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Chapter:01 知らせ
Episode:05
◇Imad
 診療所と学院長とに全員引き渡して、やっと一息ついたのは、もう夕暮れになってからだった。撃たれたガキが連れてきたチビどもには、ルーフェイアがついてる。

 軽食6人前ほど作りながら、俺は迷ってた。
 あいつらの持ってきた「ワケ」は、あんまいいもんじゃない。けど、見過ごせる話でもねぇのが困る。つか、もしルーフェイアのやつが聞いたら、速攻でここ飛び出しちまうだろう。
 んでもって抗争のど真ん中に、飛び込んじまうことになる。

 じつ言うとシーモアとナティエスが、慌ててどっかへ出かけた時から、なんかおかしいとは思ってた。
 けどまさか、これほどでかい抗争のために戻ったとは……。

 あの2人ってのはロデスティオの首都、ベルデナードのスラム出身だ。しかもそのスラムにいくつもある、暗殺集団――ギャング団なんかじゃない――の中でも、1、2を争うチームの所属だったって聞いてる。
 で、そこがナワバリだかをめぐって、別のところと全面衝突はじめたらしい。駅での銃撃戦はその延長戦だ。
 前哨戦でかなり形勢がヤバくなったシーモアたちの仲間が、せめてチビどもだけでもシーモアたちの所へってつもりで逃がしたものの尾けられて、最後の最後で鉢合わせしたっぽかった。

 パンを重ねながら、ぼうっと考える。
 ルーフェイアのヤツは、間違いなく行こうとするだろう。
 なんとかして知られないようにすりゃ、いいんだろうけど……チビどもが来ちまった以上、それもムリだった。確実にバレる。

 止めるか、行かせるか。
――ムリだな。
 あいつが行く気になったら、止めようなんてない。イザとなりゃ学院にシュマーの船呼んででも、出てっちまうはずだ。

 しかもマズいことに、良くも悪くもルーフェイアのヤツは、素直で疑うってこと知らない。そのうえ自分が、やたら人目引く美少女だっての、まるっきり自覚してねぇ。
 そんなのがひとりでスラムをウロウロするとか、考えるまでもなくヤバ過ぎだろう。肉食竜の前に、肉の塊置くようなもんだ。
 だったら行かせて、フォローするほうがまだマシだった。

 ベルデナードまでは、かなり距離がある。
 いちばん早いのは、ケンディクから海超えて、大陸東南部の元ワサール国へ。そっから列車使って、隣のロデスティオに入るルートだろう。
 船で丸1日、列車で4日の長旅だ。

 通り抜けるワサールは、植民地化されたせいでいまもいろいろキナ臭いけど、町の治安はそれなりだ。ちゃんと列車も運行してるし、沿岸部の観光地は今も変わらず賑わってるっていう。
 ロデスティオのほうも軍政敷いてっけど、国内はけっこう自由らしい。首都のベルデナードは、観光でも有名なくらいだ。あと、あんま覚えてないし実感ねぇけど、俺の生まれた国だったりする。

 ただ首都のスラムとか言われても、俺は場所さえよく知らなかった。
 まともに物事覚えてる年には、もうこの学院にいたから、俺がちゃんと知ってんのはケンディクと、叔父さんがいるアヴァン方面だけだ。
 ともかく行き当たりばったりで行って、迷ってるヒマはねぇから、下調べしとかないとヤバいだろう。

――チビどもにでもきくか。
 多分いちばん現実的な手段に、考えが落ち着く。どう聞き出すかって問題があるけど、まぁどうにかなるだろう。
 あとはどんだけ早く、ここを出れるかだ。
 その抗争とやらがいつかは知らねぇけど、シーモアたちが速攻で出てってるから、そんなに余裕ねぇんだろう。

 行って、どうにか出来るとは思わなかった。
 けどルーフェイアのヤツはぜったい引かねぇだろうし、俺もあいつらにはけっこう借りがある。
 だから、やれるだけのことはやってみるつもりだった。



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