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人間になりたかった鬼

 ずっとずっと昔のお話です。とある山の中に一匹の鬼が住んでいました。頭には二本の角を生やし口にも牙があり、体も大きく、とても恐ろしい姿をしていました。
  でも、この鬼は、とても優しいか心をもっていたのです。一人ぼっちが、寂しくなると鬼は、時々山のふもとの村まで出かけて行きました。遊んでいる子供たちを見ていて一緒に遊びたくなり、ついつい姿をみせてしまうと、子供たちは
  「きゃー!鬼が出たー!」
  「助けてー!食べられちゃう!」
 と叫んで逃げて行きました。野菜を採っているおばあさんの手伝いをしようと出ていくと
「鬼じゃー!これでかんべんしておくれー」と、かご一杯の野菜を置いたまま逃げていきました。重い荷物を持ったおじいさんを助けてあげようと出ていっても
「ひ、ひえー!」と、驚いてやっぱり逃げ出します。
  鬼は、村の人たちと友達になりたかったのですが、その恐ろしい姿をみると、みんな逃げてしまいました。
  ある日のこと、鬼は、山の大きな木に登り、木の上から森をながめていました。すると、キノコ採りに来た3人の村人がその木の下に座りお弁当を食べ始めました。木の上に鬼がいるとも知らずに村人たちは話し始めました。
  「それにしても、あの鬼にもこまったもんじゃ」
  「おおそうじゃ、あんな恐ろしい姿で急にでてこられたんでは、びっくりして心臓が止まるわい」
  「今のところは、なんにも悪さはしてねえが、そうやって、わしらが油断したところをみはからって、喰っちまうつもりじゃなかろうか」
  「そうかもしれん。それなら、お侍様にたのんで、山から追い払ってもらおうや」
  「おお、それがええ、それが」
  この話を聞いた鬼は、驚きそしてとても悲しくなりました。
  その日の夜、鬼は草原に寝ころび満月をみながら、つぶやきました。
  「わしは、あんなに村人から嫌われておったのか。みんなと仲良くしたい、困っている人を助けたいと思っただけなのに・・・。ああ、こんな恐ろしい姿でさえなかったら。わしは、鬼ではなく人間になりたい。そして、みんなと仲良く暮らしたい」
  いつのまにか、鬼の目からは涙が、ぽろぽろと、こぼれおちていました。と、そのときです、満月から、まばゆい光の筋が草原におりてきました。鬼は驚き立ち上がると、光はさらに輝きを増し、鬼はまぶしさに、思わず目を閉じました。すると、どこからか優しい声が聞こえてきました。
  「鬼よ、鬼よ・・・」
 その声に、鬼は少しづつ目を開けてみました。そこには、やわらかい光に包まれた、仏様が立っているではありませんか!仏様は優しく微笑むとこう言いました。
  「鬼よ、お前の優しい心と、悲しみが私にとどきました。そこで、お前の望みをかなえてやろうと思います」
  「え!なんと、それではわしを人間にしてくださるのですか?」
  鬼は、大声で尋ねました。
  「そのとおりです。しかし、鬼よ。お前が人間になるためには、やらなくてはならないことがあるのです」
  「そ、それは何でしょう。人間になれるのなら何でもします」
  鬼は夢中で返事をしました。
  「よかろう。それではお前は、明日から七日間毎日必ず一回、村人に善い行いをしなさい。ただし、決して村人たちに、お前が鬼であることを知られてはなりません。もし、鬼と気づかれ時は人間にはなれません。よいか、その事を忘れずにがんばるのです」
  「わかりました仏様!それで人間になれるならやってみます」
  鬼は、胸をどんとたたき、希望にあふれた顔で答えました。その目には、もう涙はありませんでした。それを見た仏様は、再び優しく微笑むと、すーっと消えていきました。
  次の日、鬼は頭から大きな頭巾を被り角と口を隠しました。体にも、毛皮を羽織り体も隠しました。
  「よし、これならわしが鬼とは、わからんじゃろう」
 そういって鬼は村へと歩きだしました。
  最初の日は、重い薪を背負って、ふぅふぅと苦しそうに歩いているおじいさんを見つけたので、声をかけました。
  「おじいさん、とても重そうじゃなぁ、どれ、わしが手伝ってやろう」
 おじいさんは
  「それは、ご親切に、ありがとうございます」
 と、嬉しそうに返事をしてきました。鬼は、自分が鬼であることを気づかれていないことに満足し、薪を背負ったおじいさんを、そのままかつぎ上げると、風のような早さで、おじいさんの家まで送り届けました。
  二日目は、山でキノコ採りをしていた村人たちに、キノコがたくさん生えている場所を教えてあげました。
  三日目は、山から村に続く道のひとつを、大きな落石がふさぎ、村人が通れず困っていたので、鬼は石を持ち上げると、投げ飛ばしました。
