「なっ、こっ、おい!」
「……どうしたの?」
どうしたの、じゃねぇだろ……。
けどマジでこいつ、何にも分かってなかった。
「このほうが、寒くないでしょ?」
「いや、そりゃそうだけどよ……」
そう言う問題じゃないだろうが。
――ただこいつ、そういうのはどっかに落としてきてっからなぁ。
今だって頭のてっぺんからつま先まで、全部まとめて「寒いといけない」だけで埋まりきってるし。
と、ぽつりとこいつがつぶやいた。
「思い出すな……」
「何がだ?」
珍しくこいつから、安心しきった雰囲気が伝わってくる。
いつも不安げにしているルーフェイア。
それが今は、ない。
「よくね、戦場にいて野宿の時とか、母さんにこうしてもらったの。
――あったかくて好きだったな」
「へぇ……」
人一倍脆いこいつがどうして戦場で正気でいられたのか、答えが分かった気がした。
「戦場、大っ嫌いだけど……学院来てからさみしかった……」
ルーフェイアの瞳から、一筋涙がこぼれる。
こんなのタシュア先輩あたりが見た日にゃ、きっと「甘ったれ」とかなんとか言って突っ込むだろう。
とりあえずこいつがいちばん望んでる通りに頭を撫でてやると、そのまま小さい子供みたいに目を閉じちまった。
この状況で度胸あることに、眠くなったらしい。
――ま、いいか。
戦場育ちのせいで、寝られそうな時に寝ちまうだけかもしれねぇし。
「なんかあったら起こしてやるよ」
「うん……」
言うが早いが、たちまち寝入っちまった。あとはどれだけシーモアたちと根競べできるか、だ。
でも幸いこいつが――ルーフェイアはかなり体温が高い――くっついてるお陰で、寒さは感じない。
こいつの様子を見ながら、俺は待つことにした。
それから多分、1時間くらい過ぎた頃だ。
「イマドっ! あんたがついててなにやってんのさっ!」
「お、やっと開ける気になったか」
とうとう根負けしたシーモアたちがドアを開けた。
「『開ける気になったか』じゃないよっ!
ほらっ、ガルシィに許可もらったから、早く入りな!!」
「りょーかいっと」
ただそうは言っても、すぐには動けねぇわけで。
「ルーフェイア、起きろって」
まず寄りかかってるこいつを起こさないことにゃ、俺も身動きできない。
――ってあれ?
嘘みてぇだけどルーフェイアのヤツ、熟睡してやがる。
いつも気配だけで目を覚ますこいつがこれは、かなり珍しい。
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