雲のカケラ、チラチラと。縦書き表示RDF


雲のカケラ、チラチラと。
作:N澤巧T郎


ガラガラガラッ

ダッダッダッダッ

「かあちゃ、かあちゃっ!!あんな、あんな、空からなっ、雲のなっ、カケラがなっ、落ちてきてるんよ!!!」

かあちゃはお鍋をおたまでかき回すのをやめて振り返り、目線が同じになるように膝をついた。

「あらあら、耳も手も真っ赤じゃないの」

かあちゃの手はすごく暖かい。

「ちゃんと手袋と帽子をかぶろうね」

かあちゃは手袋と帽子を取りに違う部屋に行きました。

「とうちゃっ、とうちゃっ!!」

タッタッタッタッ

とうちゃはコタツで丸くなる〜♪

「とうちゃっ!あんな、雲がなっ、バラバラになってな、落ちてきてるんよ!!」

とうちゃはボーっとしながら外を見た。

「・・・ああ・・・ホントですねえ」

「なっ!?なっ!?それになっ、すごい冷たいんよ!!多分凍ってるんよ!!だからな、だからな、集めてな、暖めればな、また雲に戻るんよ!!だからな、集めるんよ!!」

「そうですねえ。いっぱい集めてください」

とうちゃは寝ながらみかんに手を伸ばす。するとかあちゃが帽子と手袋を持ってやってきた。

「お父さんと一緒に集めてたいんだよねえ」

帽子をかぶせてくれながら言った。ちょっと恥ずかしかった。

「でも寒いですよお。コタツは暖かいですよお」

みかんの皮をむきながら言った。

パクモグパクモグ

とうちゃはチラッと見た。下を向いてうつむいて、眼を細めている。残りのみかんを口に運ぶ。

「ひかたないですねえ。行きますか」

冬に咲いたヒマワリみたいに笑った。とうちゃはゆっくりとコタツから出た。

「早くっ、早くっ」

とうちゃのちゃんちゃんこをグイグイする。

「ちょっと待っててくださいね。手袋を取ってきますから」

とうちゃの部屋へ行こうとする。

「はい、アナタの」

かあちゃが笑顔で渡す。

「ありがとうございます」

とうちゃはやさしく笑いながら受け取った。

ガラガラガラッ

「う〜、サブ〜!!」

とうちゃがブルブル震えてる。

「とうちゃっ、とうちゃっ、きれいなっ、これ、きれいな!!」

負けないくらいきれいな目で言った。

「まだ積もってないですねえ」

白い息が口と鼻から同時に出る。

「積もる?積もるって?これ、積もる?とうちゃ、消えない?積もる?」

「そうですよ。今はまだすぐに消えちゃいますけど。夜には一面に積もっていることでしょう」

「それ…それって……すごいなっ!!!」

真っ白な雪が降る中で、紅く染まった頬がいやにきれいだ。

「それでは、寒いですし家に戻りましょう。お昼ごはんが待ってますよ」

「あんな、さっきな、シチュ〜のな、匂いがな、したんよ」

「よかったですねえ」

「うん!!あれな、納豆の次に好きなんよ」

ガラガラガラッ




「いっただっきま〜すっ!!」

パクパク

ネリネリネリ

「いつまで練り練りしてるんですか?」

黙々。

「あら、ご飯粒がついてるわよ」

かあちゃが取ってくれた。かまわず目の前のつやつや光る納豆ご飯にがっつく。

「んますぎる!!!!」

「チョット静かにしましょうねえぇ」

台所で水を流す音がする。外はもう真っ暗だ。

「もう積もった!?」

顔から期待がにじみ出ている。

「それじゃあ見てみましょうか」

ザー

顔全体からキラキラと音がしてきそうな顔をしている。

「あはっ!!」

窓ガラスが息で曇った。

ガラガラガラ!!

「寒ッ!!」

体がビクッとした。

「うはあ〜」

両手一杯によそって、まじまじと見つめる。黄金の財宝にでも出会ったかのように。

「とうちゃっ!!」

絶対忘れることはない笑顔をしながら両手をとうちゃに差し出した。とうちゃはやさしく微笑みながら、真っ赤になった両手の上に乗っている真っ白でキラキラ光る雲のカケラに両手をかぶせた。

「みてごらん」

とうちゃのあったかい手が離れた。手の上にはふわふわとした真っ白な雲が。

「うわあああぁぁぁ!!あはっ!!」

しみじみ思う。
この世にこれ以上愛しいモノがあるのだろうか。



「おやす・・・みニャムニャ・・・」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

雲のベッドはとてもふわふわで、とてもふかふかで、もこもこで。

とうちゃとかあちゃはほかほかで。

明日も良い日でありますように。






「あはっ!!」
窓ガラスが息で曇った。

お気に入りのシーン。













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