厄介な女の子 その2
僕の脳裏に浮かぶのは、彼女の抱えた傷。推測される虐待と、確実な自傷。
見なかったことに、当然しようと思う。厄介事には、食傷気味だ。
「わたしのからだ、どう思いました?」
女性にしては低い声だ。無理に抑えていると言われても納得出来る。
彼女は、随分と面倒くさい質問を投げかけてきた。どう答えてほしいのか、推し量ることすらままならない。
「隠さずに裸を見せる程、発育の良い身体だとは思わなかった。まぁそんな事は良いんだ。興味無いから。で、体調は?」
質問には答えた。僕の聞きたいことはそこに無い。ひとに合わせられる程に人間は出来ていない。だから僕は、自分にとって必要な情報を尋ねた。
彼女は自分の身体を一通り確認した後で「だいじょうぶ」とだけ答える。黒髪が顔の動きにつられて揺れる。
僕は無言で台所に向かい、冷蔵庫からリンゴジュースを調達して彼女に渡した。気を使う必要など無いのだから、つくづく今日は厄日である。自分の調子がおかしい。
「それを飲んだら、話を聞かせてもらうから。あと、体温計。ここに置いておくから熱を測っといてくれる? 僕はシャワーを浴びてくる」
部屋の隅にあるタンスから下着とタオルを取り出して、僕は浴室に向かう。願わくば、この隙にこの部屋から女の子が出て行ってくれることを。
・・・・・・・・・
部屋に戻ると、彼女はこちらをじっ、と見て、テーブルの上の体温計を指差した。僕の心は、まだいたのか、という落胆に捉われた。怪訝そうな表情を向けられたから、多分表情に出ていたんだと思う。
37.8℃。体温計の表示は、どう見ても健康的な数字じゃ無かった。
「寝ろ! 阿呆」
ベッドを指さすが、彼女は首を横にふって難色を示す。何が嫌なのかは分からないが、そういう問題では無い。彼女の頭を引っつかんでベッドに連れて行くと、力一杯放り投げる。
「ふぅわっ」
間の抜けた声である。まぁどうでもいい。
「とにかく寝ろ。今すぐ寝ろ。何かあったら呼べ。良いから、へばってろ」
そう、言うだけ言って彼女を見る。布団をかぶって、でも目だけでこちらの様子を確認している。
「・・・ねむります」
彼女は宣言してから眠るようだ。珍しい。
落ち着いたらしく、彼女はやっと眠りにつく。煙草でも吸おうと思って、部屋を移動する。
一服しながら、思う。
追い出せないじゃないか、というか、率先して寝かせてしまったでは無いか。
不甲斐ない自分を呪おうと思う今日この頃。まぁ一日くらいなら、仕方の無い話なのだろう。病人だからな。
そこまで考えて、僕はさっき、足を掴まれなかったところで何にせよ介抱していたんでは無いか、とかそんな事を思ってしまった。
まるで善良ではないか。・・・いや、あの時の二の舞は、避けよう。そうは、ならないようにしよう。
気付くと、煙草はほとんど燃えてしまっていた。
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