とんだ横川さん! その1
「ですから。ここにいるのはですね、わたしが物としてあつかわれていたからで・・・」
「はぁ」
おじさんは呑まれている。
「・・・拾得物あつかいだと父が言っていましたし。だから、その、わたしを持っていてくださいと、たのんでいるわけなんです」
彼女は決意を決めて、言ったように見えた。言う相手が違うだろう、ありえねぇ!
一般人を何の迷いもなく脅しのアイテムに巻き込んでる!!
先週、最初に行き倒れ状態を見たときには想像もできなかった、従順な姿の欠落した様子である。
何かを理解された時点で大きく僕の人生は動き出してしまう。最悪の方角に。
何も頭を使わないでください、警備のおじさん。
「え〜と、これは、そう虐待?でしょうかね。・・・・・・さて、水口さん」
「はい、いえ。あ、何でしょうか」
「これは、どういう事でしょう。うちのマンションは犯罪の温床として存在するというのですかな。ですな。そういうことですか。そうですか。では、今すぐに私は契約破棄の連絡と内部検証を始めさせて頂くことにしましょう。さぁ、余罪を隠しても良い事は無いですから。若いんだから人生やり直せる。とっとと自首をして来なさい!」
唐突に出てきて、貴方どれだけ僕を追い詰めるキーポイントになるおつもりですか!!
「違いますよ。こいつさっき、お父さんに物扱いされてると言ってたでしょう! どう考えても僕はこいつの父親になれる年齢では無いでしょうよ!」
「養子縁組という制度があるのを知らないのかね」
実に冷静に、この人は言ってのける。
「知ってますけど、自分で稼いでもいない奴に子どもを引き取る権利なんて無いでしょ。えーと、多分ですけど」
ここで一旦落ち着いてもらわないと、ヒートアップさせてはいけない気がしてならない。
「では内縁の、という奴か! それは尚悪い。認知しなければ駄目ではないか! 君は子どもを何だと思っている!!」
「だから、違うと言っているでしょう。それにそもそもこの子の親が認知しているはずです」
「この子の親などと、まだ回りくどい表現を〜!」
年を食ったおじさんの粘りは半端では無い。前職でも相当強い働きをしていたのだろう。
・・・そういや、前職って確か。
「・・・あのぅ」
この場面で、女の子は挙手をした。空気が一旦音も無く破壊される。助かった、と思った僕である。それこそ元凶だったはずだが、今は彼女に期待する外は無い。
「・・・わたし、認知はされて、いません」
それを聞いた途端に警備のおじさんの顔は噴鬼の如く真っ赤になり、
「たわけがぁぁぁぁあああ!!!」
自称アパート、他称マンションが、揺れた。
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