にゃー君とわたし。
ある意味ホラーだと思ったので、ジャンルはホラーですが。
全然、ぜんっぜん怖くはない(と、思う)ので、お気軽に楽しんでいただけたら幸い。
むしろコメディに近いかと。
思いつきで書いたものなので、脈絡がない上に結構中途半端です。
私の大事な大事なにゃー君。
いつだってどこだって一緒で、小さい頃から隣にいた。
私にとって大好きな家族。
だけどにゃー君は、私の家族じゃ嫌だって言う。
ある日とうとう家を飛び出して、私の隣に立てるような立派な人になってやるって…………でもね、にゃー君。
ひとつ聞きたいの。
えーと……他に方法はなかったのかなぁ?
【 にゃー君と私。 】
大好きなにゃー君とは、私が小さい頃からいつも一緒にいた。
世界でいちばん、にゃー君のぬくもりが大切だった。
他の皆はにゃー君のことを何を考えているのかわからない奴だって言ったけど、私には何だかにゃー君が思ってることや考えていること、言いたいことがわかるような気がした。
私とにゃー君には確かな絆があって、繋がってたよね。
しっかりそうと言えるくらい、私達は互いが大好きだった。
大好きだよ、にゃー君。
出来るならお嫁さんになりたいくらい、だいすき。
だけどにゃー君は、私とは確かに何かが違ったの。
気持は通じ合っていたからこそ、無視できない違いがあった。
私のことが大好きだ、と。
その目は確かに言っている。
私にとっては何よりも露骨で、明らかな感情の発露。
でもにゃー君は凄く切なげな声で、憂いに満ちた泣きそうな顔で。
吐き捨てるように、私に言ったの。
「……っもう、ミサキのペットでいるのは嫌なんだ!」
「ペットだなんて、そんな……にゃー君!」
「俺は、俺は……変わる。ミサキの隣にいられるように、ミサキが俺以外を見られなくなるような男になって戻ってくる」
「待って! 待って、にゃー君……っ!!」
こんな悲しくなるような会話を残して、にゃー君は家出した。
私が動くより早く、身一つで飛び出した。
待って、にゃー君。
待って。
……私の声は聞こえていたのかな。
一度だけ振り返ったにゃー君は、まるで私を振りきる様に、私には行けない場所へと走り去ってしまったの。
それから私は一心不乱で、にゃー君を探した。
探して、探して、涙が止まらなかった。
不安と心配で、胸は今にも潰れてしまいそう。
車にでも轢かれないか、変な人に連れていかれてしまわないか。
私はにゃー君が消えた次の朝から、学校も行かずににゃー君をずっと探し続けた。
周りのみんなはその内に帰ってくるさ、とか。
そんなに必死で探さなくっても大丈夫、とか。
気休めばかりを言わないで。
私は心配で夜も眠れない。
私は三日三晩、にゃー君がいそうなところを半狂乱で探し続けた。
そうして四日目の朝。
心配した私が馬鹿らしくなるほどにあっさりと。
にゃー君が帰ってきた。
すっかり見違えた姿になって。
「ミサキ、変わってみせた俺を見てくれ!」
「にゃ、にゃー君……?」
そこにいたのは、私の見慣れたにゃー君の顔だったけれど。
率直に言って、 猫 男 だった。
うん? 変わったというか、変わり果てたというか。
私が見間違える筈のない、ロシアンブルーの濃い血を思わせるプリティ☆でキュート☆な愛らしいにゃー君の頭部。
その下にあるのは見慣れた猫の身体……ではなく。
細マッチョな人間(♂)の肉体ダイレクト。
健康そうな肉体ではあるけれど、頭部とのミスマッチ感が凄い。
猫そのままの頭部も頭部で、人体に比率を合わせたサイズになっているので物凄い違和感を発揮している。
にゃー君、貴方は確かに私が目を離せないような男になるとか言っていましたけれど……確かに目が離せないよ、別の意味で。
どうしよう、目が釘付けです。
こんな予想を飛び越えた変貌を遂げられたら、目を逸らすか見つめるかの二択しかないよ。
三日で一体何があれば、こんな進化論を鼻で笑うような姿になれるの?
今のにゃー君の姿を見た人は、きっとこう言うだろう。
妖 怪 、と。
「ミサキ……俺、お前の隣に立つ唯一になる為に、人の身体を手に入れたんだ」
「にゃー君……今の貴方が隣にいたら、心配せずともにゃー君以外の誰も私の隣には来ないと思うな。というか人の体を手に入れたって……」
人の身体だけ手に入れてどうするの……!!
「にゃー君、人の頭部は手に入れてこなかったの!?」
というか、どこで手に入れたんですか。
本当に、どこで。
「馬鹿、たかが三日修行したくらいじゃ、人の身体が精々だ。頭部まで手が回るか」
「修行したくらいで人体が手に入るの!? それ一体どんな荒行……でもそれなら、あと一日くらい修行したら頭部も人間にチェンジ出来るんじゃ」
「これ以上はどう見積もっても六十年は必要だってわかったから帰って来たんだ。六十年も側を離れてなんていられるか」
「にゃ、にゃー君……」
私には想像もつかない荒行 (たぶん)を乗り越えて帰ってきただろう彼に、こんなことを言うのは気が引けるけど……
それでも敢えて言わなきゃならない時があると思うから。
私は自分よりも背が高くなってしまったにゃーくんの頭部を見上げ、きっぱりと言ってあげました。
「猫の身体に戻っておいで」
「無理。人の肉体を賜る時、猫神様に返上したし」
「ね、猫神様!? にゃー君、身体返してもらえないの?」
「もうこの体の本来の持ち主と交換した後だって」
「猫神様なにやってるの!?」
おっと……猫の神様はとんだ邪神のようです。
いまこの瞬間にも、この世のどこかに人面猫が誕生していたらしい。
そんな神様を信奉することに大きな不安を感じるよ、にゃー君!!
【私】
ミサキちゃん12歳。
6歳のときからにゃー君とはいつも一緒☆
結構な天然。
【にゃー君】
ガチな飼い猫6歳。
雨の中を震えていた子猫時代、ミサキちゃんに拾われる。
それ以来、家にいる時は四六時中いつもいっしょ。
種族を超えて愛しているらしいが、その愛はかなり重い。




