自動書記の予言
「お前は、本当に泣いてばっかりだな」
と、クロロが言った。気がつけば目の前にクロロがしゃがんでいる。
少しだけ笑っている。
「クロロ……!!」
俺はクロロの腕をつかんだ。
「クロロ、すぐに蜘蛛のみんなを連れてヨークシンから出て行け!!」
これは、俺の心からのお願いだ。
「鎖野郎のことなんか忘れて、どこか遠くへ行くんだ!!もう鎖野郎と関わるな!!お宝は手に入ったんだ。もうここに用はないだろう!?なぁ、クロロ!!」
クロロは答えない。ただじっと何かを考えているようだ。
「なぁ、クロロ!!俺、何でもするから!!本の解読も休まずしてやる!仕事を手伝えって言うなら手伝う!だからもう、鎖野郎とは関わるな!!頼む!!」
「ハヤト」
クロロは、その腕を掴んでいる俺の手を無理やり放させた。
「クロロ……お願いだ……」
「ハヤト」
ふとクロロは一枚の紙を俺に差し出した。
「ここに、名前と生年月日と血液型を書け」
……はぁ?
「なんで?」
「いいから書け」
……なんなのさいきなり……。俺はしぶしぶ言う通りにした。名前はハヤト・タケダ。生年月日は1984年8月10日。血液型はAB型。……何するんだろう。
「しばらく俺に話しかけるなよ」
そう言ってクロロは片手にまたあの本を具現化した。もう片方の手にはペンを持って、何かの念を発動した。……凝で見てみたら、クロロの手に不気味な天使(?)がくっついてる。何してるんだろう。なんかさっきの紙に何かを書き始めたよ。わけわかんねぇ。
書き終えるとクロロはその紙を俺に差し出した。受け取って読んでみた俺は、その瞬間目を見張った。
緋の眼の友と蜘蛛とに挟まれて
あなたは道を見失う
迷子のあなたを救うのは
狂った道化師の甘い囁き
蜘蛛の手足がそぎ落とされて
緋の眼の友の地に臥す傍らで
あなたは血の涙を流すだろう
逆十字の笑い声を聞きながら
逆十字に従いなさい
彼の行く所に異邦人がいる
あなたの欲しいものを
持っているのは彼だから
「……何……これ……?」
俺は、恐る恐る聞いた。
「お前のこれからの未来だ。一週ごとの出来事を四行詩で予言している。……何と書かれてある?」
「クロロが書いたんだろ」
「自動書記だ。何を書いたのか、俺にはわからない」
「……」
旅団員の死、クラピカの死、それが来週起こってしまう。俺は答えられなかった。そしたら、クロロが言った。
「旅団員の死が予言されていたか?」
「……なんで、わかったの?」
すると、クロロはクスリと笑った。
「大切な暦が一部欠けて、遺された月たちは盛大に葬うだろう。喪服の楽団が奏でる旋律で、霜月は高く穏やかに運ばれていく。菊が葉もろとも涸れ落ちて、血塗られた緋の眼の地に臥す傍らで、それでも貴方の優位は揺るがない。遺る手足が半分になろうとも。……俺の予言の内容だ」
……まじかよ。遺る手足が半分って……そんな……
「どう思う?ハヤト?」
「どうって……」
「血塗られた緋の眼とは、誰だろうな?」
俺の心臓がドクンと大きく鳴った。クロロの漆黒の瞳が俺を見据える。
「ハヤト……お前に聞きたいことがある……」
「……なに……?」
俺は、少し恐怖した。
「なぜウヴォーを助けなかった?」
……え?
「何言ってんの、クロロ……」
「シャルやフィンクスから聞いたが、ウヴォーが鎖野郎に捕らわれた時、お前だけ皆と別行動をとってウヴォーを追ったそうだな。それなのに拘束されたウヴォーを助けず放置したのはなぜだ?」
「それは……」
やばい……これはやばい……
「お前によく電話がかかってきてはそのたびにどこかへ出かけて行ったな。いったい誰からの電話だ?」
クロロ……
「シャルが戻り、ウヴォーだけが鎖野郎を殺りに行った時もそうだ、お前に電話がかかってきてそのすぐ後にどこかへ行ったな。いったいどこで何をしていた?」
「クロロ……」
……だめだ。これ、完全に疑われている。
クロロの眼がすっと細くなった。俺はクロロの殺気を感じ、思わず逃げようとした。けど、クロロの左手が俺の首を捕える方が速かった。クロロの手に押されて上向きに倒れた俺の上に、クロロがのしかかり、そのまま俺の首を締め付ける。……痛い。てか、力が入らない。なんで?
俺は、クロロの右手にまだ本が具現化されたままなのを見た。……何かの念か?
「お前と美術館で再会した時のことを覚えているか?俺がフェイタンを止めた能力と同じものだ。対象を強制的に絶状態にする。さすがのお前でも、絶にされては抵抗できないだろう。油断したな」
「ク…ロ…ロ……」
「安心しろ、お前がウヴォーを殺したとは思っていない。……だが、一度調べさせてもらう」
「な……」
「おやすみ、ハヤト」
クロロ……?
俺は腹に強烈な痛みを感じた後、意識を失った。
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