第九話 ウィッチ 4
第九話 ウィッチ4
もう、槍は眼前にまで迫っていた。
リリスは遂に、無の道を一歩踏み出し、続けて二歩目を踏み出そうとした時だった。
「・・・・・・け・・・な・・・。」
突然に、不意に、声が聞こえた。誰だろう?もう、手足が動かない。
「・・・ざけ・・・な・・・。」
少し、うっすらと、声の主が見えた。誰だろう?何故、怒ってるのだろう。
「ふざけ・・・な・・・。」
この男は・・・そうだ、彼だ。
「ふざけんなぁ!!」
ハッキリ、聞こえた。本人の、生の声がっ!!
「イー・・・ザちゃん?」
・
「ふざけんなぁ!!しっかりしやがれ!!」
「姉さん、しっかり!!」
光の槍の射線から、イーザがリリスを抱え、脱出していた。虫の羽音の様な声で、リリスが言う。
「イーザちゃん、リリム・・・間に合ってるよ・・・ギリギリ・・・セーフ・・・。」
「当たり前だ。・・・いよっし、リリスぅ、疲れたろ?後は任せとけ。帰ったらタップリ、ヤってやるからよ。」
「・・・もっと・・・気の効いたこと・・・言えない?・・・ま・・・いいや・・・少し、休む・・・ね・・・。」
そう言い、彼女は眠った。リリムが、彼女を運ぶ。
「さてと、待たせたな嬢ちゃん。この、イーザが相手してやる。」
「ホッホッ・・・たかだか、ヒトの枠を出ない者一人が、ワシの相手をするというのか?
力の差が、まだ分からぬようじゃな、イーザ?」
「分かってるから言ってんだよ!!
お前を犯して屈服させる!!」
相手を指示し、彼は宣言する。
ウィッチはそれを、嘲笑し返答する。
「犯れるものなら、犯ってみるがいい。」
と。
次の言葉は、もう無かった。ウィッチの手より、水球が発せられると同時、イーザもまた、空間より、黒のアルカヘスト、腰より、銀のメルカバーと、二丁のハンドガンを抜き、放つ。
水球は、アルカヘストより発射された魔弾が相殺。メルカバーよりの弾丸は、ウィッチの手前で跳弾する。
「両方、魔銃かと思ったよ。」
「なあに、予算不足でなぁ!!」
息付く暇なく火球、風球、光球が飛来。
だが、無限精力を解放したイーザは、いずれも回避し、来る。
イーザは銃をしまい、間合いを詰めつつ、何もない場所から、身の丈3分の2程の剣を抜いた。
刃のこぼれた、無名の剣は、空気をかきわけ、ウィッチへと喰らいつく。
「甘いわ。」
物理攻撃を無力化する領域が、剣の動きを止める。しかし、しかしだ、
「!!?」
ウィッチは咄嗟に、後方へと飛び退く。
一瞬、金色に煌めいた刃は、いとも簡単に、領域を切り裂いてしまったのだ。
「なっ、何なのじゃ、その剣はぁ!!」
「こいつぁ、ただの拾い物だ。」
ウィッチは接近戦不利と考え、続く斬撃を回避、一気に距離を取る。
「えぇい、ソート・レイ。」
「甘い・・・ってなぁ!!」
ソート・レイに対し、剣を一閃。すると、一筋の光線は二つに分かれ、彼に触れる事はなかった。
(本当に何じゃ、あの剣は・・・。)
「喰らえぇぇぇー!!」
再度、二丁の銃に持ちかえ、発砲。手に伝わる反動が心地よく響く。
「クッ・・・。」
領域を切り裂かれた今、再構築は間に合わない。魔力を無理矢理削って、弾丸を停止させるより無かった。
(ちいっ・・・止まれ、止まれぇぃ!!)
魔力の残りも少なく、なかなか弾は停止しない。気を抜けば、それは元の速度に戻り、一瞬でこの身体を貫くだろう。
ダンッ、ダンッ・・・と、計十二発がウィッチを襲う。
「かぁぁあぁぁー!!」
結局、弾は止まらなかった。軌道を、逸らすのが精一杯だったのだ。
「ハァ・・・ハァ・・・ま、魔力が尽きる・・・。イッ、イーザァァァァー、もう一度、精をヨコセェェェェー!!」
再びイーザに対し、束縛の紋様が発動する。だが、消えかけた魔力で作られたそれでは、今のイーザを捕らえる事は、
「この程度じゃ俺は・・・。」
出来なかった。
「止まらんぜ!!」
紋様を引きちぎり、そのままイーザは、動けなくなったウィッチの喉元に、剣を突き付けた。
「終わろうや・・・。」
「・・・ワシの・・・負けかい・・・。」
ウィッチはとうとう、参ったとばかりに頭を垂れる。
「いよぉ〜し・・・では、お仕置きの時間だ。覚悟はいいかぁ!!」
「え?」
(あっ、ウィッチが元婆さんって事、忘れさせてたんだった。)
「いりゃあぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
こうして、制裁は二時間超にも及んだ。
・
「・・・・・・すん・・・すん・・・。」
夕日の眩しい帰り道。
運転席にて、イーザは泣いていた。涙と声が、大げさだった。
“ねぇ、リリム、何でイーザちゃん泣いてんの?”
“・・・記憶が戻ったからでしょ。”
“・・・ああ、成程。”
「イーザよ、何を泣いておるんじゃ?」
“ウィッチ居るし。”
“何で着いて来たんだろうね・・・。”
助手席には、黒いローブの少女、ウィッチがいた。
「うるさいっ・・・俺は、取り返しのつかない事を・・・・・・すん・・・すん・・・。」
“・・・・・・。”
“・・・・・・。”
「何がじゃ?ワシはもう、ピッチピチの16じゃぞ?」
「元はババアだろうがぁ〜!!」
夕日の眩しい帰り道。
新たな仲間を一人加え、彼女らは帰路についた。
ようやく、ウィッチ編終わりましたぁ。長かった・・・。 さて、ここまで読まれた方、ありがとうございます。 引き続き、頑張りますので、よろしくお願いします。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。