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青空と白月の下に
作:海裡



00:Side-adult


奴等は、本当に独立なぞする気なのだろうか。

アフターバーナを焚くイーグルがカタカタと音を立てて振動する。
さながら武者震いといったところか。
この機体は愛機、と言いたいところだが自衛隊は機体をパイロットには付けていない。
整備員は機体につくのだが。
その点少しあっちがうらやましい。

『ヘカート!助けてくれ』

さっきの味方の通信が頭をよぎる。
軽く舌打ち。
僚機はさっき敵のF-4EJファントムのAAM-3に喰われた。
機体を少し上昇させる。
12時の方向、遠方、下方に敵がいる筈だ。
E-2CホークアイのデータリンクはE-767程ではないがずいぶん広い。
さすがに4機しかないE-767をここに飛ばす余裕は無い。
この世にたった一機の、空中給油機KC-767とE-2C数機こそ向こうに取られたものの、それだけだ。
…見えた。
「Clan01敵機発見タリホー
E-2Cに少々近いなと思いつつも、機体を徐々に下げる。
敵を視界に納め機速を増す。
あの独特の可変翼とノーズの長い鋭いシルエット、TornadoADVトーネードであろう。
一機…いや二機編隊。影に隠れている一機がこちらに攻撃を加える気か。
その予想は、裏切られた。
見えていた側、編隊長機らしき機体がこっちをロックオン。
煩い警報が響く。
白い軌跡が敵機から曳かれる。
確実性を欠く距離、体勢からの射出。
通常は行わない。それゆえに意表をつく一撃。
とっさにフレアをばら撒き、Gをかけて機体を引き起こす。ロールする。
アフターバーナーはとっくに切っている。
相手の狙いにとっさに頭がついていかず、とりあえず目の前のトーネードを落とすのに集中する。
何か棒のようなものが遥か右を駆け上るのが確かに見えた。
警報が消え、機体を反転させる。
ヘッドオン。
それを嫌い敵が頭を振る。だがそのがら空きな背中が見える。
AAM-3ミサイルを放つにも近く、機銃は届きこそすれ、当たらないであろう距離。
スピードに任せ機体を近づける。
性能は、F-15Jイーグルの方が上だ。
今は、スピードも、高度も。
来た。撃てる。敵が左右に機体を振る。
スピードが落ちる。下に逃げたのはトーネードの低空飛行能力を活かそうという気か。
「FOX3」
短く、トリガーを引く。
20mmがさながら獣のような唸りを上げる。
曳光弾が青い空に引かれる。
空中戦で真っ直ぐしか撃てない機銃は、そう。制服の階級章の、縫い目に針を入れるように難しい。
まだ空士だった時代のことを思い出して、場違いにも、少し笑った。
制服の階級章の縫いつけには、毎度苦労したものだ。
今は肩の金属だから楽なものである。
機銃はわずかに逸れ、敵を追い越さないようにハイGヨーヨーをかける。
わずかに再び機銃を放つ。
何かデータリンクに表示されたようだがそれどころではない。
1秒立つまではガトリングはその回転を安定させない。だが、パイロットのトリガは平均0,5秒だ。
ようやく機銃はその牙を敵にたてる。
トーネードの翼やエンジン、胴体がぐちゃぐちゃにかき回される。
機体を一気に引き上げる。
「Splash!」
脱出する隙も無く、敵は空中分解しただろう。
データリンクが再度音を立てる。
一つ前のは―敵機接近援護されたし
今のは―E-2C被撃墜 撤収されたし

やられた。

そういえば敵の僚機が見当たらなかった。
そもそもさっきの奴は死ぬ気だったというわけか。


奴等は理想を追いすぎだ。
自分の命以上に重要なものなど無い筈なのに。
生きたくても、生きれない者はいるのに。
一つ、己の膝を叩いて、機を翻す。

やられた。完敗だ。












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