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拾った女の子
作:た〜



女の子、ちょっと考える。


 自分を助けるために、自分の好きな人が動いてくれることは想像していた以上に胸の躍る事態で、怖さとかどうしようも無さはあるんだけれど、嬉しさや興奮もスゴい。
 でも、そのために別の女性と親しげに話されると切なくなる。しかも名前で呼んで。
 特別な存在。そういうありきたりな言葉が頭の中を駆け巡る。
 自分は彼にとってどんな位置にいるんだろう。すぐに忘れられてしまうくらいなのだろうか。なら、なら・・・。

『おう、頼んだ』

 彼がもう一人に掛けていた電話が切れた。会話中に笑顔になられたりすると、あんなに自分に冷たかったのにな、と思ってしまいどうしても割り切れない。こんな切ない恋愛に浸っている暇なんてこんな状況下に無いと理屈では分かっているんだけれど、どうしても、どうしても考えてしまう。

「おい、あと20分くらいの辛抱でここから動けるから」

 髪を撫でられながら穏やかな声で言われると、すさんでいた気持ちが少し落ち着いてくる。乱されているのも彼のことなのに、本当におかしい話だ。
 でも、ここを動いて水口さんの部屋にまた戻れたとして、私はその後どうすればいいのだろう。彼に言われたように、今のこの状態を乗り切れても、どうしてもあの男には遭うのだろうし、母もいない現在、帰れと言われて帰れる場所は、あの男の住む場所しかない。
 頼れるような友人はいないか、と聞かれたけれど、いない。高校に入ってからは治まったけれど、小学校からずっとイジメを受けていた。

 イジメという言葉が知られるようになった、ある中学生の自殺がニュースで取り上げられて、私も同じことされてるよ、と母に言った。
 あれは、ただの報告のつもりだったけれど、母は凄い顔をして色々なことを聞き出した。
 その後、日常は慌しくなったけれど、状況は変わらなかった。
 悪化していった。
 母は沢山動いて、働けなくなったりして、結局良い方向になんか何も動かなかった。
 イジメを受けたのは、そもそも時折会う父から殴られていた身体中のあざなどの傷を見られたからだった。うろ覚えだけれど。まず覚えていたいことじゃない。
 中学までの間に、自殺を何度か図って、リストカットの快感を覚えた。傷口から一筋ずつ血が流れていく度に、鼓動があることを直に見た気がした。その勢いが強いほどに身体は生きたがっているんだ、と考えた。言い聞かせた。
 高校は、県をまたいだ。知り合いなんていなくなった。でも、リストカットの傷跡は友人になってくれようとする存在、皆を遠ざけた。辛くなってまたリストカットを行なう悪循環になった。
 母のところから通える距離じゃなかったから、父を頼った。母は心配そうだったが、父は笑顔で出迎えてくれて、この人は変わったのかもしれないと思った。
 でも昔と変わらず私に暴力を加えた。
 母が栄養失調で体調を崩したのは私が高校に入学してすぐの事。その後すぐ、母は息を引き取った。
 近所では、母が亡くなったのは生きる意思がなくなったからだ、と言われたりしていた。
 その頃から父の日常には私に対する性的暴行も加わって、行く所まで行ってしまった途端に、私は逃げるという選択肢にやっと気付いた。
 そして逃げた私は、いま私を抱きかかえてくれている人に出会った。この人は今まで会った人の中で私を一番遠ざけようとしていた。でも、一番頼って大丈夫な人に思えた。
 それは、勘違いじゃなかったかもしれないけれど、頼ることを受け入れてくれるかは別の話。私は私のできる限り迫ろうと思ったけど、すぐにダメになった。
 でも、今この人は私を守ろうとしてくれている。
 わけが分からない。やっぱり、今まで人と接してこなかったのがいけないのだろうか。
 今を大事にしたい。
 もし無事にあの男、父から逃げられて、それでその後、水口さんに頼れなくなって、心が折れたら死のう。生きる意思が無くなるまで生きてみよう。
 私は、そう思っていた。

 この人は、雨の中、死ねるかな、と思ったときに、でも身体が掴んでしまった希望だから。


暗い。こうも思い詰められているとは、はい、作者も考えてなかったんですがね。あ〜。厄介厄介。











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