんな事が出来るの?教えて教え・・・すいません、どうか教えて下さい。」

 「エリス。イチイチ威圧してやるな。」

 「分かりました。」

 ちなみに、親切な補足だが、間接的に吸うとは弱っている相手に直接手を触れる事なく生命エネルギーに当たるものを得る事で、サキュバスのみならず、悪魔等にとっては基本中の基本といえる、人でいうメシを食うぐらいの感覚だ。

 続けて直接的に吸うについてだが、これはぶっちゃけた言い方をすれば、

 1・色仕掛け等の手段を用いて男を誘惑します。

 2・ホテル

 3・×××

 4・精吸収完了

 という流れである。つまり、イーザがギャンディット来客時に行なっていた行為はエネルギーの供給。

すなわち、彼の屋敷の手伝いの女は全て吸精気か何かなのである。

 そして、イーザ自身はある能力のおかげで彼女達の補給役という、極楽(最悪?)な仕事をしているのである。

その能力とは、

 「無限精力です。」

 すっかり服が元通りになったエリスは、事もなげに言った。

 「無限精力?」

 「ええ、つまり何度私達の〇〇〇に×××しようが、マスターイーザの不屈の△△△はちっとも平気な訳で、毎晩マスターイーザの部屋では☆☆パーティーが*れており、私達は今夜♂♂♂程♀します。」

 卑猥な単語が自主規制つきで飛び交う。

 「ふーん。雑音多くてよく聞こえなかったけど・・・何となく分かった。」

 「今ので分かったか?」

 イーザはツッコミと同時に、話が大きく逸脱してきた事に気付く。

 「ま、まあいい。とりあえず依頼主様に連絡取ろう。たしか、番号は・・・っと。」

 携帯に依頼主であるギャンディットの番号をプッシュした。

だが数秒後、返ってきた言葉は“電波の届かない場所にあるか電源が入っていません”だった。

 「ったく、電源ぐらい入れとけっての。」

 「でしたら、ギャンディットさんの職場へ連絡してみればよろしいかと。」

 そう言い、エリスはイーザから携帯を受け取ると、自宅に掛けた。

 「もしもし、エリスです。リリスさんですか?電話帳をお願いしたいのですが、職業別のやつです。・・・はい・・・ええ、郊外の・・・はい、建てかけの・・・はい、お願いしま・・・え?・・・はい、はい伝えておきます。はい。」

 ピッ、パチン。

 「マスターイーザ、リリスさんが“今夜はたっぷりねぇ〜。”だそうです。」

 「マジか・・・。」

 と、言っているうちに、電話帳がふっ、と宙に出現した。ただ、出現場所が悪かった。

 「いだぁ!!」

 「うぉあ、ビビったぁ!!」

 分厚い電話帳が、イーザの頭にクリーンヒットした。

しかも角がだ。このため彼は頭を押えしばらく悶えていたが、やがて顔を怒りで歪ませ、

 「リリスめ・・・覚えてろ・・・泣くまで犯ってやる・・・。」

 とだけ漏らし、すぐ電話先を調べ再びかけた。今度は数回のコール後、男が対応に出て来る。

 「あ、私イーザラントと申す者なのですが、記者のギャンディットさんをお願いします。・・・あ?いない?それは確かですか?・・・はい・・・はぁ、そうですか、お手数をおかけしまして申し訳ありません。はい。」

 携帯を閉じ、怪訝顔をしたイーザが、

 「どういう事だ?」

 と言った。彼が仕事をしていると言った職場に、ギャンディットの形跡は一切無いという事になる。

 「マスターイーザ、やはりそのギャンディットという男は・・・。」

 「ご察しの通りだ。」

 野太い声が辺りに響き渡る。

振り返ると、黒いコートに身を包んだ男が一人、天窓から射し込む陽光に照らされ立っていた。

その男、間違いなく依頼主のギャンディットであった。

 「や、やはり、お前の仕業だったか。」

イーザが言った。ギャンディットはその言葉待ってましたと言わんばかりに両手を広げ、空を仰ぎ、ど派手な高笑いをしながら

 「ククク、そうさ・・・私があの二人を殺った。こいつらは私の部下でね、よく言う事を聞いてくれたよ。だが、私に歯向かいさえしなければ、生きていられたのだがね。」

(え、そうなの!?)

 「だが失敗だったのは呼び出した場所に悪魔が棲んでいた事だ。」

 (そういや、こいつら脅かしてたわ。)

 「どんな化け物かと思ってお前らに依頼したが、まさか正体がこんな子娘とはね。」

 (よかったですね、犯人がお喋りで。)

 「腕利きの君達にわざわざ悪魔退治を頼む必要はもう、無さそうだ。」

 彼は入口の方を振り返り“おい”と言った。すると、入口部分からぞろぞろと見るからにガラの悪い男達が入ってくる。

数にして三十ぐらいか、筋肉お化けに武器持ちに、様々なタイプがいる。だが、イーザ一行はいたって普通に会話を続けていた。

 “犯人が分かったし、あとは報酬だが・・・”

 “いいじゃんそんなの。それより、こいつらどうにかしないとヤバイんじゃ・・・。”

 “いや、そこは別にどうでも・・・。”

