あの隔絶された空間の中で、悲劇は急に起こった。
何が成り行きでこうなったのかは分からない。
とあるバーの奧。そこに来い、とメールがあった。
差出人は分からない。返事は返せない。
どうなっているんだと思わない方が可笑しい。
そこにはオレを含めた10人がいた。正面・・・といってもどこだか解らないが、スクリーンがあって、そこに命令が掲示される。透明なボックスで、完全な密室空間。黙っていたって死にそうになる。
そのボックスは全部で5つが横に並んでいる。つまり、そのボックスのある空間には50人の人がいる。
これから何が起こるのかは知ったこっちゃない。早く出たくてイライラしていると、スクリーンに命令がでた。
「1分以内に周りの敵を殲滅せよ。」
は・・・?オレはスクリーンを見ながら周りを見た。みんな動揺していたが、一人が近くの敵を殴り倒すと、みんなが逆上したように殴ったり蹴ったりし始めた。オレはどうして良いか解らなかった。だって犯罪だろ?普通に考えて殺人罪に問われるような事をここで、この目の前でしているのだから、驚くのも無理はない。
「うわぁぁぁぁぁつ!!!」
ガキィン!と音がして、脇に金属バットが振り下ろされた。目が正常じゃない・・・。
「ふっざけるなよっ!!!オラァッ!!」
オレはみぞおちに蹴りを入れると、やっぱり周りを見た。もうほとんど残っていない。オレと、最初に逆上しはじめた男だけだった。
「死ねっ!!!!」
あと5秒を切った。オレは側に落ちていた金属バットを不意に拾い上げると、そいつの頭に思いっ切り振り落とした。
バキッと頭蓋骨の割れる音がした。
オレがあんまり狙われなかったのは幸運だったが、50人のなかから昇ってくるのはオレを含めた5人。オレはちょっとドキドキした。
ボックスのちょうど正面に階段が現れた。だが、上り階段じゃない。下が見えないぐらい深い階段が見えた。かなり怖い・・・オレは足がおぼつかない状態で一段下りてみた。
すると、風が吹き抜けていく音が聞こえた。その音と同時に「ゴゴゴゴ・・・・」と地を這うような音も聞こえる。オレが振り返ってみると、ボックスは大変なことになっていた。
「たっ助けてくれぇぇぇっ!!!ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・。」
まだ息をしていた人間が、上から迫ってくる壁につぶされていく。グシャッと音がしてやがて何も聞こえなくなった。ただ、近くに手を伸ばした誰かの血が顔に飛んだぐらいで、オレは動揺せずに下を目指した。
引き返す事なんて出来ない。
引き込まれるように、足が階段にへばりつくようにオレは下へ下りていた。頭の中では何を考えているのやら、オレは生きて帰ることが出来るんだろうか?なんて、どのぐらいの余裕があるんだよと自分と自分だけで会話をする。
明るい光は見えない。それでも足は止まらない。目も冴えない。何も見えない。正直いうと怖い。オレはきっと生きては変えられないんだろうなぁ・・・・。やりたいことも出来ずに、18年の生涯を終える。何となく悲しくて、何となく嬉しかった。
階段がなくなると同時に、広くて真っ黒な床のフロアに出た。
真ん中をライトが照らしているだけで、前に誰がいるのか、隣は誰なのか解らない。
オレは何故かワクワクして、体中に電気が走ったようになった。何が起こるんだ?もしかしてまた、あんな事に・・・・。
すると、中央モニターに表示が出た。
「1時間以内に出口を探せ。空気の密度は時間が経過する事に薄くなる。」
オレは不敵に笑うと、モニターの方へ歩み出た。
他にも4人いて、それぞれが返り血を浴びていたり、傷だらけだったりしている。オレだけが無傷。誇らしくて、顔が引きつった。
「オレが勝者だ。」
そう呟いて微笑むと、オレは手にした金属バットを振りかざした。
「アハハハハハッ!!!!オレが勝者だ!!その他は死ねっ!!!」
狂ったように笑いながら、オレは転がる死体を蹴り飛ばして遊んだ。
それは人間の生と死を知らない子供の様に無邪気で、闇に生まれ育った殺人鬼のように無惨で冷酷だった。
「お前が勝者だ。」
「あぁ、そうだ。」
「このゲームは楽しかったか?」
「あぁ、楽しかったよ。」
「そうか・・・・・・・最後のクイズの答えはお解りかな?」
「お前が出してくれるんじゃないのか。」
その声は腹を抱えて笑うようにゲラゲラ笑った。
「何がおかしい。」
「出口などない。お前はここで死ぬのだよ。」
「・・・・ふざけるなよ。」
「ふざけてなどいるものか。お前は死ぬ。ここで永遠に太陽を見ることも出来ずに・・・な。」
出口のないゲーム。
この絶対恐怖に堪えられるだろうか。
50人から5人。5人から1人。そしてゼロ。
二度と太陽を見ることも出来ないほど真っ暗なこの世界で、オレは一生を終えるだろう。
気がつけば、貴方もこのゲームの虜です。 |