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Chapter:01 知らせ
Episode:19
「いやその、なんとなくそう思っただけでよ……」
「――うそ」
 珍しく、こいつが間髪入れず言い切る。
「読んだ……よね?」

 ごまかそうかと思ったけど、こいつの瞳を見てムリだと悟った。何が起こったかコイツ、ちゃんと分かってる。
 なんか言おうと思ったけど、言葉が出て来なかった。

 と、ルーフェイアのヤツと瞳が合う。
 どっか怯えた、泣き出しそうな表情。
――そりゃそうだよな。
 こんな薄気味悪りぃこと、受け入れられるほうがおかしい。

「その、イマド、ごめん……」
「ってだからなんでそこで、お前が謝って泣くんだよ」
 いつもの事とはいえ、こういう状況でってのは予想外だ。

「ごめんなさい……」
 聞こえてねぇし。
「いやだから、別にお前悪くねぇだろ」
「だって、あたし……イマドが、言われたくないこと……」
「はい?」

 意味不明にもホドがある。
 けど、表情見て気づいた。怯えてる理由は俺に読まれたことじゃなくて、「嫌われたかもしれない」ってほうだ。
 なんでそうなるかかなり謎だけど、俺が黙った事を、自分が悪かったと思い込んだらしい。

「言われたくねぇってか、要するに俺の不注意だし。
 てかおまえ、なんですぐ分かった? 普通じゃこれ、ヘンだとは思っても、何が起こったかはわかんねぇぞ」

 これも不思議だった。
 じつ言えば、今みたいなうっかりは、何度かやったことある。ただ考えを読まれてるとか、たいていは考えつかねぇから、テキトーな言い訳で話はいつも終わってた。

「まさかおまえ、出来るとか言わねぇよな?」
 さすがにないだろうと思いつつ、言うだけ言ってみる。
 ただルーフェイアのヤツ、すぐ気がついただけあって、答えがもっと度外れてた。

「ううん、あたしは出来ないけど、母さんも姉さんもそうだから……」
「――はい?」
 さすがに聞き返すと、ルーフェイアのヤツがたどたどしく、説明始める。

「えっと、だからその、うちって……アレでしょ。そのせいか、一族のかなりが、そういう人で……」
「……お前の家が並みじゃねぇの、忘れてたぜ」
 考えてみりゃ、あのシュマーだ。そんなもんが人並みなほうがおかしい。俺のお袋の家系以上に、変わった連中が居てもいいくらいだ。

「要するにお前にしてみりゃ、当たり前ってことか」
「うん」
 なんか力が抜けた。
 気ぃ遣ってた自分が、妙に情けなくなる。

「ねぇ……やっぱりイマドも、母さんみたいに分かるの?」
「お前のお袋よく知らねぇから、なんとも言えねぇけど。
――けどなぁ」
 なんとなく頭を掻きながら、続ける。

「最初からそうと分かってりゃ、こんなに気なんか使わなかったぜ」
「ご、ごめん……」
「そこで泣くなって」
 また泣き出したコイツに苦笑する。ホントに甘ったれで泣き虫だ。

「ま、俺の場合そゆこと。
 なるたけ使わないようには気をつけてんだけどよ、隣の席の話が聞こえるのと一緒で……けっこう聞こえちまう時あってさ。
 悪りぃな。もしヤな時は、はっきり言ってくれていいぜ」

 肩の荷が下りた気分で言う。やっぱ隠さないで済むってのは、楽だ。
 ただ、返ってきた答えは予想外だった。

「あのね、いいよ。平気」
「何がだ?」
 一瞬だけ戸惑ったけど、すぐ理解する。
 こいつは最初から、考えてる事を隠す気なんて、なかったんだろう。

「サンキュな」
「ううん。
 だって知られて困ること――ないもの」
 何の気負いもなく微笑むこいつの頭を、俺はつい撫でた。



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