 「貴様ら、さっきからこそこそと逃げる方法でも相談しているのか?」

 敵の言葉に話を止め、イーザが力強く一歩前進し、返答した。

 「逃げるのはお前らの方だろ。」

 「なんだと?」

 「悪の親玉ギャンディット!!有り金全部置いて逃げるなら許してやろう。だが、あくまで俺達に危害を加えるというのなら、痛い目にあってもらう。」

 シーンと辺りを静寂が包む。そして笑い声。誇らしく立っているイーザが、さらに彼らの笑い器官に油を注ぐ。

 「ハハハハハ・・・おいおいイーザ君、それは私達側の台詞だと思わないか?いいだろう・・・やれぃ!!」

 ギャンディットの合図に男達は一斉に動き出す。

 「エリス、本気だ。ただし一人も殺すな。」

 「分かりました。・・・今夜はますます、眠れなさそうですね。」

 「コラッ!!」

 その瞬間、建物内に嵐ともいうべき魔力の濁点が吹き抜ける。

ホコリが舞上がり屋根は軋み、男達は目を閉じ嵐に抗う。

やがて、魔力風が終息し、目を開くとエリスが圧倒的なオーラを共にそこに立っていた。

 男達を始め、ギャンディットの体は、彼女を見るたび震え動かなくなっていった。

 「ま、さ・・・か、貴様も・・・。」

 敵の台詞には耳を貸さず、エリスは背中の翼を広げ一瞬で天井近くまで上昇し、身の丈はあろうかという槍を出現させ急降下。

 「アースバニッシャー。」

 槍先が床に触れた時、爆音と共に魔力が膨張し床を、男達と一緒に吹き飛ばした。

 その一撃で、我に還った彼らは、悲鳴と怒号をあげ出口を目指し一斉に走り始める。恐怖と絶望が破裂してしまったから。


 建物の出口まで、あと少しという所だった。

 「どちらへ?」

 唯一の光道は漆黒の夜闇に掻き消された。

 「ヒィッ・・・。」

 出口手前、そこには既に攻撃準備を終えたエリスがいた。

 「スピア・テンペスト・・・。」

 男達の列中を神速で通過し、彼らに背を向けたエリスが言った。

 「失礼、殺すなとの事ですので。」

 台詞後、男達はバタバタと倒れた。よく見ると頭には大きなタンコブ。気絶させただけらしい。


 (ぐっ・・・せめて・・・。)

 だが、彼女の攻撃から奇跡的に逃れた者が一人。

ギャンディットだ。

彼は倒れたフリをして懐から拳銃を取り出すと、あの男の頭部に狙いを定める。

イーザにだ。

 (くたばれ!!)

 放たれた銃弾。それはイーザの頭を貫き命を奪うはずであった。

だがギャンディットの狙った展開が訪れる事はなかった。

何故なら、イーザの手前にはルシアが立ちはだかり、二枚の翼を前方に重ね銃弾を受け止めていたからだ。

 あわや貫通、である。

 「なっ・・・。」

 「痛ぁ〜、先にやったのそっちだからね。」

 羽を戻すと彼女の両手に魔力が収束し、オレンジ色の光に。やがて一つの火球となった。

 「プロミネンス・アズヴァーン!!(最小)」

 「N○ぉぉぉぉぉぉ〜!!」

 ギャンディット目がけ放たれた火球は彼に直撃し、燃え盛った。

出力が低かった為、服と髪をほどよく全焼させるに留まったが。

 こうして、気絶三十二人と半焼け一人が後に残った。

 「はぁ〜っ、しかし危なかった・・・あんがとなルシア。おかげで助かったよ。」

 「いやいや、礼はいいよ。その代わり・・・その・・・私もあんた達の仲間にしてくれない?」

 「ん?別にいいぞ。」

 「マスターイーザ!?こんな得体も知れない奴を・・・。」

 「いいじゃないか、悪い奴じゃねぇって。」

 「そう言われると照れるなぁ・・・。」

 「・・・マスターイーザがそう言うのでしたら。」

 「ところでさぁ・・・。」

 死体の様にピクリとも動かない男達の方を見てルシアが言う。

 「こいつらの精吸っていい?しばらくまともにありつけてなくて。」

 「そうだな。・・・よし、ついでに全員集合だ!!」

 それからすぐ、四名の女が突然現れる。物質転送能力を使用し、現れたのだ。

 その四名をみとめたイーザは、

 「よしお前ら、こいつらから吸っていいぞ。」

 と言った。

 「本当?まあでも今夜の事、忘れないでねぇ、イーザちゃん。」

 「もう、欲張り過ぎよ姉さん。」

 先陣を切ったのはリリス、リリムのサーキュリス姉妹。物質転送は姉、リリスの十八番だ。

 
 「え・・・私は・・・遠慮・・・しま・・す・・・。」

 ボソボソ喋っているのは一見十二、三才ぐらいにも見える、ダークブラウンのボサボサ髪にぶかぶかのコート、そして眼鏡がトレードマークのメイル・アルバンレスト。

 「まあまあメイルさん、滅多にない機会ですし、よろしいではありませんか。」

 そう言い、ニコニコしているのは、おっとりなお姉さんを絵に描いた様なマリア・フローネ。

 その後は彼女らにとって、バイキングタイムも同然だった。

 「どれからいく?姉さん。」

 「そおねぇ〜、あの辺りのから行こうかしら。」

 「ルシア、吸いま〜す。」

 「じ・・・じゃあ・・・後は・・・お願い・・・・・・・いよっしゃあー、ガンガン吸うでぇー!!」

 「フン・・・。」

 「エリスさん、そんな間接的に吸わなくても直接吸われては・・・。」

 「こんな連中、これで上等です。」

 こうして、吸精タイムは陽が傾くまで続けられ、さらに数時間後、その建物内において三十三人の男が極度の衰弱状態で発見された事から、吸精鬼事件はますます有名になってしまった。

 新聞、テレビでは連日、吸精鬼の話題で持ちきりであり、人々は騒ぎ立てていた。

 だがイーザは、その吸精鬼達の相手で今夜もへとへとになっていた。
 お読み頂いた方に、最上級の感謝を致します。


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