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真夜中の訪問者
作:深チョンピ


ふと目が覚めると、そこには背中に羽を生やした一人の少年が立っていた。時計の短針はまだ「2」を指しており、普段の起床時間までまだ大分時間がある。寝ぼけた頭でそんな事を考えていると、目の前にいる羽を生やした少年が部屋の電気をつけた。

「今日は…。私は天使。貴方の願いを叶えに来ました」

部屋の蛍光灯に目がチカチカした。だが、そのおかげで目の前にいる異様な姿の少年の異様さに気付くことが出来た。

「誰ですか!?人の部屋で何をしているんです!?」

「だから、私は天使です。普段善行をしている貴方の願いを叶えに来たんです」

天使って…。こんな嘘、ちょっと昔の夢見がちな少年少女達も信じないだろう。この少年は強盗なんだろうか。それとも頭でも打っているのだろうか。

「君の目的はなんだい?お金か?でもね、こんな事するとご両親は悲しむよ?」

「違いますって!!だから私は天使なんです!!この通り羽だって生えてるでしょう!!」

そういうと背中の羽をこちらに向け、パタパタと動かして見せた。だがどう見ても飛べるような動きではなく、ただ虚しく羽音だけが部屋の中に響いていた。

「…君ね、そんな子供だましな玩具で大人を誤魔化せると思っているのかい?」

「……もういいです。信じてもらえない事があるって、常々神様もおっしゃってましたし」

やっぱり、こいつどこかで頭でも打ったんだろう。誰がどう見てもサイコだ。それに何時の間にかもう一時間も経っている。明日もいつものように会社だってあるのに…。このままじゃ寝不足で参ってしまう。

「とりあえず、明日早いんだからもう帰ってくれないか?」

「いや、私も貴方の願いを叶えるという大事な使命があるんです」

「それなら早く帰ってください。それが私の願いです」

「そんな一時的なものでなくてです!!」

本当に迷惑な奴だ。――仕方ない。話を合わせて満足させて帰させるか。

「いくつまで聞いてくれるんだ?」

「いくらでも大丈夫です」

…あれ?なんかおかしくないか?こういう時って普通一つとか三つとかだろ?……あ、でも俺が一つって言えばいいのか。それでも、どこかおかしい。

「あ、でも人を生き返してとか誰かを殺したいとかは止めてくださいね。見てのとおり天使なんで、そんなこと出来ないんで」

どう見てもサイコにしか見えないのだが。こいつを追い出すには時間がかかりそうだ。そんな時、俺はとっさに一つの名案が浮かんだ。

「じゃあ、一つだけ。…俺を大金持ちにしてくれ」

これならきっと帰ってくれるだろう。絶対にこいつ金持ってないし。

「いいですよ。いくらですか?」

…嘘。こんなサイコな奴にそんな財力があるのか?…いや、きっと子どもだから安く見積もってるんだろう。ここで引き下がってはいけない。

「手取り百億ぐらいかな。もちろんドルで」

「分かりました。お渡しはドルのままで?それとも円に?」

…あれ?あれれ?本当に払う気なのか?そんな財力がこの子にはあるとでも言うのか!?…いや、収入のない子どもに限ってそれはないだろう。きっとどこかで盗む気だ。……そうすると俺も下手したら共犯で逮捕されちゃうだろ!!ダメだダメだ!他のことにしよう。

「やっぱりお金はいい」

「じゃあ、何にします?」

そう言われてもな…。他には思い浮かばないし。…そうだ!!

「かわいい彼女を…」

「無理です」

「早いな」

「貴方のかわいいっていう基準が分かりません」

確かに。かわいい子って言ったっていろいろ居るもんな。それにこいつに連れてこられる訳ないし。――何時の間にかもう時間が五時半になっていた。こんな奴と一晩中問答してたのかと思うとため息が出ちまう。…もう最後の手段だ。

「じゃあ、俺を健康にしてくれ」

「分かりました」

心の中ではまさか本当に天使なんでは…なんて思ってはいたけどもう時間がない。こいつを追い返しつつ、もっともリスクが無いのはこれしかない。

「はい」

俺の目の前に、一本の野菜ジュースが置かれた。

「これを飲むと身体にいいんですよ」

「…」

「それじゃ、私はこれで…」

やっぱり、天使なんていない。その事を俺は確信した。

「ちょっとすいません」

「まだ居たのか…。なんだよ?」

「駅って…どっちの方向です?」

「歩いて帰れ」














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