生きるってすばらしい~
「ゴン!ハヤト!飛行船の中探検しようぜ!」
「うん!」
「あ、俺はパス。疲れた」
「はぁ?」
あー、キルア不服そう。ついでにゴンも。
「ちぇ、つまんねぇの。行こうぜ、ゴン」
「じゃ、またあとでね」
あー、元気だな。二人とも走って行っちまった。
「ハヤト、私たちはあちらの個室で休む。一緒にどうだ?」
クラピカだ。わざわざ誘ってくれるなんて、ありがたいな。
「うん、ありがとう」
よろこんでご一緒させてもらった。
レオリオは疲れ果ててすぐいびきをかき始めた。それを見てクラピカが肩をすくめる。
「まったく、仕方がないなレオリオは。すまないなハヤト、うるさいだろう?」
「いや」
何となく、クラピカと二人か。んー俺的に一番話ずらい相手なんだけどな。
「ハヤト」
「ん?」
あ、むこうから話しかけてくれた。
「君は、どうしてハンターになりたいんだ?」
どうして、か。うーん……
「……俺さ、ガキの頃に親に捨てられたんだ。んで、俺の戸籍とかどうなってんのかなって思って三年前に調べてみたら、俺は死んだことになってた。つまり、今戸籍ないんだ。この世に存在しないはずの人間ってこと。だから、身分証明になるハンターライセンスが欲しい」
あ、クラピカの顔がゆがむ。あーほんと申し訳ないな。俺、場の空気悪くするの上手くね?
「すまない」
「いや、いい」
「……」
そりゃ無言になるわな。ごめんなほんと。
「クラピカこそ、どうしてハンターになりたいんだ?」
やっぱ聞かれたら聞き返すよね。
あれ、なんだかクラピカ悲しそうに笑った。……もしかして……
「クルタ族を知っているか?数年前にただひとりを除いて皆殺しにされた一族だ。クルタ族の持つ緋の目を狙ってのことだった」
あ、やっぱりこれって……
「クルタ族ただひとりの生き残りが、私なのだ……」
やっぱり……。なんだよなんだよ、そういうことかよ。
「同胞を殺したのは幻影旅団という盗賊集団だ。私は……同胞たちの仇を討ちたい。そのために、ハンターになりたいのだ。ハンターになれば、なかなか手に入らない情報もたやすく手に入る」
あーーーーもう!俺は思わずため息をついた。
だってさぁ、しゃあねぇじゃん。
仇討ち?復讐?それ聞くとどうしても思い出しちまう……サスケとイタチ。
「くだらねぇな」
俺がつぶやくと、クラピカはぴくっと体を震わせた。
「なんだと……?」
「くだらねぇって言ったんだ。復讐なんて、するもんじゃない。やめておけ」
クラピカを見たら腹を立ててるのがもろ顔に出てる。まぁ、当たり前か。
「きっと後悔する。復讐っていうのはな、お前が考えてるほど単純なものじゃないんだぞ」
「……!!お前に何がわかる!!」
クラピカが怒鳴った。うわっ!緋の目出てるよ!
「お前に何が!同胞を殺され、たったひとりになった私の気持ちが、お前にわかるわけがない!」
……あー、クラピカの境遇ってサスケのそれと一緒だな。サスケも似たようなセリフ言ってた気がする。まぁ、二人の違うことといやぁ、復讐の対象が兄か他人か、ってとこだな。どっちが辛いんだろ。
わかんねぇよ。
「お前の気持ちを本当に理解してやることは、俺には無理だ。経験してないからな。……だが、俺はお前のように復讐に生きた人間を知っている」
俺はまっすぐにクラピカを見た。
「そいつを見てきた上で、俺は言ってる。やめておけ、復讐なんて」
「くっ!!」
あーだめだ。クラピカ、頭に血が上ってる。サスケと一緒だ。うん、こりゃ何言っても無駄だな。ま、掴みかかってこないでじっと我慢している分サスケよりはまだ救いようがあるのかもしれないな。
俺はこぶしを握りしめるクラピカの脇を通って、ドアへ向かった。
「ま、俺に偉そうに言う権利なんてないんだけどな」
そう言い残して俺は部屋を出た。ごめんなクラピカ。お前を怒らせるつもりはなかったんだけどな。
あー……俺、クラピカを傷つけちまったかな。うーん……もうちょっとクラピカの気持ち考えてやればよかった。
自己嫌悪に陥りながら飛行船の中を歩いていたら……
キルア発見。あれ、けど何か暗い顔してるな。
「キルア……」
呼びかけたけど、無視された。すれ違いざまにぷんとにおった血の匂い……。俺は廊下をあるいた先で死体を一つ見つけた。……キルアがやったんだとひとめで分かった。
「……やっぱりキルアもなんかあるな」
何となく感じてたキルアの闇のにおい。それが今は肌で感じるほど強くなっている。
何なんだろ。わかんねぇな。
けど何となくキルアをほっとけなくて、廊下を引き返した。
見つけた。窓から外を眺めてる。
おいおい、背中から哀愁漂ってるぞ。
俺はそっとキルアの横に立って一緒に外を眺めた。キルアは俺を一瞥して、再び窓の外に目を戻した。
さて、どうしよう。
キルアに何があったのかわかんねぇし!俺何したいんだろ!わかんねぇ!
「ハヤト……」
「ん?」
おっ、キルアが呼んでくれた。ちょびっと嬉しい。
「俺、ゾルティック家なんだ」
ん?ゾルティック家?……ってあの暗殺一家の?
「へぇ。そうだったんだ」
キルアは訝しげな顔して俺を見てきた。
「……おどろかねぇの?」
「別に。……驚くより、納得した。お前、ゴンとかレオリオとか、クラピカとは全然違うから」
そう言ったら、キルアはものすごく悲しそうな顔をした。
「……もしかして、キルア、暗殺稼業に嫌気がさしてる?」
「……」
「ゴンと違うって言われたこと、ショックだった?」
「……」
あ、こりゃ図星だな。……なんだよ、かわいいやつじゃん。
「……キルア」
「……」
だんまりか。ま、いいや。
「ある時ある国ある街に、零崎人識君という男がいました。彼は殺人鬼の中の殺人鬼。理由もなく人を殺し、『人間失格』とかいう異名を持つ殺人鬼でした。殺しの腕は超一流。ナイフ使いだったけど、一度も返り血を浴びたことが無くて、ナイフにも血の跡どころか匂いさえ残さない。そんな零崎人識君だけど、俺の親友でした」
「………………え?」
キルアはまの抜けた声を出した。あっ、あっけにとられてるみたいだ。俺はそんなキルアの様子におかしくなってついつい笑ってしまった。
「あんまり深く考えんなよ。ゴン達とお前が全然違うっていうのは、決して悪いことじゃない。お前はお前らしくあれ」
「ハヤト……」
あっ、ちょっとキルアの顔が和らいだ。うん、なんだかんだでやっぱり子供だな。
「あと、ついでにさ、キラって知ってる?」
「知ってるよ。裏の世界じゃものすごく有名だもん。何年か前にふらっと現れてふらっと消えた正体不明の殺し屋だろ?あのころは仕事が激減したって親父たちがぼやいてた」
……そりゃあ悪いことしたな。
「……もうキラは現れないから安心しろ。一時期でもお前んちの仕事を奪って悪かったな」
「はぁ?」
あ、またあっけにとられた。面白いな、キルア。
俺はにやっと笑んで言ってやった。
「キラって俺だったんだよね。じゃ、また後でな、キルア」
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