時は戦国(3/17)縦書き表示RDF


時は戦国
作:田中 遼



第三話  進むために


物語は始めに戻る。


風丸は絶望して頭が垂れた。彼が諦めたのが分かった雷助は思いっきり刀を叩きつけた。

「糞ォ!!!!」

風丸はガバッと顔を上げた。目が真ん丸くなっている。

「兄上、今、何処に叩きつけました!?」

「何・・・?」

しばし、木のはじける音しか聞こえなかった。

一拍おき、風丸が刀を腰から鞘ごとはずした。そして、雷助が刀を叩きつけた辺りの床を手当たり次第に殴りつけた。

「か、風丸?」

らしからぬ行動に、雷助は驚いて見つめることしか出来ない。

しばらくして彼は床を叩くのをやめた。兄を振り返った目がぎらぎら輝いているのは、炎のせいかもしれない。

「兄上、ここです!!」

「なに?」

風丸はもう一度地面を叩く。にっこり笑って。

「・・・・・そこが!?」

「分かりませぬ。でも、確かに何か空間がありますよ」

兄弟はさっと畳を持ち上げた。

「・・・・・しかし、風丸。こんな簡単に見つかるところにあってよいのか?」

「・・・・・一番陰が濃いところを知っていますか?」

風丸はその空間に飛び込んだ。

「灯かりのすぐ近くですよ」

雷助も刀を拾い上げ、その後に続いた。

中にちょっとした鉄の蓋がある。二人がそれをあけると、中には闇が広がっている。

「・・・・・」

「・・・・・」

風丸は躊躇いなく飛んだ。

「アイタ!」

意外と浅いらしい。雷助は跳ぶと同時に蝶番の鉄の蓋を閉めた。

雷助は闇の中、猫のように音もなく着地した。手探りで辺りを探ると、誰かの顔を触った。当然、風丸である。

「して、ここからどうする?」

「・・・・もう少ししたら目が慣れるかと」

その通りだった。ぼんやりと互いの輪郭が浮かび上がってくる。

「風は・・・・こっちから流れている」

雷助は風丸の後ろのほうを指差した。

ズン!!

上のほうから聞こえてきた音は、何かが崩れる音。二人は上を見上げ、しばしたたずんでいた。が、どちらからというわけではなく、風の吹くほうに歩き出した。


「・・・・・」

“・・・・・絶対にこの仇は・・・・”
「敵討ちなど考えないでください。」

珍しく兄より先を歩いている弟が静かに告げた。雷助は一瞬動きが止まったが、一歩で距離を詰め、その肩をつかんだ。

「口惜しいとは思わんのか!?父上はもちろん、おそらく母上も・・・・・!」

「・・・・・仇を討っても、帰ってきてはくれませぬ。」

「貴さ・・・・このうつけがぁ!」

雷助は彼の肩を引っ張り、自分の方に向かせようとしたが、風丸は全く動かない。そっぽを向いたまま彼が呟く。

「私は、天下を取りに行きます・・・・・出来れば兄上と一緒に」

「な・・・・に・・・?」

弟のあまりに大きな発言に雷助は動揺を隠せない。

「・・・・・それが私の、この乱世に対する復讐です・・・・!」

「・・・・乱世に対する・・・・?」

雷助は手を放した。どちらにせよ風丸は動かなかった。

“・・・・・これは・・・・本当に風丸か? わしと同じ年の幼子か!?”

雷助はそう思った。


闇の中、誰にも知ることが出来ない中、風丸は泣いていた。

歯を食いしばり、声を出さないようにして。




何故?









兄とともに、“前”に進むためにである。


“・・・・仇討ちをしても・・・・忠義を討っても・・・・進めはしないのです・・・・・許してください、父上、母上・・・・!”



風丸は、仇討ちを良しとしない、自分の思考を呪った。涙は、止まらなかった。










GO TO BLOG





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう