拾われた女の子、今度は乗り込む。
「えと。」
「ん? 干支は、丑・・・って、いや違うな。まぁ何というか、落ち着いたら帰りなさい」
既に一難は去った。実は大元が去っていないのだが、そんなことよりも厄介な存在は自己完結して行ったのだ。気にすることなんて毛頭無い。
「えと。」
「・・・・・・」
「あの。」
「・・・・・・」
「そ、のぉ。」
「・・・・・・」
「・・・反応、してくださいよお」
ばいばい、と手を振ってみた。彼女は半べそだ。
「そんな、反応はいらないです」
彼女はいじけてしまった。僕は追い討ちをかける。
「!!」
ドアを閉めて鍵をかけてみた。ついでに放ったらかしていた紙パックを処理し始めた。水が程良く冷たい。冷静になってくる。ドア前はゴタゴタと音がするが、軽やかにスルーの方針だ。
10分程度で気配が消えた。というかあのドアについてる覗き穴見たら彼女はいなかった。
部屋に戻り所有するジャケットというジャケットのポケットの中身を洗いざらい探して発見した煙草をありがたく消費し、欠伸をしたらドアの開く音がした。定型行動が開錠に繋がるとは、どのようなキーアクションだ、とか思ったが、多分そうじゃないんだろう。
案の定、女の子の堂々とした不法侵入を拝む羽目になった。いや、居住者在時の不法侵入ほど間抜けなものは無い。驚く間もなく追い出せるんだから。
「どうして中にいる」
「はいったから。」
・・・・・・。
いや、絶妙な切り返しだと思うよ、正直。
「まぁ良いや。興味無いし。出てきなよ」
最上級の笑みをしてみた。女の子の照れている表情など無視し、彼女の肩を押して回れ右をさせて、押し退け押し出し追い出す。しっかりと施錠を確認し、ドアから離れると、
がちゃり、と音がした。
最早、ホラーだ。
「カギ、もらったんです。」
「借りたじゃなくてかッ!!?」
何ていうか、持ち主に考慮しろよ。あのジジィ。最早アレの扱いなどジジィで十分と相成った。というか静脈認証だったよな、確か。
「ここはね、じつは認証カバーの上にカギ穴があるの。だから、はいれるの。」
胸を張るでもなく、でも微妙に自慢げな彼女の様子は正直なところツッコミを入れたくなってしまう感覚が。まず、君の行動は手柄でも何でも無く、そもそもジジィの妙な気遣いが原因だろ。
「そうか。住んでいる人間でも知らないような事実をぶっちゃけやがって。・・・じゃあ僕に鍵を渡して出て行け」
「だめ。」
言い切る。
「わたしが住めない。住めないのこまるし」
迷わず手刀を、綺麗に髪を別けられて露出したおでこにお見舞いした。あぅう、と喘ぐ。
「困れ勝手に。お前に居られては僕が迷惑する」
「いいの!」
「良くねぇよ! 開き直んな突如として!」
「だって!」
涙を流して、髪を振り乱して、縋るように、懇願するように、目で訴えられた。キリスト教であるのか手を胸の前で組んでいる。
必死になられると思わず折れそうになってしまう。危うい。正直もう一押しでやばい。
「あなたに頼りたいの!」
望ましくないことに、もう一押しがやってきた。
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