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Chapter:04 交渉
Episode:59
「なっ、こっ、おい!」
「……どうしたの?」
 どうしたの、じゃねぇだろ……。
 けどマジでこいつ、何にも分かってなかった。

「このほうが、寒くないでしょ?」
「いや、そりゃそうだけどよ……」
 そう言う問題じゃないだろうが。

――ただこいつ、そういうのはどっかに落としてきてっからなぁ。

 今だって頭のてっぺんからつま先まで、全部まとめて「寒いといけない」だけで埋まりきってるし。
 と、ぽつりとこいつがつぶやいた。

「思い出すな……」
「何がだ?」
 珍しくこいつから、安心しきった雰囲気が伝わってくる。

 いつも不安げにしているルーフェイア。
 それが今は、ない。

「よくね、戦場にいて野宿の時とか、母さんにこうしてもらったの。
――あったかくて好きだったな」
「へぇ……」
 人一倍脆いこいつがどうして戦場で正気でいられたのか、答えが分かった気がした。

「戦場、大っ嫌いだけど……学院来てからさみしかった……」
 ルーフェイアの瞳から、一筋涙がこぼれる。
 こんなのタシュア先輩あたりが見た日にゃ、きっと「甘ったれ」とかなんとか言って突っ込むだろう。

 とりあえずこいつがいちばん望んでる通りに頭を撫でてやると、そのまま小さい子供みたいに目を閉じちまった。
 この状況で度胸あることに、眠くなったらしい。

――ま、いいか。
 戦場育ちのせいで、寝られそうな時に寝ちまうだけかもしれねぇし。

「なんかあったら起こしてやるよ」
「うん……」

 言うが早いが、たちまち寝入っちまった。あとはどれだけシーモアたちと根競べできるか、だ。
 でも幸いこいつが――ルーフェイアはかなり体温が高い――くっついてるお陰で、寒さは感じない。
 こいつの様子を見ながら、俺は待つことにした。



 それから多分、1時間くらい過ぎた頃だ。
「イマドっ! あんたがついててなにやってんのさっ!」
「お、やっと開ける気になったか」
 とうとう根負けしたシーモアたちがドアを開けた。

「『開ける気になったか』じゃないよっ!
 ほらっ、ガルシィに許可もらったから、早く入りな!!」
「りょーかいっと」
 ただそうは言っても、すぐには動けねぇわけで。

「ルーフェイア、起きろって」
 まず寄りかかってるこいつを起こさないことにゃ、俺も身動きできない。

――ってあれ?
 嘘みてぇだけどルーフェイアのヤツ、熟睡してやがる。
 いつも気配だけで目を覚ますこいつがこれは、かなり珍しい。




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