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双頭竜しょうた

体を抱え込むようにして道に転がったゆうすけはただ必死でそれが速く終わる事を祈っていた。

丸くなっていつもの様に逃避する。

耳に響く怪物が巨大な尾を地面にたたきつける轟音も背中に感じる4つの食い居る様な視線ももはや気にならない。

ゆっくりと脳内に恐怖と絶望が交互に入り交る中時折挟まれる幾つもの過去の空しい出来事。

つまりこれを走馬灯っていうんだろうか。それにしてもいい思い出が少ないな。俺の人生っていったい何だったんだ。怪物の生温かい吐息を感じる。これから食われるんだろう

一思いに終わらせてくれよ。俺は痛いのはごめんだ。

もう一度ゆうすけはぎゅっと目をつぶって時を待った。


チロチロとゆうすけの背中を何かがなでる。その感触にゆうすけの背中でぞわりと産毛が逆立つ。遂に始まった

早く終わってくれ!

ぎゅっと目をつぶり今か今かと食事が始まるその瞬間を待つゆうすけ。だが一向に牙が肉に食い込む気配はない。怪物はひたすらチロチロと舌でゆうすけの背中を舐めるだけだ。

俺と言う食い物で遊びやがって…くそっ。だんだん腹が立ってきた

ゆうすけはカッと目を開き振り返ると目の前の垂れ下がった大きな怪物の顔に勢いよく怒鳴った。

「まどろっこしいな!早くやれよ!腹減ってんだろ!サクッと終わらせろ!」

もうやけくそである。どうせなら怒って一気に噛み潰してくれたら楽になるぐらいの感覚だろうか。

やけくそとは言え感情を爆発させると少しは冷静さが戻る。

怒鳴ったゆうすけの目と怪物の4つの目が交差する。

「ヒッ…」

硬直するゆうすけの頭にすぅっと霜が降りるように死への恐怖が降りてくる。そして、それはゆっくりと疑問符へと形を変えた。

「?」

どういうことだ?怪物の視線には一切の悪意や隔意の様なものが見当たらないのにゆうすけは気が付いた。俺を食うつもりはないんだろうか?

それどころかやけに人懐っこい目でゆうすけの事をじっと見つめているようにさえ感じられる。

徐々に余裕を取り戻してきたゆうすけは怪物の目を見つめながら考える。

怪物は俺を追ってきた。俺を食うためかと思ったがでも。そうじゃないかもしれない…

じっと目を見つめているとふとゆうすけの頭に引っかかるものがあった

あれ?俺この目を何処かで見た事がある。ゆうすけは該当する記憶を頭の中で必死に検索に賭ける

最近まで飼ってた犬を思い出す…

タロウ。俺に唯一懐いてたあいつ。あいついつもこんな目をして俺を見つめてたっけ・・・ははは

昔の思い出の中で唯一懐かしいものだ。心が締め付けられる。

もう死んでしまったけれど…

じっとゆうすけの事を見つめている怪物。

そこにゆうすけはもはや怖れを感じなくなっていた。

こいつは多分俺を食わない。きっとそうだ!尻尾をぶんぶんと振りまわしてるのも喜びを表現してるのかもしれない、

この怪物昔飼っていた犬に似てる。その共通項はゆうすけに謎の自信をもたらした。

涎だけはずっとぽたぽたと垂れているのがまだちょっとだけ気になるが…


ゆうすけはすくっと立ち上がると尻についた白い砂をぱんぱんと落ち着いたふうに払いのける。

そして怪物の4つの眼をキッと睨みつけ手をゆっくりと広げると言った。

「タロウ!もっかい友達になろう!」

ピクッ

その声に怪物は動きを止める。ゆっくりと時間が過ぎる。

やっぱりタロウ。お前なんだな。俺には分かってた。涙腺が熱い。

ゆうすけはもう一度ゆっくり息を吸うと懐かしさと安心から感極まって漏れる嗚咽を抑えながら感極まりながら大声で叫んだ。

「タロウ!」

ピクッ

ずっと揺れていた尻尾が止まる。

怪物は姿勢を整えると爪で地面に小さく傷をつけた。

そしてゆっくりとゆうすけに視線を戻す。

その目はまた何かを訴えているかのように見えた。

驚くのはゆうすけである。

それは犬にらしからぬ動作であった。

さっきの爪の動き。それは例えるなら…文字を書くかのような。それはどうみてもそんな動きであった。

俺は間違えてるのかもしれない…そんな事を内心考えるゆうすけ。


怪物が書いた地面の傷痕を覗き込む。

そこにはこんな事が日本語で書かれていた


「俺は双頭竜しょうた。お前と同じ転生者だ。』

色々あってしょうたは双頭竜になった

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