ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
スキルや特殊効果は膨大ですが、それをどう活かすのかはマニュアルには記載されていないのがゲーム的設定となります。
各種設定
閑話「ある日のMDそのに。ラッシュラッシュラッシュ!」


その日、俺達は追われていた。

何にだって? そんなもの決まっている!

「っだぁぁぁああああああっっ!!」

『ギャオオオオオンッ』

走る! 走る!

背後に響く咆哮、地竜の地味な茶色の巨体から少しでも離れるべく、全力疾走である。

仮想現実であるがゆえに、実際には上がらないはずの息も律儀に脳みそが
ゲームからの信号を刺激として受け取り、あたかも実際に全力で走ったかのように疲労を錯覚する。

無論、これがなければ仮想現実、VRゲームの類はすぐに健康を害するものとして制限を受けているのだが。

ゲーム内の自分の体も、必死に動かす手足にあわせて汗をかき、疲労を感じていく。

その背中にチリチリと迫る殺気代わりのカーソル。

フライトシミュレータのロックオン時のごとく、俺の周囲に赤い円がじわりと迫る。

これに体が捕らえられたらその瞬間、回避しなければならない。

何故かと言えば……

「ファクト、飛べ!」

相方の声に従い、とっさに左に向けて飛ぶ。

轟音、そして肌に感じる熱風。

背後の敵、飛ぶことを辞めた強者、地竜がその大きな口から火球を吐き出したのだ。

プレイヤーの使うファイヤボールを何倍も強くしたような迫力と、それに恥じない威力。

直撃でも即死は無いが、その後が無いだろう。

「ええいっ、コイツのポップ周期が変わってるなんて聞いてないぞ!」
「目の前に奴がいる。それが事実だ!」

叫ぶ相方、薄着でありながら鍛え上げられた肉体を誇る刃物を使わない前衛、モンクというべきスキル群を選択した青年が反対側で回復薬を飲み干していた。

何とか間合いを取り、装備をメニューから選択して変更。

一瞬の輝きとともに、資源確保用のゆったりとしたものから、対地竜ともいえる防具達へと着替える。

一見、青いステンドグラスのような輝きを放つ表面の鎧に、盾は妙に毛羽立ったフェルトのような防護を施した丸盾。

俺も武器は、無い。

だが、策はある。

「合図で目くらまし展開。その後、時計回りに行くぞ」
「逃げるって選択肢は無いのね? ま、自分もそうだけど!」

俺の指示に相方はあきれたように良いながらも、構えなおした。

その間も地竜は俺たち2人を攻撃しては回避されている。

体を生かした体当たりは受け流し、火球は回避か、盾で防ぐ。

「3・2・1・今!」

瞬間、俺の手から放たれた光が周囲、如何にも鉱山に向いています、と言いたげな山肌の渓谷を満たす。

『ギャワウッ!』

地竜がひるんだその隙に、俺はアイテムボックスから次々と剣や槍、その他にも刺せるタイプの武器を取り出し、地面に角度をつけて刺していく。

「よっしゃ、行くぜ! 連弾蹴撃(マシンガンキック)!!」

相方は俺が刺した武器達に駆け寄ると、器用に足に引っ掛け、地竜へ向けて独特の動きで投げていく。

仮に、サッカー選手が丈夫な靴をはき、小石を蹴ったらその小石はどうなるだろうか?