  四日目は、村の子供たちが、オオカミに追いかけられているところに出くわしました。鬼は「こらぁ!オオカミめ、子供たちに何をしておるんじゃ」と叫ぶと、オオカミのしっぽをつかむと、ぐるぐると片手で振り回しました。オオカミは目を回し逃げて行きました。
  五日目は、川で溺れている子供を見つけました。鬼は、ものすごい力で、木を引き抜くと、溺れている子供まで木を伸ばしました。子供は、木につかまり助かりました。
  六日目は、道でお腹を押さえて苦しそうにしゃがんでいるおばあさんを見つけました。
  「おばあさん、どうした、腹がいたいのか?」そう鬼が聞くと、おばあさんは
  「そうなんじゃよ。今朝食べた芋が少し古かったのせいかもしれん」と答えました。
  「それは、たいへんじゃ。よし、おばあさん少しここで待っててくれ」鬼はそう言うと
 しばらくして薬草を採ってきました。
  「おばあさん、これはとても腹痛に効く薬草じゃ。これを、今からすりつぶすから、のむんじゃよ」薬草を飲んだ、おばあさんは元気になり、お礼を言って帰っていきました。
  そして、七日目の朝がきました。
  「とうとう、最後の日になったぞ。村人は、わしを鬼とは気づいておらんようだし、あと一回だけ善い行いをすれば、人間になれるんじゃ」鬼は、そうつぶやくと、嬉しそうに村へと歩いていきました。村に近づくと黒い煙があがっているのが見えました。
  「ん?なんじゃ、あの煙は」
 鬼が急いで村に行くと、一軒の家が燃えており、村人たちが必死で火を消そうとしていました。しかし、火はなかなか消えません。その時、一人のおじいさんが叫びました。
  「だれか助けてくれ!まだ、孫娘とばあさんが中におるんじゃ!」しかし、火の勢いは、ますます強くなり、だれも近づけません。と、そのときです、
  「ここは、わしにまかせるんじゃ!」
 そう叫ぶと鬼は、燃え盛る家の中に飛び込みました。
  「うわ!あの家に入るなんて」
  「あの、頭巾の男も死んでしまうぞ!」村人たちは、口々に叫びました。
  しばらくすると、どーん!という音とともに家の壁を壊して、頭巾の大男が転がり出てきました。その腕には女の子と、おばあさんをかかえているではありませんか!村人たちは大喜びし、頭巾の大男にかけより、お礼を言いました。と、その時です。燃え盛る火に飛び込んだ鬼の頭巾が、焼け焦げたせいでぼろぼろと崩れ落ちてしまったのです。そして、頭巾の下から現れた顔を見た村人たちは驚きました。
  「見ろ!頭に角が生えとるぞ!牙もある。」
  「お、鬼じゃ~!」
 その、言葉を聞いた鬼は、その場にがっくりと膝をつきました。
  「ああ、わしが鬼であることが皆に知られてしまった。もう少しで人間になれたのに・・。」そう鬼がつぶやいていると、村人の中から、こう言い始める者がでてきました。
  「おや、この頭巾と毛皮の大男には、腹痛の薬草をもらったぞ。それなら、わしを助けてくれたのは、鬼じゃったんか」
  「おおそうじゃ、わしも重い薪を運ぶ手伝いをしてもらったぞ」
  「ぼくたちも、オオカミから助けてもらったよ」
  「溺れているうちの子を助けてくれたのも頭巾と毛皮の大男だと聞いたぞ」
  「わしらは、キノコのたくさんある場所を教えてもろうたわい」
  「道をふさいじまってた、石をどかしてくれたりもしたぞ」
  その時、村人たちは気づきました。今まで自分達を助けてくれたのは、この鬼だということに。そしてこの鬼が恐ろしい姿をしていても、とても心の優しい親切な鬼だということにも。
  村人たちは、あらためて鬼に言いました。
  「鬼さんや、今までありがとう。わしらは姿が恐ろしいというだけで、鬼さんを嫌っておった。なにも悪さをしていない鬼さんを山から追い払おうとしておった。すまんかったのう。許しておくれ」
  「そうじゃ、これからは鬼さんは、この村の仲間じゃ」
  「ぼくたち、鬼さんと遊びたいな!」
 そんな村人たちの言葉に鬼はとても驚きました。そしてすごく嬉しくなりました。
  「ありがとう、みんな本当にありがとう。ようやくわしは、みんなと友達になれるんじゃな」そう言いながら、鬼はくしゃくしゃの笑顔で、ぽろぽろと、涙を流して喜びました。それは、とても恐いけど優しい笑顔でした。
  結局、鬼は人間にはなれませんでした。でも鬼は姿は恐ろしくても、鬼のままで村人たちと友達になれました。鬼の親切な行いと、優しい心が村人たちの心を動かしたのでした。
  それからも、鬼は村人たちを助け、村をずっと守りつづけたのでした。

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