かなりの威力を持ち、当たれば痛いではすまない可能性もある。

相方の強靭な足により、速度を乗せられた武器達が地竜に迫り、無遠慮にその肌に食い込む。

生々しく、鍔まで剣が刺さる音、持ち手しか残らない槍等等。

時計回りに走りながら、二人で地竜に次々と攻撃を仕掛ける。

『グアッ!』

いつしか、全身剣山のようになった地竜は、全身を勢い良く振るい、何かの塊を撒き散らしながら駆け出していった。

後に残るのは静寂と、そこに響く荒い2人の息。

「行った……か?」
「みたいだな」

警戒を解き、装備を戻す。

「おい、ダイキ。ポップは明日じゃなかったのか?」
「情報屋に行ったのが日付ぎりぎりだったからな。1日間違えたか?」

悪びれなく言う相方、見た目は旧世紀の格ゲーに出てくる日本人のムエタイ使用キャラのようだ。

「まあ、無事だったからいいけどさ」

彼がこういう間違いをするのは今日が初めてではないので、俺も深くは追求しない。

トラブルは起きても、何とかするというタイプなので最後は何とかなるのだ。

「そうそう、無事であれば何でも良し! って、おい、あれ」

ダイキの指差す先にあるのは地竜の落とした何か。

「おお! オジハルコンじゃないか!」

オジハルコン、決してオリハルコンの誤字ではない。

どこぞの聖剣のカリパーのごとき、下位素材とでも言うべきものである。

オリハルコンはまさにドラゴン―2本足で立ち、空を飛び、下手をすれば話すという―から稀に手に入る素材だ。

対して地竜は、倒すのは今の俺では困難だが、こうして撃退をすることで体の鱗、その塊であるオジハルコンなんかが手に入ることがある。

下位素材とは言え、これを使った武具の性能はお墨付きだ。

「ファクトが持って行けよ。要るんだろ?」

気前良くダイキが言い、ブロック氷ほどもあるそれらを投げてよこした。

「いいのか? 安くないぜ、これ」

当然、良い武具の元となれば売る時も高くなる。
彼の普段の狩効率からすれば、大金のはずだ。

「俺が持ってても売るしかないからな、いいっていいって」

笑うダイキに、俺は苦笑しながらアイテムボックスからあるものを取り出す。

「ありがとう、じゃあ変わりに」

取り出した袋を見、ダイキは首を傾げる。

「ん? なんだよ、急に。ってこいつは!」

ダイキが驚きながら出したのは一対の靴。

一見すると、重そうな金属製のブーツという感じだが実際は違う。

「今度、誕生日だろ? ちょっと早いけどな」

プレゼントだ、と言って笑う。
戸惑った様子のダイキを促し、それを履かせようとする。

「プレゼントって…こんなの市場で買ったらいくらすんだよ!」
「作ったから、鉱石代のみだな」

俺の言葉に、ダイキはあんぐりとした様子で押し黙る。
その後、静々とブーツを履き、動きを確かめる。

「履けばすぐわかるけど、軽い。んでもって蹴ってもそうそう痛くない。さらには微妙だが滞空に近い効果もあるぜ! ついでにそこからジャンプも出来る!」

名づけて『エアリアル・フォース』である。

「よっ、ほっ! いいね、いいじゃん!」

一通りの型を試したダイキが笑う。

「それに今みたいに魔力を込めれば、滞空するから。じわじわと落ちるけど」

完全に滞空するのは逆にまずいかな?と考えて調整した結果なのである。

「おっけ! これで出来る。夢の空中コンボ!」

そう、格闘を選んだ人間なら1度はあこがれる空中殺法。

浮かせた相手に何度も攻撃を決めるのである。

ご機嫌のダイキを伴い、俺は街へと帰っていく。




その日から夜な夜な、公園でバスケットボールを空中で蹴る人影がいたとかいないとか。

---------------

○作成防具

エアリアル・フォース
タイプ:靴
付与効果
:反動軽減 通常、肉体攻撃時に伴う相手の防御強度による反動を軽減する
:昏倒攻撃(弱) 攻撃命中時、相手を昏倒させることがある。
:落下防止 魔力を込める事により、その魔力量に応じて重力に逆らって装着者はすぐには落下しなくなる。込める魔力が少なければすぐに落下する。
※透明な足場があるかのように連続移動(跳躍含む)が可能。崖からの落下防止の他、意識して用いれば上空に攻撃で浮かす、追いすがる、攻撃する、を魔力の限り続けられる。





+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。